中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
引き続き資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
31 小口債権の回収強化
資金繰りを改善するための手法の一つに「小口債権の回収強化」があります。
これは、会社が取引先に対して持っている小さな金額の未収金を効率的に回収することを指します。
まず「小口債権」とは何かというと、会社が販売した商品やサービスの代金で、取引先からまだ
支払われていない小さな金額の債権のことです。例えば1万円未満の未収金が多数ある場合などが
該当します。
この小口債権が回収できずに放置されると、総額では結構な金額になってしまいます。
資金繰りが厳しくなる原因の一つとなるのです。
そこで、こうした小口債権を強化して回収することで、資金繰りを改善することができます。
具体的な手法としては以下のようなものがあげられます。
このように、小口債権に着目し、適切な対策を講じることで、資金繰りが改善されるのです。
まずは自社の実態を把握し、優先的に取り組むべき施策を検討するとよいでしょう。
どうして、小口債権なのとかいうと、小口債権に注力する理由は主に以下の2点があげられます。
小口債権1件当たりの金額は小さくても、件数が多いと総額では相当な金額になります。
例えば、1万件の1万円未満の債権があれば、その総額は1億円以上にもなり得ます。
このように小口債権は個々では些細に見えても、積み重なれば大きな金額になるのです。
2.回収が難しい
小口債権は金額が小さいため、回収に従事するコストに見合わなかったり、会社側も軽視しがちです。
しかし、回収できずに放置されれば累積して大きな金額になってしまいます。
また、取引先との継続的な取引関係があるため、債権回収に遠慮が生じがちです。
こうした理由から、小口債権は取り組みが遅れがちで、実は回収が難しい領域なのです。
一方で総額は大きく、資金繰り改善の大きな機会ともなります。
そのため、小口債権に注力することで、今まで手つかずだった資金の回収が図れ、資金繰り改善に大
きく寄与できるメリットがあるのです。
コストに見合わない小さな債権でも、着実に回収を進める重要性があるわけです。
このことは、「小口」ということに意味があるのではなく、小口でも債権であることはかわらない。
「回収なくして営業無し」という意識づけを徹底することで、お金に対する意識を根付かせるという
ことです。
「小口」であるか「大口」であるかは本質的には関係ありません。
あくまでも未収金=債権である以上、それを適切に回収することが重要なのです。
小口債権に着目するのは、従来は金額が小さいため、回収に注力されてこなかった領域であることに起因します。
しかし、それらを積み重ねると意外と大きな金額になり、資金繰りに影響を与えるからこそ、改めて取り組む
必要性が高まっているのです。
つまり、金額の大小に関わらず、債権は債権として、きちんと回収する姿勢と体制を整備することが重要なのです。
そうすることで、営業活動により発生した債権を着実にキャッシュにできます。
お金に対する意識を経営陣から現場まで徹底させることで、「回収なくして営業なし」という原則を組織に浸透さ
せることができます。このような意識改革が、資金繰り改善に向けた土台となるのです。
ですので、あくまで「小口」に着目するのではなく、債権全般に対する姿勢や体制の重要性を再認識する好機と
捉えるべきだと言えます。
ということは、経理部門だけがするアクションなのではなく、全社的なアクションなのです。
重要なのは、回収というのを業務フローに行動計画としてプランニングされているかどうかです。
債権回収は経理部門だけの課題ではなく、全社的な取り組みが不可欠です。
以下の点が重要になります。
・回収を業務フローに組み込む
単に回収するだけでなく、債権発生から回収完了までの一連のプロセスを業務フローとして明確化し、
社内でルール化・標準化することが肝心です。
・役割分担と連携を明確化
営業部門が債権を発生させ、経理部門が回収を担当するなど、各部門の役割を明確にします。
さらに、販売後の回収フェーズでの連携体制を構築します。
・経営陣からのコミットメント
債権回収は資金繰り改善に直結する重要課題です。経営陣が回収の重要性を自覚し、強いメッセージを
発信することで、全社的な意識付けが可能になります。
・教育・研修の実施
債権回収に関する知識や具体的なノウハウ、対応方法などを、社内研修などで周知・徹底することが
不可欠です。
つまり、債権回収を単なる経理作業ではなく、全社的な行動計画として位置づけ、体系的に取り組む
ことが重要なのです。
回収への意識を経営陣から現場まで浸透させ、計画的に業務に組み込むことで、初めて実践的な取り
組みとなり、資金繰り改善に結びつくのです。