借換制度の本質:なぜ99%の社長が「政府公認リスケ」の意味を理解できないのか

2023.02.19

 

借換制度の本質:なぜ99%の社長が「政府公認リスケ」の意味を理解できないのか

~無計画な借換が招く「銀行だけが儲かる仕組み」の真実~
更新日:2025年7月31日

借換制度 事業計画書を作成する経営者

借換制度とは何か?99%の社長が知らない基本構造

借換制度は、決して新しい制度ではありません。従来から銀行の通常業務として存在していました。借換とは、既存の借入金を新しい借入金で返済し、借入条件を変更することです。

従来の借換パターン(コロナ前)

場面:長期借入残高が減少してきた時
銀行の提案:「借換しませんか?」
社長の反応:慣例的に何も考えずに受け入れ
結果:銀行の提案のまま機械的に実行

つまり、99%の社長は「なぜ借換をするのか?」「どんな条件が最適なのか?」を全く考えずに、銀行の言いなりになっていたのです。

コロナで政府が後押しした借換制度の真の狙い

コロナ禍で政府が行ったのは、借換制度の新設ではなく、借換をしやすく後押しすることでした。その狙いは:

  • 新規運転資金の確保:コロナによる売上減少への対応
  • 既往債務の負担軽減:返済条件の緩和
  • 据置期間の設定:実質的な「政府公認リスケジュール」

2023年の歴史的大失敗:「経営行動計画書」が消えた瞬間

制度設計時の政府の理想

2023年1月10日、政府はコロナ借換保証制度を開始しました。この制度の革新的な点は、「経営行動計画書の作成」が必須条件だったことです。

政府が設計した「強制的経営者教育プログラム」

経営行動計画書の内容(実際の様式より):

  • 現状認識:事業概要、外部環境、事業の強み・弱み分析
  • 財務分析:ローカルベンチマークによる6つの財務指標自動計算
  • 将来目標:計画終了時点の具体的目標設定
  • アクションプラン:課題解決の具体的取組計画
  • 収支計画:5年間の数値計画と返済計画

これは単なる書類ではなく、「経営者の思考プロセス」そのものを問う内容でした。

現実に起こった悲劇:「誰も書けない」

しかし、蓋を開けてみると衝撃的な現実が待っていました:

99.9%の社長が直面した現実

  • 財務分析ができないローカルベンチマークって何?
  • 現状認識できない:強み・弱みを客観視できない
  • 将来目標を描けない:計画終了時の姿が想像できない
  • アクションプランが作れない:具体的な行動に落とし込めない
  • 収支計画が立てられない:5年先の数値予測ができない

制度の瞬間的骨抜き化

長瀬さんの証言が物語る驚愕の事実:

「僕は書いた会社を一社も知らないし、僕も一社も書いていません。銀行には『いつまでに必要ですか?』と確認しても、すぐに借換がなされていました。要は、誰もまともなものが書けないので、なし崩し的になしになったのです。」

時期 制度上の要件 実際の運用 結果
2023年1月 経営行動計画書必須 厳格な審査実施 申請件数激減
2023年3月頃 同上(建前) 形式的チェックのみ なし崩し的緩和
2023年夏以降 同上(建前) 実質的に無視 制度の完全骨抜き

政府が阻止したい「銀行だけが儲かる仕組み」

なぜ「安易な保証協会付き融資の一本化」を認めないのか?

制度設計の核心:銀行の不当利得を防ぐ

政府が借換制度で最も警戒しているのは、「安易な保証協会付き融資の一本化」です。

理由:銀行だけが儲かり、中小企業の根本的解決にならないから

借換パターン 銀行のメリット 企業への影響 政府の評価
プロパー融資→保証付き融資 リスク転嫁で大儲け 保証料負担増加 ❌ 原則禁止
計画なしの借換 手数料収入のみ 根本解決なし ❌ 制度悪用
計画的な借換 適正な利息収入 経営改善効果 ✅ 制度本来の目的

「旧債振替」という厳格なルール

旧債振替とは、プロパー融資を保証協会付き融資で借り換えることです。これは原則として禁止されています。

なぜなら、銀行が100%のリスクを負うプロパー融資を、保証協会にリスク転嫁できる保証付き融資に借り換えることで、銀行だけが一方的に得をするからです。

歴史的大失敗:日本最大の「経営者教育機会」の喪失

政府が与えた千載一遇の機会を
銀行も社長も完全に無駄にした

失われた歴史的チャンス

コロナ借換保証制度は、日本の経営史上最大の「強制的な経営者教育プログラム」になるはずでした:

政府の理想的シナリオ

1. 借換申請時に「経営行動計画書」作成を強制
2. 計画書作成プロセスで経営者の思考力向上
3. 銀行の継続的伴走支援で実行力強化
4. 日本の中小企業経営レベルの底上げ

実際に起こった悲劇

1. 形だけの「経営行動計画書」が量産される
2. 銀行は書類チェックのみで伴走支援放棄
3. 社長は従来通り「なんとかなるだろう経営」継続
4. 制度の完全な骨抜き化

なぜ誰も計画書を書けなかったのか?

構造的な無能の連鎖

  • 社長:「事業計画書」の概念を理解していない
  • 税理士:過去の数字は分かるが未来は描けない
  • コンサルタント:理論は知っているが現場を知らない
  • 銀行員:融資審査はできるが経営指導はできない

結果:誰も「まともな事業計画書」を作れない現実が露呈

コロナ借換保証制度が証明した残酷な現実

この制度は、図らずも日本の中小企業経営の根本的問題を白日の下に晒しました:

「政府が千載一遇の機会を与えても、99%の経営者は『計画を作る』という最低限の経営スキルを身につけられない」

これこそが、失われた30年の根本原因なのです。

借換制度が暴露する「99%の社長の思考停止」

リスケジュールと借換の決定的違い

リスケジュール(返済条件変更)

目的:一時的な返済負担軽減
期間:半年~1年(短期間)
効果:倒産回避のための時間稼ぎ
デメリット:新規融資ストップ、信用力低下

借換制度(政府後押し版)

目的:新規資金調達+既往債務軽減
期間:据置期間5年以内(長期間)
効果:「政府公認の長期リスケ」
条件:経営改善計画書の提出必須

借換制度の本質的問題

計画性がなければ、制度があっても従前と変わらないのが現実です。

据置期間が終了した時、何の準備もできていなければ、結局は:

  • 返済再開で資金繰り悪化
  • 再度のリスケジュール申請
  • 最終的な代位弁済・倒産

借換制度が証明した「失われた30年」の根本原因

なぜ今「事業計画書」が絶対必要なのか?

2023年の制度破綻で分かったこと:
「日本の中小企業経営者の99.9%は計画を作れない」

コロナ借換保証制度の失敗は、単なる制度運用の問題ではありません。日本経済低迷の根本原因が明確に証明されたのです。

失われた30年の真の構造

1990年代:バブル崩壊で「なんとかなるだろう経営」では通用しなくなる
2000年代:グローバル化で計画的経営が必須になる
2010年代:デジタル化で戦略なき企業が淘汰され始める
2020年代:コロナ禍で計画力のない経営者が完全に露呈
2025年政府が公然と「経営力」を要求

政府の「段階的排除戦略」

実は政府は、段階的に「計画を作れない経営者」を市場から排除する戦略を実行中です:

段階 施策 対象 効果
第1段階 補助金採択率30%台 成長意欲のない経営者 補助金からの排除
第2段階 融資の事業性評価強化 計画のない経営者 融資からの排除
第3段階 2025年白書での明言 思考力のない経営者 市場からの排除

借換制度の破綻により、政府は「やんわりとした誘導」を諦め、「直接的な要求」に転換したのです。

借換制度は「時間を買う制度」
その時間で何をするかが勝負

借換制度活用の3つの必須条件

1. 現状の正確な把握

なぜ借換が必要になったのか?根本原因の分析
資金繰り表による現状認識

2. 将来への具体的道筋

据置期間終了後の返済再開に向けた改善計画
事業計画書による将来設計

3. 実行可能な改善策

絵に描いた餅ではない、現実的な経営改善策
段階的実行プランの策定

政府が求める「経営行動計画書」の真意

どの借換制度でも必ず求められるのが「経営行動計画書」「経営改善計画書」です。これは単なる書類ではありません。

「社長が自社の現状を正確に把握し、将来への道筋を論理的に描けること」を証明する文書なのです。

つまり、政府は借換制度を通じて、中小企業経営者に「経営計画作成能力」を求めているのです。

「収益満開経営」による借換制度の戦略的活用

借換制度を「経営者成長の機会」に変える

当事務所では、借換制度を単なる「資金繰り改善手段」ではなく、「経営者としての思考力向上の機会」として捉えています。

政府が期待していた本来の借換活用法

2023年のコロナ借換保証制度で政府が設計した理想的プロセス:

  • 現状認識:自社の客観的分析(強み・弱み・課題)
  • 財務分析:ローカルベンチマーク6指標による数値分析
  • 将来設計:計画終了時点の具体的目標設定
  • 行動計画:目標達成のための具体的アクションプラン
  • 収支計画:5年間の実現可能な数値計画

これこそが「真の経営者」に必要な思考プロセスなのです。

古典の叡智による借換戦略

山田方谷「入りを量りて出を制す」

借換前の徹底的な現状把握→適切な借換条件の選択→計画的な返済戦略

二宮尊徳「積小為大」

据置期間を活用した段階的改善→小さな改善の積み重ね→大きな成果の実現

渋沢栄一「論語とそろばん」

道徳(事業の社会的意義)と利益(数値計画)の統合による持続的経営

99.9%ができなかった「経営行動計画書」を確実に作成する方法

当事務所では、2023年に誰も書けなかった「経営行動計画書」を、社長自身が確実に作成できるようになる支援を行っています。

収益満開経営の段階的習得プロセス

  • Phase 1:資金繰り改善100手法による前知識習得
  • Phase 2:現状分析能力の獲得(客観視スキル)
  • Phase 3:未来設計能力の獲得(戦略思考スキル)
  • Phase 4:計画実行能力の獲得(実行管理スキル)

これにより、借換制度だけでなく、あらゆる場面で通用する「真の経営力」が身につきます。

令和時代の残酷な現実:借換制度が分ける勝者と敗者

2025年中小企業白書での「経営力」明言により、時代は完全に変わりました。今や「頑張る前から勝負が決まる」時代です。

能力借換制度活用法結果将来事業計画書作成能力あり戦略的活用根本的経営改善圧勝確定事業計画書作成能力なし場当たり的活用一時的延命のみ撤退確定

政府の明確なメッセージ

2025年以降の厳しい現実

  • 事業計画書を作れない経営者への支援は段階的に縮小
  • 補助金・融資の審査は「経営力」重視に完全転換
  • AI時代において「思考力なき経営者」は生存不可能
  • 計画的経営ができない企業は市場から自然淘汰

史上最大のチャンス

しかし、これは気づいた経営者にとっては史上最大のチャンスでもあります:

99.9%の経営者が事業計画書を作れない今こそ、作れるようになった1%が市場を独占できる絶好の機会なのです。

まとめ:借換制度の本質的活用法

借換制度は、単なる資金繰り改善手段ではありません。政府が設計した「経営者強制教育プログラム」だったのです。

2023年のコロナ借換保証制度で99.9%の経営者が「経営行動計画書」を書けなかった事実は、日本の中小企業経営の根本的問題を証明しました。

しかし、2025年中小企業白書での「経営力」明言により、もはや逃げ道はありません。事業計画書作成能力は、令和時代の経営者にとって最低限の生存条件となったのです。

借換制度は「終わりの始まり」か「始まりの始まり」か
その分かれ道は、社長の「計画作成能力」で決まる

政府が与えた千載一遇の機会を活かすも殺すも、すべては経営者次第です。

制度に依存するのではなく、制度を使いこなす「経営思考力」を身につけませんか?
古典の叡智と最新科学を融合した「収益満開経営」で、確実に事業計画書作成能力を習得できます。