資金繰りを改善の手法 その12買掛金の支払期間の延長交渉

2024.05.13

中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。

現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、

資金繰りを改善する手法を伝えていきます。

 

12 買掛金の支払期間の延長交渉

 

買掛金の支払期間の延長交渉は、企業の資金繰りを改善する一つの手段です。

ただ、この方法にも当然メリットとデメリットの両面があります。

 

【メリット】

  1. 短期的な資金繰り改善 支払期間が延長されることで、一時的にキャッシュアウトフロー                  が抑えられ、資金繰りが改善されます。これにより、企業は他の支払いや投資に充てる資金を捻出できます。
  2. 運転資金の節約 長期的に見れば、支払期間が延長されることで運転資金の需要が抑えられ、                 銀行借入や社債発行などの資金調達コストを削減できます。
  3. 取引関係の強化 仕入先との良好な関係を維持し、安定的な取引を継続できる可能性があります。特に、               同業他社に比べ有利な支払条件を得られれば、競争力の源泉となり得ます。

【デメリット】

  1. 仕入先との信頼関係の損失 支払期間延長の交渉が功を奏さず、仕入先との関係が損なわれるリスクがあります。             場合によっては、今後の取引自体が困難になる可能性もあります。
  2. キャッシュディスカウントの喪失 現金払いによるキャッシュディスカウントを受けられなくなり、                実質的な仕入価格が上昇する可能性があります。
  3. 評判リスク 支払期間の延長交渉が過度に行われた場合、企業の信用が損なわれ、取引先全般からの信頼を失う           リスクがあります。
  4. 債務不履行リスク 資金繰りが一時的に改善されても、結果的に支払期限を守れなくなれば、債務不履行に陥る           可能性があります。

 

買掛金の支払期間の延長交渉は、短期的な資金繰り改善につながる半面、取引関係や評判、債務不履行リスクな

どのデメリットも存在します。

適切なタイミングと程度での交渉が重要であり、タイミングを謝るとデメリットのみが起こります。

 

そして、掛金の支払期間延長交渉を行うタイミングとしては、以下のようなケースが考えられます。

  1. 季節変動や一時的な売上減少期 売上が例年より落ち込む時期や、景気変動による一時的な売上減少期には、           資金ショートを避けるために支払期間延長が有効です。ただし、仕入先にも売上減少の事情を適切に説明し、          理解を求める必要があります。
  2. 大型投資や事業再編時 大規模な設備投資や事業再編を行う際、一時的に多額の資金を要する場合は、資金繰り             の観点から支払期間延長が検討できます。ただし、中長期的な資金調達計画の一環としての位置づけが必要です。
  3. 災害などの緊急事態発生時 自然災害や事故などにより、操業や売上が大きな影響を受けた場合、緊急避難的に支              払期間延長を要請するケースがあります。この場合、仕入先の理解を得やすいでしょう。
  4. 業界慣行を考慮したタイミング 同業他社の動向や業界慣行を見ながら、支払期間延長の交渉を検討することも             考えられます。ただし、単に業界に追随するだけでなく、自社の事情を適切に勘案することが肝心です。

 

いずれのケースでも、仕入先との信頼関係を損なわないよう、常に適切なコミュニケーションを心がけることが重要です。

また、一過性の対症療法に頼るのではなく、中長期的な資金調達計画の中で、支払期間延長をうまく活用することが賢明

でしょう。

 

そして、買掛金の支払期間延長交渉を行う際には、ただお願いするだけではなく、以下のような資料を準備することが重要です。

  1. 財務データ
  • 直近の貸借対照表、損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 過去数年間の財務データの推移 これらの資料で、企業の財務状況や資金繰りの現状を具体的に示すことができます。
  1. 資金繰り計画書
  • 資金運用表(週次・月次)
  • 資金調達計画 支払期間延長によるキャッシュフロー改善効果を明示した資金繰り計画を提示します。
  1. 事業計画書
  • 売上/収益計画
  • コスト削減計画
  • 投資計画 等 事業の中長期的な計画と、支払期間延長の位置づけを説明する資料が必要です。
  1. リスク分析資料
  • 債務償還計画
  • 代替的な資金調達案 万が一支払期限が守れなかった場合のリスクと対応策を示します。
  1. 取引実績資料
  • 仕入先との長期取引実績
  • 仕入金額の推移 取引関係の深さを裏付ける資料があると、より理解が得られやすくなります。

 

これらの資料を通じて、支払期間延長の必要性、資金繰り改善の具体的な効果、中長期的な事業計画上の位置づけ、

リスク対応力などを明確に説明することが重要です。

また、単に延長を求めるのではなく、Win-Winの関係構築を提案する姿勢も大切です。

 

つまり、計画的に行わなければただ信用不安だけ起こす結果になります。

きちんとして資料作成と日頃からのコミュニケーションが大切です。