【与信管理の本質~】
前回までで、未回収債権がもたらす様々な問題について見てきました。
今回は、その対策の要となる「与信管理」について、
特に「なぜ機能しないのか」という観点から、本質に迫ってみたいと思います。
■与信管理が機能しない3つの根本原因
1. 形式主義への陥落
多くの企業で与信管理規程は存在します。
しかし、その多くが形骸化し、単なる手続きとして扱われています。
新規取引先との取引開始時に形式的なチェックを行うだけで、その後
の継続的な管理が行われていないケースが少なくありません。
2. 現場との乖離
与信管理部門(多くの場合は経理部門)と営業部門との連携不足も大きな
問題です。
与信管理が「営業の足かせ」として認識され、現場の実態や必要性と遊離
した規則として扱われがちです。
3. 経営者の理解不足
最も根本的な問題は、経営者自身が与信管理の本質的な重要性を理解して
いないことです。「売上を確保するためには必要悪」という認識に留まって
いるケースが多く見られます。
■形骸化の具体的な現象
1. チェックリストの形式的運用
・必要書類の形式的な確認のみ
・実質的な分析や判断の欠如
・定期的な見直しの未実施
2. 例外処理の常態化
・「特別な事情」による基準緩和の頻発
・営業優先の判断による基準無視
・事後承認の横行
3. 情報更新の不徹底
・取引先の信用状況の変化への対応遅れ
・与信限度額の適時見直し未実施
・警戒シグナルの見落とし
■本来あるべき与信管理の姿
1. 経営戦略との連動
与信管理は単なるリスク管理ツールではありません。
顧客ポートフォリオ管理の一環として、経営戦略と密接に連動させる
必要があります。
2. 動的な管理体制
・定期的な与信限度額の見直し
・取引先の信用状況のモニタリング
・市場環境の変化への対応
・業界動向の把握と反映
3. 組織的な連携体制
・営業部門との密接な情報共有
・経営層への定期的な報告と協議
・外部機関との連携
・社内教育の実施
■実効性のある与信管理のポイント
1. 明確な基準と柔軟な運用
・客観的な与信判断基準の設定
・業界特性を考慮した柔軟な運用
・例外処理の明確なルール化
2. 情報の質と更新頻度
・信用調査会社の適切な活用
・取引先との直接的なコミュニケーション
・業界情報の継続的な収集
3. インセンティブの整備
・営業評価への与信管理の組み込み
・リスク管理の成果の可視化
・適切な権限委譲と責任の明確化
■与信管理改革のステップ
1. 現状分析
・現行の与信管理体制の問題点洗い出し
・未回収発生事例の分析
・組織的な課題の特定
2. 体制整備
・与信管理規程の見直し
・組織体制の再構築
・システム整備
3. 運用改善
・社内教育の実施
・PDCAサイクルの確立
・定期的な効果測定
■まとめ:与信管理の本質を捉え直す
与信管理は、単なるリスク回避の仕組みではありません。
それは、持続可能な経営を実現するための重要な経営基盤です。
形骸化を防ぎ、実効性のある与信管理を実現するためには、
以下の3点が重要です。
1. 経営者自身が与信管理の本質的重要性を理解すること
2. 現場の実態に即した実践的な仕組みを構築すること
3. 継続的な改善と組織的な取り組みを実現すること
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