『 2025年の賃上げ戦略 – 事業計画に基づく持続可能な人材投資』
2025年、深刻な人手不足を背景に多くの企業が賃上げを検討しています。
東京商工リサーチの最新調査によれば、実に85.2%の企業が2025年度の賃上げを
予定しているとのこと。
しかし、この流れに安易に乗ることの危険性について考えてみる必要があります。
賃上げの現状と課題
同調査では、約3割の企業が「毎年の賃上げ実施は不透明」と回答し、
5.3%が「毎年の実施は難しい」と答えています。
また、賃上げの主な理由は「従業員の離職防止」(78.0%)や
「物価高への対応」(71.7%)であり、多くの企業が戦略的判断というより、
やむを得ない対応として賃上げを実施していることが明らかになっています。
このような状況下で最も重要となるのが、しっかりとした事業計画の存在です。
事業計画に基づく賃上げのメリット
事業計画を持つ企業では、収益予測に基づいた適正な賃上げ率の設定が可能になります。
また、キャッシュフローを考慮した実施時期の決定や、部門別・職種別の優先順位付け、
さらには投資計画との整合性確保まで、総合的な判断ができるようになります。
価格転嫁の計画的実施やコスト削減策の事前準備など、賃上げの原資確保についても
具体的な道筋を立てることができるのも大きなメリットです。
さらに、原材料価格高騰の影響試算や売上変動への対応準備など、リスク管理も可能となります。
計画なき賃上げの危険性
一方、事業計画なき賃上げは極めて危険です。
原資の裏付けのない賃上げは、コスト増の価格転嫁の遅れを招き、利益率の低下、ひいては財務
体質の悪化につながりかねません。
場当たり的な実施は長期的視点を欠き、経営基盤の弱体化や将来の投資機会損失をもたらす可能
性があります。
賃上げを検討する際は、まず以下の点を確認する必要があります:
– 収益予測は妥当か
– 資金繰りへの影響はどうか
– 価格転嫁は実現可能か
– 生産性向上策は具体化されているか
実施後も、予実管理の徹底、収益目標との整合性確認、キャッシュフローの監視、
そして必要に応じた早期の軌道修正が重要です。
事業計画に基づく賃上げは、適切な判断を可能にし、持続可能な実施を実現します。
リスクの事前把握も可能となり、結果として経営基盤の強化につながります。
逆に、計画なき賃上げは、経営の健全性と持続可能性を損ない、取り返しのつかない
事態を招く恐れがあります。
賃上げの検討に際しては、まず事業計画の策定から始めることこそが、企業の持続的な
成長と従業員の真の待遇改善への道なのです。
事業計画策定のご相談も承っております。お気軽にご連絡ください。