メルマガ第123回
賃上げの不可避性と計画性~従業員退職型倒産から学ぶ教訓~
を配信しました。
「メルマガ最新号で「賃上げの不可避性と計画性~従業員退職型倒産から学ぶ教訓~」
の内容が非常に示唆に富んでいるため、ここで詳しくご紹介します。
衝撃の最新データが示す現実
帝国データバンクの調査では、2024年に「従業員退職型」の倒産が過去最多の87件に
達したという衝撃的なデータが紹介されています。
人手不足による倒産全342件のうち、約4分の1がこのタイプだというのです。
特に影響を受けているのは、IT産業、人材派遣会社、美容室、老人福祉施設などの
サービス業と、設計者や施工監理者の退職が相次いだ建設業界。
この現象は、日本企業における「賃上げの不可避性」を如実に示しています。
「賃上げしない」という選択肢はもはや存在しない
「賃上げできない中小企業の淘汰が2025年に加速する可能性が高い」という専門家の
指摘を引用しながら、賃上げをコスト増加ではなく「企業存続のための必要な投資」
として捉え直す重要性を強調しています。
労働市場の逼迫、継続する物価高、競合他社の賃上げ実施—これらの環境圧力を考えると、
もはや賃上げを回避し続けることは経営判断としての選択肢にすらならないのです。
場当たり的賃上げの危険性
ただし、安易な賃上げにも警鐘を鳴らしています。
メルマガでは、場当たり的な賃上げがもたらす3つの危険性を明確に指摘しています:
1. 財務的な持続可能性の喪失
収益力と無関係な賃上げは資金繰りを悪化させ、原資の裏付けなき賃上げは将来的な経営
危機を招く可能性があります。
2.組織内の不公平感の醸成
基準の不明確な賃上げは社内に不満を生み、一部従業員のみの賃上げは組織の分断を深める恐れがあります。
3. 効果の一時性と逓減
金銭的動機づけのみでは効果が持続せず、市場相場の上昇に伴い効果が薄れていく傾向があります。
すでに「従業員退職型」の倒産を経験した企業の多くは、賃上げの必要性に気づいた時には
すでに手遅れだったか、あるいは場当たり的な対応に終始したケースが多いのではないので
しょうか。
計画的賃上げのための5つのステップ
メルマガの白眉は、不可避となった賃上げをいかに計画的に実施するかという具体的なステップ
の提示です。
1. 財務的基盤の確立
賃上げの原資を確保するための財務計画の策定が最優先。向こう3〜5年の収益予測と賃上げ
シミュレーション、必要利益率の設定と価格戦略の見直し、コスト構造の分析と効率化施策
の実施などが含まれます。
2. 人事評価制度の整備
賃上げは単なる金額アップではなく、適正な評価制度に基づくものであるべきあり、公平で
透明性の高い評価基準の確立、成果と貢献に応じた報酬体系の設計などが重要です。
3. 段階的な実施計画
一度に大きな賃上げを行うよりも、計画的な段階実施が持続可能性を高めます。
複数年にわたる賃上げロードマップの策定や、経営状況と連動した柔軟な調整メカニズムの
構築が必要です。
4. 総合的な人材戦略との統合
賃上げを単独策ではなく、総合的な人材戦略の一部として位置づける重要性。研修・育成制度
の充実、働き方改革による労働環境の改善なども並行して進めるべきです。
5. コミュニケーション戦略
賃上げの意図や基準を明確に伝えることで、その効果を最大化します。賃上げの目的と基準の
明確な説明、会社の業績や方向性の共有などが必要です。
メルマガから学ぶ経営者の姿勢
賃上げを単なるコスト増ではなく、「人材という最重要資産への投資」として捉え直す必要があり
ます。
「これからの厳しい経営環境において、賃上げを避けることはできません。
しかし、その実施方法によって、賃上げが企業の足かせになるか、競争力強化の原動力になるかが
決まります」。