財務についてのよくある誤解 その3 黒字になるとお金は残るのか?

2023.09.14

財務コンサルタントの長瀬 好征です。

さて、前回までは売上に関するよくある勘違いについて
書いてきました。

社長さんと話していると、売上についての誤解はまだ
まだありますが、それと同じくらい利益についても誤解
していることが沢山あります。

まず、その中の一つである「黒字」について今回は書いて
いきます。

黒字になるとお金は増えているのでしょうか?

ここで言うお金が増えるというのは、期首と期末との
比較においてということです。

 

どうでしょうか?

 

社長さんと話していると、

売上ー経費=利益だから黒字、

つまり利益がでればお金が増えていると、

よく思っています。

本当にそうでしょうか?

 

少し極端な例で考えていきましょう。

 

小売のお店を開きました。
ここでも理解しやすいように売上総利益だけで「利益」を考え
ていきます。
消費税も無視します。

品揃えを充実させるために500万円かけて仕入をしました。
理解しやすいように10%利益をのっけたしましょう。

1年での売上は220万円でした。
仕入原価は200万円になりますね。

 

さて、売上総利益はどうなるでしょうか?
直感的には赤字ですよね。

 

そうなるでしょうか?

 

売上高                  220万円
売上原価 期首棚卸資産 0円
当期商品仕入 500万円
期末棚卸資産 ▲300万円   200万円
売上総利益                 20万円

販管費が20万円以下なら営業利益も黒字になりますね。

 

利益はお金が増えたということを意味しません。

単に、計算上で利益がでているのか?ということを意味す
るだけです。

 

前回も書きましたが、この原価に対する知識不足が感覚
と損益計算書とのズレを引き起こします。

 

言い換えると、仕入れがある会社で黒字の会社を作ること
はそんなに難しいことではありません。

 

在庫を一杯持てば売上原価を少なくすることができますか
ら、黒字になりやすいのです。

 

在庫については、また別の機会に書くとして、今回言いた
かったのは、

黒字になってもお金が増えている訳ではない
ということです。

 

中小企業の経営においては、売上、黒字に拘るよりは「キャ
ッシュ」に拘る方が適切な経営管理ができます。

しかし、殆どの社長は資金繰りに拘るよりも、売上、黒字
に殆どの場合拘っています。

 

もちろん、売上、黒字に拘ることがいけないことだと言う
つもりはありません。

ただ、会社を継続するという観点からは「キャッシュ」に
拘る方が上手くいきやすいです。

なぜなら、会社は赤字でも潰れません。
会社は債務超過でも潰れません。
しかし、キャッシュが尽きたら、潰れます。

だから、黒字倒産という言葉があるのです。