資金繰り改善の手法 その32 棚卸しとは?

2024.09.03

多くの日本の中小零細企業は「お金」の問題で苦しんでいます。
そこで、中小零細企業を専門の財務コンサルタントの観点から、
資金繰り改善の手法について、解説していきます。

資金繰り改善するには、棚卸資産の圧縮を考えることが重要なのですが、
その前に、まず「棚卸」そのものの重要性について説明いたします。
なぜかというと、現状が分からないと圧縮のしようもないからです。
また、殆どの中小零細企業は棚卸をしていません。

そこで、初心者にもわかりやすく具体例を交えて説明します。

棚卸の重要性:

1. 正確な経営状況の把握
棚卸しを適切に行うことで、企業の実際の資産状況を正確に把握できます。これは経営判断の基礎
となる重要な情報です。

具体例:
文房具店Aさんは、年に1回の決算時しか棚卸しをしていませんでした。ある日、融資を受けるために
銀行に財務諸表を提出したところ、実際の在庫と帳簿上の在庫に大きな差異があることが判明。
融資の審査に時間がかかり、事業拡大の機会を逃してしまいました。

2. 在庫ロスの発見と防止
定期的な棚卸しにより、商品の盗難や破損、賞味期限切れなどの在庫ロスを早期に発見し、対策を講
じることができます。

具体例:
八百屋Bさんは、毎月の棚卸しを始めました。すると、特定の野菜の在庫数が帳簿と合わないことに気
づきました。調査の結果、アルバイトの不正が発覚。早期発見により大きな損失を防ぐことができました。

3. 適切な仕入れ計画の立案
正確な在庫状況を把握することで、過剰在庫や品切れを防ぎ、適切な仕入れ計画を立てることができます。

具体例:
雑貨店Cさんは、四半期ごとの棚卸しを始めました。その結果、季節商品の在庫推移が明確になり、翌年の
仕入れ時期と数量を最適化。在庫金額を30%削減しつつ、品切れによる機会損失も減らすことができました。

4. 税務申告の正確性向上
適切な棚卸しは、正確な税務申告につながります。これにより、税務調査のリスクを軽減できます。

具体例:
工務店Dさんは、以前は年1回の大まかな棚卸しか行っていませんでした。税務署の指導を受け、四半期ごとの
棚卸しを始めたところ、資材の使用状況が明確になり、原価管理も容易になりました。
結果として、より正確な経理処理が可能になり、税務調査でもスムーズに対応できるようになりました。

5. 資金繰りの改善
正確な在庫状況を把握することで、不要な在庫の削減や適切な仕入れが可能となり、資金繰りの改善につな
がります。

具体例:
小さな衣料品店Eさんは、月次で棚卸しを始めました。その結果、売れ筋商品と滞留商品が明確になり、仕入れ
の最適化が可能に。在庫金額を20%削減でき、その分の資金を広告宣伝費に回すことで売上増加につながりました。

6. 業務効率の向上
定期的な棚卸しは、商品の整理整頓にもつながり、日常業務の効率化にも寄与します。

具体例:
文具メーカーFさんは、半年に1度の棚卸しを始めました。棚卸しの際に商品の配置も見直すことで、ピッキング
作業の効率が向上。さらに、使用頻度の低い原材料が判明し、保管スペースの有効活用にもつながりました。

7. 経営者の意識改革
定期的な棚卸しを行うことで、経営者自身が在庫管理の重要性を実感し、経営改善への意識が高まります。

具体例:
小さな町工場Gさんは、四半期ごとの棚卸しを始めました。棚卸作業を通じて、使われていない機械部品や過剰な
資材在庫に気づき、「もったいない」意識が芽生えました。
これをきっかけに、製造プロセス全体の見直しを行い、生産効率の向上につながりました。

以上のように、適切な棚卸しは単なる在庫確認以上の重要な意味を持ちます。
特に中小零細企業にとっては、限られた経営資源を有効活用するための重要なツールとなります。
まずは、決算時だけでなく、四半期や半期など、定期的な棚卸しから始めることをおすすめします。
そして、その結果を経営に活かすことで、着実な業績向上につながっていくでしょう。

メルマガ詳細