借換制度は、決して新しい制度ではありません。従来から銀行の通常業務として存在していました。借換とは、既存の借入金を新しい借入金で返済し、借入条件を変更することです。
場面:長期借入残高が減少してきた時
銀行の提案:「借換しませんか?」
社長の反応:慣例的に何も考えずに受け入れ
結果:銀行の提案のまま機械的に実行
つまり、99%の社長は「なぜ借換をするのか?」「どんな条件が最適なのか?」を全く考えずに、銀行の言いなりになっていたのです。
コロナ禍で政府が行ったのは、借換制度の新設ではなく、借換をしやすく後押しすることでした。その狙いは:
2023年1月10日、政府はコロナ借換保証制度を開始しました。この制度の革新的な点は、「経営行動計画書の作成」が必須条件だったことです。
経営行動計画書の内容(実際の様式より):
これは単なる書類ではなく、「経営者の思考プロセス」そのものを問う内容でした。
しかし、蓋を開けてみると衝撃的な現実が待っていました:
長瀬さんの証言が物語る驚愕の事実:
「僕は書いた会社を一社も知らないし、僕も一社も書いていません。銀行には『いつまでに必要ですか?』と確認しても、すぐに借換がなされていました。要は、誰もまともなものが書けないので、なし崩し的になしになったのです。」
| 時期 | 制度上の要件 | 実際の運用 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2023年1月 | 経営行動計画書必須 | 厳格な審査実施 | 申請件数激減 |
| 2023年3月頃 | 同上(建前) | 形式的チェックのみ | なし崩し的緩和 |
| 2023年夏以降 | 同上(建前) | 実質的に無視 | 制度の完全骨抜き |
政府が借換制度で最も警戒しているのは、「安易な保証協会付き融資の一本化」です。
理由:銀行だけが儲かり、中小企業の根本的解決にならないから
| 借換パターン | 銀行のメリット | 企業への影響 | 政府の評価 |
|---|---|---|---|
| プロパー融資→保証付き融資 | リスク転嫁で大儲け | 保証料負担増加 | ❌ 原則禁止 |
| 計画なしの借換 | 手数料収入のみ | 根本解決なし | ❌ 制度悪用 |
| 計画的な借換 | 適正な利息収入 | 経営改善効果 | ✅ 制度本来の目的 |
旧債振替とは、プロパー融資を保証協会付き融資で借り換えることです。これは原則として禁止されています。
なぜなら、銀行が100%のリスクを負うプロパー融資を、保証協会にリスク転嫁できる保証付き融資に借り換えることで、銀行だけが一方的に得をするからです。
コロナ借換保証制度は、日本の経営史上最大の「強制的な経営者教育プログラム」になるはずでした:
1. 借換申請時に「経営行動計画書」作成を強制
2. 計画書作成プロセスで経営者の思考力向上
3. 銀行の継続的伴走支援で実行力強化
4. 日本の中小企業経営レベルの底上げ
1. 形だけの「経営行動計画書」が量産される
2. 銀行は書類チェックのみで伴走支援放棄
3. 社長は従来通り「なんとかなるだろう経営」継続
4. 制度の完全な骨抜き化
結果:誰も「まともな事業計画書」を作れない現実が露呈
この制度は、図らずも日本の中小企業経営の根本的問題を白日の下に晒しました:
「政府が千載一遇の機会を与えても、99%の経営者は『計画を作る』という最低限の経営スキルを身につけられない」
これこそが、失われた30年の根本原因なのです。
目的:一時的な返済負担軽減
期間:半年~1年(短期間)
効果:倒産回避のための時間稼ぎ
デメリット:新規融資ストップ、信用力低下
目的:新規資金調達+既往債務軽減
期間:据置期間5年以内(長期間)
効果:「政府公認の長期リスケ」
条件:経営改善計画書の提出必須
計画性がなければ、制度があっても従前と変わらないのが現実です。
据置期間が終了した時、何の準備もできていなければ、結局は:
コロナ借換保証制度の失敗は、単なる制度運用の問題ではありません。日本経済低迷の根本原因が明確に証明されたのです。
1990年代:バブル崩壊で「なんとかなるだろう経営」では通用しなくなる
2000年代:グローバル化で計画的経営が必須になる
2010年代:デジタル化で戦略なき企業が淘汰され始める
2020年代:コロナ禍で計画力のない経営者が完全に露呈
2025年:政府が公然と「経営力」を要求
実は政府は、段階的に「計画を作れない経営者」を市場から排除する戦略を実行中です:
| 段階 | 施策 | 対象 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 補助金採択率30%台 | 成長意欲のない経営者 | 補助金からの排除 |
| 第2段階 | 融資の事業性評価強化 | 計画のない経営者 | 融資からの排除 |
| 第3段階 | 2025年白書での明言 | 思考力のない経営者 | 市場からの排除 |
借換制度の破綻により、政府は「やんわりとした誘導」を諦め、「直接的な要求」に転換したのです。
なぜ借換が必要になったのか?根本原因の分析
→ 資金繰り表による現状認識
据置期間終了後の返済再開に向けた改善計画
→ 事業計画書による将来設計
絵に描いた餅ではない、現実的な経営改善策
→ 段階的実行プランの策定
どの借換制度でも必ず求められるのが「経営行動計画書」「経営改善計画書」です。これは単なる書類ではありません。
「社長が自社の現状を正確に把握し、将来への道筋を論理的に描けること」を証明する文書なのです。
つまり、政府は借換制度を通じて、中小企業経営者に「経営計画作成能力」を求めているのです。
当事務所では、借換制度を単なる「資金繰り改善手段」ではなく、「経営者としての思考力向上の機会」として捉えています。
2023年のコロナ借換保証制度で政府が設計した理想的プロセス:
これこそが「真の経営者」に必要な思考プロセスなのです。
借換前の徹底的な現状把握→適切な借換条件の選択→計画的な返済戦略
据置期間を活用した段階的改善→小さな改善の積み重ね→大きな成果の実現
道徳(事業の社会的意義)と利益(数値計画)の統合による持続的経営
当事務所では、2023年に誰も書けなかった「経営行動計画書」を、社長自身が確実に作成できるようになる支援を行っています。
これにより、借換制度だけでなく、あらゆる場面で通用する「真の経営力」が身につきます。
2025年中小企業白書での「経営力」明言により、時代は完全に変わりました。今や「頑張る前から勝負が決まる」時代です。
しかし、これは気づいた経営者にとっては史上最大のチャンスでもあります:
99.9%の経営者が事業計画書を作れない今こそ、作れるようになった1%が市場を独占できる絶好の機会なのです。
借換制度は、単なる資金繰り改善手段ではありません。政府が設計した「経営者強制教育プログラム」だったのです。
2023年のコロナ借換保証制度で99.9%の経営者が「経営行動計画書」を書けなかった事実は、日本の中小企業経営の根本的問題を証明しました。
しかし、2025年中小企業白書での「経営力」明言により、もはや逃げ道はありません。事業計画書作成能力は、令和時代の経営者にとって最低限の生存条件となったのです。
政府が与えた千載一遇の機会を活かすも殺すも、すべては経営者次第です。
制度に依存するのではなく、制度を使いこなす「経営思考力」を身につけませんか?
古典の叡智と最新科学を融合した「収益満開経営」で、確実に事業計画書作成能力を習得できます。