資金繰り改善の手法その59 キャッシュフローが大切というけれど、経営者が知るべき資金の真実 ~会計数値と実態の違い~

2025.03.27

 

経営者が知るべき資金の真実 ~会計数値と実態の違い~

 

「先月の売上は過去最高でした。利益も確保できています。

でも、なぜか資金繰りが苦しい…」

 

このような悩みを抱える経営者は少なくありません。

実は、この状況には重要な理由があります。決算書の数字と実際の資金の動きは、

全く別物だからです。

 

多くの経営者は、月次の試算表や会計システムの出力帳票を見て、自社の資金状況を判断

しようとします。

税理士から提供される各種レポートも参考にするでしょう。

しかし、これらの数字は必ずしも実態を表していません。

 

なぜなら、一般的な会計システムは税務申告のために設計されているからです。

税務会計の基準に従って数字を計上するため、実際の資金の動きとは大きくかい離すること

があります。

 

具体例で見てみましょう。

 

製造業A社では、3月に1,000万円の商品を出荷しました。

会計上は3月の売上として計上されますが、実際の入金は、手形サイトが120日なので7月に

なります。

つまり、3月の試算表には1,000万円の売上が計上されていますが、実際の入金まで4ヶ月も

かかるのです。

 

さらに注意が必要なのは、よく目にする「キャッシュフロー計算書」です。一般的な会計

システムから出力されるこの帳票は、実は税務会計データを基に作成される「間接法」

によるものです。

 

つまり、実際の資金の動きを直接表したものではなく、税務会計上の数値を単に組み替えた

だけなのです。

 

このような会計数値と実態のズレは、様々な場面で発生します:

 

・売掛金の計上と実際の入金時期のズレ

・棚卸資産の評価と実際の仕入支払いのズレ

・減価償却費は費用計上されても実際の支出は伴わない

・役員借入金は簿外処理されることも多い

 

特に注意すべきは、成長期の企業です。

売上が増加すると、会計上は好調に見えます。

しかし、実際には売掛金が増加し、仕入れの支払いも増えるため、資金繰りは逆に厳しくなる

ことが多いのです。

 

では、実際の資金の動きを把握するには、どうすればよいのでしょうか。

 

それは、日々の入金予定と出金予定を、現実の取引に基づいて管理することです。

会計システムの数値に頼るのではなく、実際の取引条件や支払いサイトに基づいた管理が必要

です。

 

具体的には:

・得意先ごとの実際の支払いサイト

・手形の実際の満期日

・仕入先への支払期日

・給与や税金の支払い時期

・借入金の返済スケジュール

 

これらを、実際の期日に基づいて管理していく必要があります。

 

重要なのは、「会計上の数値」と「実際の資金の動き」は異なるという認識です。

会計数値は経営の一側面を表すものであり、必ずしも資金の実態を表してはいないのです。

 

次回は、この実際の資金の動きを管理するための具体的な方法についてお話しします。

会計システムとは別に、どのような管理の仕組みが必要なのか、実務で使える具体策を

ご紹介していきます。