資金繰り改善の手法 その45
単なる売上増加じゃない!販路拡大で実現する資金繰り改善
~財務の視点から考える販路戦略~
多くの社長から「売上を上げれば資金繰りは改善する」という声をよく聞きます。
確かに、売上を増やすことは大切ですが、
実は販路拡大には、単なる売上アップ以上の重要な意味があるのです。
今回は、財務の観点から、なぜ販路拡大が資金繰り改善に効果的なのかをご説明します。
■売上増加≠資金繰り改善?
「売上が上がれば資金は自然と潤うはず…」
そう思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
例えば、売掛金の回収までにタイムラグがあったり、仕入れの支払いが先に必要だったり…。
売上が増えても、すぐには手元資金として使えないケースがほとんどです。
そこで重要になってくるのが、販路の多様化なのです。
■販路拡大がもたらす4つのメリット
販路によって支払条件は様々です。
小売店なら即金、大手企業なら60-90日後の支払い、EC販売なら即時入金…。
複数の販路を持つことで、資金の入金タイミングを分散させることができます。
これにより、特定の時期に資金が偏ることを防ぎ、安定的な資金繰りが可能になるのです。
どんなビジネスにも繁忙期・閑散期があるものです。
しかし、異なる特性を持つ販路を確保することで、売上の季節変動を平準化できます。
夏場が忙しい業態と冬場が忙しい業態、季節に左右されない業態…。
これらをうまく組み合わせることで、年間を通じて安定した資金の流れを作ることができます。
「ある日突然、大口取引先からの発注がストップした…」
こんな事態は、誰にでも起こり得ます。
特定の取引先や業界に依存することは、資金繰りの観点から大きなリスクとなります。
複数の販路を持つことで、そういったリスクを最小限に抑えることができるのです。
多くの中小企業は、大手企業の下請けとして長年事業を行っているケースが多く見られます。
この場合、取引条件や価格が固定化され、低い利益率での取引を余儀なくされていることが
ほとんどです。
しかし、新規の取引先を開拓する際には、新たな条件での取引が可能です。
例えば:
・直接取引による中間マージンの確保 ・付加価値の高い商品・サービスの提案 ・新しい価格設定の導入
これらにより、従来よりも高い利益率を確保できる可能性が広がります。
結果として、売上の質を向上させ、資金繰りの改善にもつながるのです。
■ただし、注意点もあります
販路拡大は万能薬ではありません。以下のような点には特に注意が必要です。
・在庫管理の複雑化 ・管理コストの増加 ・取引先との関係維持
例えば、販路が増えることで在庫管理が複雑になり、かえって資金繰りを圧迫する可能性もあります。
適切な管理体制を整えることが重要です。
■まとめ:計画的な販路拡大を
販路拡大は、単なる売上増加策ではありません。
・資金の入金タイミングの分散 ・季節変動の平準化 ・リスクの分散
・運転資金の最適化 ・利益率の改善機会
これらの効果を通じて、着実な資金繰り改善につながるのです。
特に、従来の下請け構造から脱却し、新たな取引先との関係構築を通じて、
より高い収益性を確保できる可能性があることは、見逃せないポイントです。
ただし、やみくもに販路を増やせばいいというわけではありません。
自社の経営資源や管理能力を考慮しながら、計画的に進めていくことが大切です。
財務の視点を持って販路拡大を検討することで、より効果的な資金繰り改善を実現
できるはずです。
経営において、売上アップは重要な目標の一つですが、それだけでなく、財務的な視点
を持って事業を展開することで、より安定した経営が可能になります。
ぜひ、自社の販路戦略を見直す際の参考にしていただければ幸いです。