資金繰り改善の手法 その54 真の営業とは~回収するまでが営業である~

2025.02.20

 

 

「回収するまでが営業である」

-この言葉の重要性を、多くの社長や営業担当者は本当に理解しているでしょうか。

今回は、この本質的な考え方を軸に、営業現場の課題と解決策を考察していきます。

 

■「回収するまでが営業」の本質

1. この言葉が意味するもの
・営業活動は代金回収で完結する
・顧客との信頼関係構築が最終目的
・持続可能なビジネスの基盤作り
・キャッシュフローの確保が企業存続の鍵
・取引先との長期的な関係性構築

2. なぜ重要なのか
・キャッシュフローの確保による経営の安定性
・健全な取引関係の維持と発展
・企業の持続的成長の実現
・リスク管理の観点からの重要性
・企業価値の向上につながる要素

3. 現状との乖離
・売上計上で終わる意識が蔓延
・回収は経理部門の仕事という誤解
・取引先との関係性の希薄化
・部門間の連携不足による非効率
・リスク管理意識の欠如

■現在の営業現場が抱える構造的問題

1. 歪んだ評価制度
・売上額のみの評価による弊害
・回収状況が反映されない評価基準の問題点
・短期的な成果主義がもたらす悪影響
・リスク管理能力の評価軽視
・長期的な取引関係構築への無関心

2. 組織的な課題
・営業部門と経理部門の分断による非効率
・責任の所在が不明確な体制
・情報共有の不足による問題
・部門間コミュニケーションの欠如
・統合的な管理システムの未整備

3. 意識の問題
・回収意識の欠如がもたらす影響
・顧客の財務状況への無関心
・リスク管理意識の不足
・短期的な売上至上主義
・持続可能な取引への無理解

■「回収するまでの営業」を実現するための具体策

1. 意識改革の推進
・営業の定義の再確認と浸透
・回収までの責任意識の醸成方法
・顧客との関係性の再構築プロセス
・リスク管理意識の向上施策
・長期的視点での営業活動の重要性理解

2. 評価制度の抜本的見直し
・回収状況を含めた総合評価システムの構築
・長期的な取引関係を評価する指標の導入
・リスク管理能力の評価基準の設定
・部門横断的な評価制度の確立
・インセンティブ制度の再設計

3. 実務的な改善策の実施
・与信管理の強化と体系化
・回収計画の策定と進捗管理の徹底
・取引条件の適切な設定基準の確立
・早期警戒システムの導入
・問題発生時の対応フローの整備

■具体的なアクションプランの展開

1. 営業プロセスの再設計
・商談~契約~納品~回収までの一貫管理体制
・各段階での確認事項の明確化と標準化
・問題発生時の対応フローの整備と周知
・デジタルツールの活用による効率化
・進捗管理の可視化と共有

2. 教育・研修プログラムの充実
・財務基礎知識の習得プログラム
・与信管理の実務研修の実施
・交渉力向上のトレーニング体系
・リスク管理能力の向上施策
・コミュニケーションスキル研修

3. システム・ツールの整備と活用
・回収状況の可視化システム
・与信情報の共有プラットフォーム
・早期警戒システムの構築と運用
・データ分析ツールの導入
・業務効率化ツールの活用

■営業担当者に求められる新たなスキルセット

1. 財務分析力の強化
・取引先の財務状況の適切な理解
・支払能力の正確な評価
・リスクの早期発見能力
・財務諸表の読解力
・経営状況の総合的判断力

2. リスク管理能力の向上
・適切な与信限度額の設定能力
・支払条件の交渉力
・問題発生時の対応力
・リスクヘッジの方法理解
・予防的アプローチの実践

3. コミュニケーション力の醸成
・取引先との良好な関係構築能力
・問題発生時の効果的な交渉力
・社内関係部署との円滑な連携
・情報共有の適切な実践
・信頼関係の構築と維持

■まとめ

「回収するまでが営業」という理念は、

企業経営の健全性を支える重要な考え方です。

この実現には、営業の定義の見直しから、評価制度の再構築、組織体制の改革まで、

包括的なアプローチが必要です。

 

特に重要なポイントは:
・営業活動の完了を回収時点と明確に定義すること
・回収状況を営業評価に適切に反映させること
・必要な教育・研修を継続的に実施すること
・部門間の連携を効果的に機能させること
・リスク管理意識を組織全体で共有すること

 

【チェックポイント】
□営業活動の完了を回収時点と定義していますか?
□回収状況は営業評価に反映されていますか?
□営業担当者に必要な教育は行われていますか?
□部門間の連携は効果的に機能していますか?
□リスク管理体制は適切に整備されていますか?

真の意味での「回収するまでの営業」を実現することは、

未回収債権問題の解決だけでなく、企業の持続的な成長にとって不可欠な要素

となります。

営業現場の意識改革から、具体的な制度設計まで、総合的なアプローチで取り

組む必要があります。