資金繰り改善の手法 その60 実践的な資金管理の方法 ~現場で使える具体策~
前回は、会計数値と実際の資金の動きが異なることをお話ししました。
今回は、実務で本当に使える資金管理の具体的な方法をご紹介します。
資金管理の基本は、入金予定と出金予定を日次で把握することです。
ただし、ここで重要なのは、会計システムの数値ではなく、実際の取引に基づいた管理です。
まず、入金予定の管理方法についてお話しします。
多くの企業では、売掛金管理表や入金予定表を作成していますが、往々にして会計システム
の数値をベースにしています。
しかし、実効性のある資金管理のためには、得意先ごとの実態に即した管理が必要です。
例えば、A社という得意先がいるとします。
会計システム上の支払いサイトは締め後60日となっていますが、実際には毎月5日締め、
翌々月20日支払いで、振込手数料は先方持ちという取引条件です。
このような実際の取引条件に基づいて入金予定を管理する必要があります。
具体的な管理表には、以下の項目が必要です:
・得意先名
・請求金額
・締め日
・実際の支払い予定日
・支払い方法(振込/手形/相殺等)
・過去の支払い遅延実績
特に重要なのは、得意先ごとの支払い傾向の把握です。
約束の支払日より恒常的に遅れる先、四半期末は遅れがちな先、年度末は早める先など、
その特徴を把握し、実態に即した入金予定を立てることが重要です。
次に、出金予定の管理です。
出金には、仕入先への支払い、給与、税金、借入金返済など、様々な項目があります。
これらも実際の支払い条件に基づいて管理する必要があります。
仕入先への支払いであれば:
・仕入先ごとの実際の支払い条件
・支払い方法(振込/手形/相殺等)
・支払い手数料の負担
・締め日と支払い日の関係
固定費関連では:
・給与の支払日と金額
・社会保険料の引落日
・各種税金の納付期限
・リース料の引落日
・水道光熱費の支払い
借入金関連では:
・返済スケジュール
・利息の支払い時期
・新規借入の実行時期
これらを一覧化し、日次での資金の動きを把握します。
具体的な管理方法としては、エクセルで十分対応可能です。
重要なのは、フォーマットの整備ではなく、実態に即した情報を確実に記録することです。
また、入金予定と出金予定の管理に加えて、以下の点にも注意が必要です:
予定通りに入金や支払いが行われない場合の影響を即座に把握できるようにします。
資金ショートを防ぐため、取引金融機関との関係強化や、緊急時の資金調達手段を
確保しておきます。
一時的な余剰資金の効率的な運用方法も検討します。
このような実務的な資金管理の仕組みを構築することで、以下のような効果が期待できます:
・資金ショートの防止
・借入金の圧縮
・取引条件交渉の材料
・経営判断の精度向上
重要なのは、この管理を一時的なものではなく、日常的な業務として定着させることです。
そのためには、実務担当者の育成も重要になってきます。
次回は、この資金管理の仕組みを活用した具体的な改善活動についてお話しします。
実際にどのように資金繰りを改善していけばよいのか、具体的なアクションプランをご紹介します。