資金繰り改善の手法 その56 財務指標が語る真実

2025.03.06

資金繰り改善の手法 その56 財務指標が語る真実

 

未回収債権問題の背景には、財務指標に対する理解不足が潜んでいます。

今回は、財務指標から読み取れる真実と、キャッシュフロー経営の重要性

について解説します。

 

回収期間の意味するもの

多くの経営者は売上債権回転期間(売掛金回収期間)という財務指標を軽視

しています。

この指標は単なる数字ではなく、企業の健全性を映し出す鏡です。

 

回収期間の長期化は以下の警告信号を発しています:

1. 信用リスクの増大
回収期間が伸びるほど、未回収となるリスクは指数関数的に高まります。

90日を超える売掛金は、回収可能性が大きく低下するというのが経験則です。

2. 営業力の低下
回収期間の長期化は、営業担当者の交渉力低下や顧客に対する弱い立場を示

しています。強い営業力があれば、適切な回収サイクルを維持できるはずです。

3. 財務規律の欠如
経営者が回収期間を重要視していないこと自体が、財務規律の欠如を示してい

ます。P/L(損益計算書)偏重の経営姿勢の表れと言えるでしょう。

 

キャッシュフロー経営の重要性

「利益が出ているのに、なぜ資金ショートするのか?」

 

この疑問の答えは、キャッシュフロー経営の理解不足にあります。

1. P/LとCFの乖離
売上計上時点と入金時点のズレが、利益とキャッシュフローの乖離を生みます。

この乖離が大きいほど、企業は資金繰りに苦しむことになります。

 

2. 成長の罠
皮肉なことに、急成長企業ほど資金ショートのリスクが高まります。

売上の増加は運転資金の増加を意味し、回収期間が長いほどこの問題は深刻化します。

 

3. キャッシュコンバージョンサイクル
仕入れから入金までの期間を示すキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)は、

企業の資金効率を測る重要な指標です。このサイクルが長いほど、余分な運転資金が必要となります。

 

運転資金の本質的理解

運転資金への理解不足も、未回収債権問題の背景にあります。

1. 運転資金の構造
運転資金は「在庫+売掛金-買掛金」で表されます。

この式から明らかなように、売掛金の増加は直接的に運転資金需要を増加させます。

 

2. 成長に必要な資金
企業の成長には運転資金の増加が不可欠です。

例えば、年商1億円の企業が売上を20%増加させる場合、単純計算で2,000万円の売上増

に対し、回収期間が90日なら500万円の追加運転資金が必要になります。

 

3. 運転資金の調達源泉
運転資金の適切な調達源泉は何か?

本来、短期の運転資金需要には短期資金を、設備など長期の資金需要には長期資金を

充てるべきです。

しかし、回収期間が長期化すると、短期と長期の境界が曖昧になり、資金調達の構造

が歪みます。

 

財務指標を活用した経営改善

未回収債権問題を解決するには、以下の財務指標を定期的にモニタリングし、経営判断

に活用することが重要です:

 

1. 売上債権回転期間
業界標準と比較して自社の回収期間はどうか? 延長傾向にないか?

 

2. キャッシュコンバージョンサイクル
仕入れから入金までの期間を短縮する方法はないか?

 

3. 運転資金比率
売上に対する運転資金の比率は適正か? 改善の余地はないか?

 

まとめ

未回収債権問題の本質は、財務指標への理解不足にあります。

経営者が財務指標を経営判断の中心に据え、キャッシュフロー経営への理解を深める

ことが、この問題の解決への第一歩となります。