中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
12 買掛金の支払期間の延長交渉
買掛金の支払期間の延長交渉は、企業の資金繰りを改善する一つの手段です。
ただ、この方法にも当然メリットとデメリットの両面があります。
【メリット】
- 短期的な資金繰り改善 支払期間が延長されることで、一時的にキャッシュアウトフロー が抑えられ、資金繰りが改善されます。これにより、企業は他の支払いや投資に充てる資金を捻出できます。
- 運転資金の節約 長期的に見れば、支払期間が延長されることで運転資金の需要が抑えられ、 銀行借入や社債発行などの資金調達コストを削減できます。
- 取引関係の強化 仕入先との良好な関係を維持し、安定的な取引を継続できる可能性があります。特に、 同業他社に比べ有利な支払条件を得られれば、競争力の源泉となり得ます。
【デメリット】
- 仕入先との信頼関係の損失 支払期間延長の交渉が功を奏さず、仕入先との関係が損なわれるリスクがあります。 場合によっては、今後の取引自体が困難になる可能性もあります。
- キャッシュディスカウントの喪失 現金払いによるキャッシュディスカウントを受けられなくなり、 実質的な仕入価格が上昇する可能性があります。
- 評判リスク 支払期間の延長交渉が過度に行われた場合、企業の信用が損なわれ、取引先全般からの信頼を失う リスクがあります。
- 債務不履行リスク 資金繰りが一時的に改善されても、結果的に支払期限を守れなくなれば、債務不履行に陥る 可能性があります。
買掛金の支払期間の延長交渉は、短期的な資金繰り改善につながる半面、取引関係や評判、債務不履行リスクな
どのデメリットも存在します。
適切なタイミングと程度での交渉が重要であり、タイミングを謝るとデメリットのみが起こります。
そして、掛金の支払期間延長交渉を行うタイミングとしては、以下のようなケースが考えられます。
- 季節変動や一時的な売上減少期 売上が例年より落ち込む時期や、景気変動による一時的な売上減少期には、 資金ショートを避けるために支払期間延長が有効です。ただし、仕入先にも売上減少の事情を適切に説明し、 理解を求める必要があります。
- 大型投資や事業再編時 大規模な設備投資や事業再編を行う際、一時的に多額の資金を要する場合は、資金繰り の観点から支払期間延長が検討できます。ただし、中長期的な資金調達計画の一環としての位置づけが必要です。
- 災害などの緊急事態発生時 自然災害や事故などにより、操業や売上が大きな影響を受けた場合、緊急避難的に支 払期間延長を要請するケースがあります。この場合、仕入先の理解を得やすいでしょう。
- 業界慣行を考慮したタイミング 同業他社の動向や業界慣行を見ながら、支払期間延長の交渉を検討することも 考えられます。ただし、単に業界に追随するだけでなく、自社の事情を適切に勘案することが肝心です。
いずれのケースでも、仕入先との信頼関係を損なわないよう、常に適切なコミュニケーションを心がけることが重要です。
また、一過性の対症療法に頼るのではなく、中長期的な資金調達計画の中で、支払期間延長をうまく活用することが賢明
でしょう。
そして、買掛金の支払期間延長交渉を行う際には、ただお願いするだけではなく、以下のような資料を準備することが重要です。
- 財務データ
- 直近の貸借対照表、損益計算書
- キャッシュフロー計算書
- 過去数年間の財務データの推移 これらの資料で、企業の財務状況や資金繰りの現状を具体的に示すことができます。
- 資金繰り計画書
- 資金運用表(週次・月次)
- 資金調達計画 支払期間延長によるキャッシュフロー改善効果を明示した資金繰り計画を提示します。
- 事業計画書
- 売上/収益計画
- コスト削減計画
- 投資計画 等 事業の中長期的な計画と、支払期間延長の位置づけを説明する資料が必要です。
- リスク分析資料
- 債務償還計画
- 代替的な資金調達案 万が一支払期限が守れなかった場合のリスクと対応策を示します。
- 取引実績資料
- 仕入先との長期取引実績
- 仕入金額の推移 取引関係の深さを裏付ける資料があると、より理解が得られやすくなります。
これらの資料を通じて、支払期間延長の必要性、資金繰り改善の具体的な効果、中長期的な事業計画上の位置づけ、
リスク対応力などを明確に説明することが重要です。
また、単に延長を求めるのではなく、Win-Winの関係構築を提案する姿勢も大切です。
つまり、計画的に行わなければただ信用不安だけ起こす結果になります。
きちんとして資料作成と日頃からのコミュニケーションが大切です。