資金繰り改善の手法 その46 補助金・助成金活用の落とし穴

2024.12.19

資金繰り改善の手法その46

【補助金・助成金活用の落とし穴】

 

多くの社長は「補助金や助成金はもらえるお金だから、資金繰り改善の即効薬になる」

と考えがちです。

 

しかし、実際はそう単純ではありません。

 

補助金・助成金の基本的な仕組みを理解することが重要です。

 

ほとんどの場合、以下のような流れになります:

1. 事業計画を立案し申請
2. 審査・採択
3. 事業の実施(自己資金で支払い)
4. 実績報告書の提出
5. 審査
6. 補助金・助成金の交付

 

ここで注目すべき点は、補助金・助成金が実際に振り込まれるのは、事業完了後だということです。

つまり、事業実施時には全額を自社で立て替える必要があります。

 

【資金繰りへの実際の影響】

例えば、1000万円の設備投資に対して500万円の補助金が交付される場合を考えてみましょう。

初期投資(支出):
– 設備費用:1000万円
– 申請関連費用:50万円
– 専門家への委託費:30万円
合計:1080万円の支出

補助金受領までの期間(約6ヶ月〜1年):
– 毎月の返済や経費支払いの負担増
– 運転資金の圧迫
– 予期せぬ追加費用の発生リスク

補助金受領後:
– 補助金額:500万円の入金

実質的な自己負担:580万円

【隠れたコストとリスク】

補助金・助成金の活用には、表面的には見えにくい多くのコストやリスクが伴います:

1. 時間的コスト
– 申請書類の作成
– 実績報告書の作成
– 各種証憑書類の準備と保管
– 担当者とのやり取り

2. 人的リソース
– 事業担当者の配置必要性
– 通常業務への影響
– 専門知識の習得時間

3. 追加的な金銭的コスト
– 専門家への相談料
– 申請代行費用
– 予期せぬ追加工事や修正対応

4. コンプライアンスリスク
– 不適切な申請による返還リスク
– 書類の保管義務(多くの場合5年以上)
– 監査対応の必要性

【効果的な活用のために】

補助金・助成金を効果的に活用するためのポイントは:

1. 事業計画との整合性
– 補助金ありきではなく、本来必要な投資かを検討
– 補助金が無くても実施する価値のある事業であるか

2. 資金繰りの綿密な計画
– 立替払い期間の資金繰り計画
– 金融機関からのつなぎ融資の検討
– 予備費の確保

3. 実施体制の整備
– 社内の担当者・体制の明確化
– 外部専門家との連携体制
– 書類管理体制の構築

【まとめ】

補助金・助成金は、確かに事業拡大や新規投資の有効な手段となり得ます。

しかし、「もらえるお金だから」という安易な考えでの活用は、かえって経営を圧迫するリスクがあります。

 

特に以下の点を重視して検討することをお勧めします:

– 補助金ありきではなく、事業計画が先にあるべき
– 立替払い期間の資金繰りを綿密に計画する
– 人的・時間的コストを含めた総合的な判断を行う
– 依頼ありきではなく、必要に応じて専門家に相談する

補助金・助成金は、適切に活用すれば企業成長の強力な後押しとなりますが、

安易な活用は禁物です。

 

まずは自社の経営状態と事業計画を冷静に見つめ直し、補助金・助成金が

本当に必要かつ有効な手段であるかを慎重に検討することをお勧めします。