資金繰り改善の手法 その52 未回収債権が引き起こす「見えないコスト」の実態

2025.02.06

【未回収債権が引き起こす「見えないコスト」の実態】

未回収債権についてどのようにお考えでしょうか。

多くの社長は、未回収債権を「まだ回収できていない売掛金」程度に

しか考えていません。

 

しかし、実際には目に見えない多くのコストが発生しています。

今回は、その「見えないコスト」の実態について解説していきます。

 

まず、資金調達コストの増加について考えてみましょう。

未回収債権があることで、思わぬ形で資金調達コストが増加してい

きます。

本来なら回収できているはずの売掛金が滞ることで、その分の運転

資金を別途調達する必要が生じます。

その結果、追加の借入や当座貸越の利用が増え、金利負担が増加する

ことになります。

 

さらに、未回収債権が増えると、

さらに、未回収債権が増えると、金融機関からの評価が下がります。

これは、単に回収できていない債権があるということだけでなく、

以下の理由によります。

 

まず、金融機関は未回収債権の存在を「与信管理能力の低さ」と評価します。

取引先の支払能力を適切に判断できていない、または取引条件の設定が適切

でないと判断されるためです。

 

次に、未回収債権は将来の貸倒れリスクを示す指標として扱われます。

債権が回収できないということは、その分が将来、損失として計上される可能

性があることを意味します。

 

さらに、未回収債権の存在は、企業の資金繰り管理能力への不安材料となります。

計画的な資金回収ができていないということは、返済原資の確保に問題がある

可能性を示唆するためです。

 

これらの要因により、金融機関は新規借入時の金利を高く設定したり、借入額を

制限したりすることになります。

 

次に、機会損失の重大さについて見ていきましょう。

未回収債権による機会損失は、単なる売掛金の未回収額をはるかに超える影響が

あります。

設備投資や人材採用などの機会を逃すことで、競合他社に後れを取るリスクが生

じます。

また、現金仕入れができず、有利な仕入れ条件を逃すことで、仕入先との関係悪化

にもつながりかねません。

 

未回収債権により新規設備投資が1年遅れ、その間に競合他社にシェアを奪われ、

年間2,000万円の売上減少につながることもおこります。

このように、未回収債権は新規事業への投資機会も奪ってしまうのです。

 

さらに深刻なのが、組織への負の影響です。営業担当者が回収業務に追われ、新規営業

活動が停滞することで、社員のモチベーションが低下します。

また、管理部門の業務効率が低下し、本来の業務に集中できない状況も発生します。

特に深刻なのが、営業部門と経理部門の対立など、部門間の信頼関係に亀裂が入ることです。

 

これらの問題に対する対策として、以下の3つのポイントが重要です。

まず、取引開始前の与信管理の徹底や明確な与信基準の設定など、予防的なアプローチが必要

です。

次に、回収状況の可視化や遅延の早期把握システムの構築など、早期対応の仕組み作りが重要

です。

そして、回収責任の明確化や部門間連携の強化など、組織体制の整備も欠かせません。

 

未回収債権がもたらす「見えないコスト」は、企業経営に深刻な影響を及ぼします。これらの

コストを認識し、適切な対策を講じることが、健全な経営には不可欠です。

まずは自社の未回収債権の状況を正確に把握し、その影響を数値化してみることをお勧めします。

それが、効果的な対策を講じる第一歩となるはずです。