資金繰り改善の手法その42 「納品したらお金が増える」は大きな誤解 ~受注から入金までの期間が資金を固定化する~

2024.11.21

多くの社長は「商品やサービスを納品すれば、売上が立ち、お金が増える」

と考えています。

 

確かに、決算書の上ではそうかもしれません。

 

しかし、実際の資金繰りは全く違う動きをしているのです。

 

ある社長との会話をご紹介します。

 

社長:「売上は順調に伸びているのに、なぜか通帳の残高が減っていくんです」

 

私:「それは、資金が商品やサービスに変わっているからですね」

 

社長:「どういうことですか?」

 

この社長の疑問は、多くの社長が抱える悩みの本質を表しています。

 

■まず、お金の動きを理解しましょう

 

例えば、100万円の商品を販売する場合を考えてみましょう。

【一般的な流れ】

  1. 受注(0 日目)
  2. 仕入・準備(数日~数週間)
  3. 納品(納 期)
  4. 請求(月末)
  5. 入金(翌月末や翌々月末)

 

この間、あなたの会社のお金はどうなっているでしょうか?

 

・仕入代金は先に支払う ・人件費は毎月支払う ・家賃や光熱費も発生する

・その他の経費も必要

つまり、受注してから入金されるまでの期間、必要な資金は全て会社が立て替えているのです。

 

■数字で見てみましょう

月商1,000万円の会社の例:

【支出】

・仕入代金:500万円(納品前に支払)

・人件費:300万円(毎月25日) ・その他経費:100万円(都度支払) 合計:900万円

【入金】

・売上1,000万円(2ヶ月後に入金)

この場合、2ヶ月分の運転資金、つまり1,800万円が必要になります。

これが「売上が増えるほど資金繰りが苦しくなる」理由です。

 

■多くの社長が陥る誤解

  1. 「 売上=お金」という思い込み

・売上は権利が発生しただけ

・実際のお金は入金されるまで増えない

 

  1. 「回収サイトだけの問題」という誤解

・支払から回収までの全期間が重要

・その間の資金を会社が準備する必要がある

 

  1. 「何とかなる」という危険な考え                                           ・少しずつ積み重なる資金負担

・気づいた時には取り返しのつかない状態に

 

■ではどうすれば良いのか?

 

まず必要なのは、自社の「資金の動き」を理解することです。

  1. 図 に書き出してみる

・受注から入金までの流れ ・その間に発生する支出

・実際の資金の動き

  1. 期間を把握する

・受注から納品までの日数

・納品から入金までの日数

・支払いのタイミング

  1. 必要資金を計算する

・月々の固定費

・変動費の支払時期

・入金までの必要運転資金

■具体的な改善のヒント

  1. 入 金までの期間を意識する

・請求のタイミング

・入金条件の見直し

・前受金の検討

  1. 支出のタイミングを管理する

・仕入れ時期の最適化

・支払条件の交渉

・在庫の適正化

  1. 資金計画を立てる

・週単位での資金の動き

・月単位での収支計画

・季節変動への対応

 

■最後に

「納品=お金が増える」という考え方を

改める必要があります。

むしろ、 「納品=資金が商品やサービスに形を変えた」

と考えるべきです。

その上で、どうすれば資金の動きを

スムーズにできるか、を考えることが

資金繰り改善の第一歩となります。

 

次回は、具体的な改善方法として、

受注から納品までの期間短縮について お話ししたいと思います。

今日は、まず自社の受注から入金までの

流れを図に書き出してみてください。

それだけで、新しい発見があるはずです。