多くの社長が「債務の株式化なら借金がチャラになる」と誤解していますが、これは大きな間違いです。商工中金によるDES(債務の株式化)は極めて厳格な条件があり、事業計画書の質が全てを決めます。単なる資金繰り支援とは次元の違う制度であることを理解せずに期待すると、取り返しのつかない失敗を招きます。
DESは「Debt Equity Swap(デット・エクイティ・スワップ)」の略で、過剰債務を解消するために借入金の一部を株式に切り替える手法です。2023年8月発表の中小企業応援パッケージで注目を集めた制度ですが、その詳細と条件は一般的に理解されているものとは大きく異なります。
会社側のメリット:借入債務が株式に変わるため、返済義務がなくなります
金融機関側:貸し倒れリスクを回避し、将来の企業価値向上による配当・売却益を期待
これまでのDDS(債権の劣後化)や資本性劣後ローンは、あくまで返済を後回しにするだけでした。しかし、DESは返済義務そのものを消滅させる点で、従来制度とは次元が違います。
DESを実行することの経済合理性を詳細な計画で説明する必要があります。要求レベルは資本性劣後ローンを大幅に上回り、5年間の収支計画、市場分析、競合優位性の説明が求められます。単なる「売上回復予定」では承認されません。
現時点でもかなりの正常化が見込まれる会社でなければ承認は困難です。単なる延命措置では対象になりません。具体的には債務償還年数10年以内、自己資本比率10%以上への回復見込みが目安となります。
コロナ特別貸付において商工中金から危機対応融資を受けている企業が対象となります。融資残高や返済状況も審査に影響するため、これまでの取引実績が重要な判断材料となります。
DES実行後は商工中金がハンズオンで関わり、経営に対する厳しい監視の目が常に光っています。月次報告、四半期面談、重要な経営判断への事前相談が義務付けられる可能性があります。
支援後も持続可能な経営ができる能力と体制の証明が求められます。経営者の資質、組織体制、内部統制システムの整備状況が詳細に審査されます。
DES実行により商工中金が株主となるため、既存株主構成や議決権比率について詳細な説明が必要です。ファミリー企業の場合、経営と所有の分離についても検討が求められます。
商工中金が取得した株式をどのタイミングでどのように売却するかの出口戦略が必要です。株式買戻し、第三者売却、IPOなどの選択肢を具体的に検討する必要があります。
これらの条件を満たせる中小企業はどの程度存在するでしょうか?当社の30社以上の支援経験から言えば、自立性のある経営ができている企業は全体の5%未満です。コンサルタントが関与してもなかなか難しいレベルの要求であり、実際にDES制度を活用できる企業は極めて少数と予想されます。むしろ、これらの条件をクリアできる会社であれば、DESに頼らずとも自力で事業再生が可能な場合が多いのが現実です。
政府パッケージから読み取れる重要なメッセージがあります。それは、「社長が事業計画を書けるようになれば、国からの支援策は受け放題だが、書けなければ市場から撤退するしかない」ということです。
これは単なる推測ではありません。実際に補助金の採択率を見れば明らかです。事業再構築補助金の採択率は約30%台で推移しており、これは「事業計画書が書けない経営者の実際の排除」を意味しています。政府は明確に「思考力のない社長はもういらない」というメッセージを送っているのです。
理化学研究所の将棋研究により、構造化された思考フレームワーク(将棋のルール)があれば、4ヶ月で直観力の獲得が可能であることが科学的に証明されています。この研究が示す重要な事実は以下の通りです:
事業計画書もまた、経営における構造化された思考フレームワークとして機能します。複雑な経営課題を論理的に整理・分析・解決する能力を、科学的に証明された方法で習得することが可能なのです。
しかし、衝撃的な事実があります。政府がここまで明確に「思考力のない社長はもういらない」と示しているにも関わらず、当の社長たちがその意味を理解できていないのです。これは悲しい現実である一方、気づいた1%の経営者にとっては競争相手のいない「とんでもない機会」でもあります。
実際に当社の相談実績を見ても、「事業計画書の重要性」について真剣に取り組もうとする経営者は極めて少数です。多くの方が「融資のためのテクニック」や「短期的な資金繰り改善」ばかりを求めており、根本的な思考力向上には関心を示しません。
これが令和時代のトレンドです
DES制度の厳格な要求は、実は古典的経営哲学と一致しています。これは偶然ではなく、時代を超えた普遍的原理が存在することを示しています。
利益を追求するだけでなく、社会への貢献も含めた包括的な事業計画が重要
現代のDES制度が求める「経済合理性」と「社会的意義」の両立は、まさに渋沢栄一が説いた理念そのものです。単なる債務の株式化ではなく、企業の社会的価値向上が前提となっています。
小さな改善の積み重ねを具体的に計画化することで大きな成果を生む
DES制度で要求される詳細な改善計画は、二宮尊徳の「積小為大」の教えを体現しています。大きな債務問題も、小さな改善の積み重ねで解決していく必要があるのです。
売り手よし、買い手よし、世間よし
DESでは企業(売り手)、金融機関(買い手)、そして社会全体(世間)の3者すべてにメリットがある計画が求められます。これはまさに近江商人の「三方よし」の現代版と言えるでしょう。
興味深いことに、理化学研究所の脳科学研究が示す「構造化された思考フレームワークの重要性」は、古典が説く「計画の重要性」と完全に一致しています。これは「和魂洋才」の理念そのものです:
現代のDES要求水準は、これらの古典的叡智を現代的に具現化したものと言えるでしょう。表面的には厳しい条件に見えますが、実は2000年以上前から日本人が大切にしてきた経営の基本原則なのです。
重要:事業計画書が書けない経営者は、今後どうなるのでしょうか?
市場からの退場を避けるため、今すぐ行動してください。
商工中金のDES制度は革命的制度ですが、適用条件は極めて厳格です。
令和時代は「事業計画書が書ける経営者は支援を受け放題、書けない経営者は市場退場」という二極化の時代。今こそ計画力を磨き、「収益満開経営」を実現しましょう。
DES制度の厳格さは、令和時代の経営レベルを示しています。「算盤勘定と道徳の両立」「積小為大」の精神で、計画力を磨き続けましょう。
外部環境は確実に変化しています。今こそ事業計画書作成能力を身につける時です。
📚 DESの詳細については 中小企業庁 政策研究会資料 でもご確認いただけます