資金繰り改善の手法 その45 単なる売上増加じゃない!販路拡大で実現する資金繰り改善

2024.12.11

資金繰り改善の手法 その45

単なる売上増加じゃない!販路拡大で実現する資金繰り改善

~財務の視点から考える販路戦略~

 

多くの社長から「売上を上げれば資金繰りは改善する」という声をよく聞きます。

 

確かに、売上を増やすことは大切ですが、

実は販路拡大には、単なる売上アップ以上の重要な意味があるのです。

 

今回は、財務の観点から、なぜ販路拡大が資金繰り改善に効果的なのかをご説明します。

 

■売上増加≠資金繰り改善?

「売上が上がれば資金は自然と潤うはず…」

そう思われる方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、実際にはそう単純ではありません。

 

例えば、売掛金の回収までにタイムラグがあったり、仕入れの支払いが先に必要だったり…。

売上が増えても、すぐには手元資金として使えないケースがほとんどです。

 

そこで重要になってくるのが、販路の多様化なのです。

 

■販路拡大がもたらす4つのメリット

  1. 取引条件の多様化

販路によって支払条件は様々です。

小売店なら即金、大手企業なら60-90日後の支払い、EC販売なら即時入金…。

複数の販路を持つことで、資金の入金タイミングを分散させることができます。

これにより、特定の時期に資金が偏ることを防ぎ、安定的な資金繰りが可能になるのです。

  1. 季節変動への対応

どんなビジネスにも繁忙期・閑散期があるものです。

しかし、異なる特性を持つ販路を確保することで、売上の季節変動を平準化できます。

夏場が忙しい業態と冬場が忙しい業態、季節に左右されない業態…。

これらをうまく組み合わせることで、年間を通じて安定した資金の流れを作ることができます。

  1. リスク分散

「ある日突然、大口取引先からの発注がストップした…」

こんな事態は、誰にでも起こり得ます。

特定の取引先や業界に依存することは、資金繰りの観点から大きなリスクとなります。

複数の販路を持つことで、そういったリスクを最小限に抑えることができるのです。

  1. 利益率の改善チャンス

多くの中小企業は、大手企業の下請けとして長年事業を行っているケースが多く見られます。

この場合、取引条件や価格が固定化され、低い利益率での取引を余儀なくされていることが

ほとんどです。

しかし、新規の取引先を開拓する際には、新たな条件での取引が可能です。

例えば:

・直接取引による中間マージンの確保 ・付加価値の高い商品・サービスの提案 ・新しい価格設定の導入

これらにより、従来よりも高い利益率を確保できる可能性が広がります。

 

結果として、売上の質を向上させ、資金繰りの改善にもつながるのです。

■ただし、注意点もあります

販路拡大は万能薬ではありません。以下のような点には特に注意が必要です。

・在庫管理の複雑化 ・管理コストの増加 ・取引先との関係維持

例えば、販路が増えることで在庫管理が複雑になり、かえって資金繰りを圧迫する可能性もあります。

適切な管理体制を整えることが重要です。

 

■まとめ:計画的な販路拡大を

販路拡大は、単なる売上増加策ではありません。

・資金の入金タイミングの分散 ・季節変動の平準化 ・リスクの分散

・運転資金の最適化 ・利益率の改善機会

これらの効果を通じて、着実な資金繰り改善につながるのです。

 

特に、従来の下請け構造から脱却し、新たな取引先との関係構築を通じて、

より高い収益性を確保できる可能性があることは、見逃せないポイントです。

 

ただし、やみくもに販路を増やせばいいというわけではありません。

自社の経営資源や管理能力を考慮しながら、計画的に進めていくことが大切です。

 

財務の視点を持って販路拡大を検討することで、より効果的な資金繰り改善を実現

できるはずです。

経営において、売上アップは重要な目標の一つですが、それだけでなく、財務的な視点

を持って事業を展開することで、より安定した経営が可能になります。

 

ぜひ、自社の販路戦略を見直す際の参考にしていただければ幸いです。