資金繰り改善の手法 その61 資金繰り改善の実践 ~具体的なアクションプラン~

2025.04.17

資金繰り改善の実践 ~具体的なアクションプラン~

 

前回までは、実務的な資金管理の方法についてお話ししてきました。

 

今回は、その管理の仕組みを活用して、実際にどのように資金繰りを

改善していくのか、具体的な方法をお伝えします。

 

資金繰り改善の本質は、入金サイトの短縮と支払いサイトの適正化に

あります。

 

しかし、これは単純な取引条件の変更だけでは実現できません。

取引先との関係性や、自社のビジネスモデルそのものを見直す必要があるのです。

 

まず、入金サイトの改善について考えてみましょう。

 

多くの企業では、得意先ごとの支払条件が長年の商習慣として固定化しています。

「業界の慣習だから」「先方の言い値だから」と、諦めているケースも少なくありません。

 

しかし、実際に分析してみると、意外な事実が見えてきます。

例えば、ある製造業B社では、主要取引先の支払条件を分析した結果、以下のことが判明

しました:

 

・最も取引条件の良い得意先は、実は価格交渉も厳しい

・支払いの遅い得意先は、品質クレームも多い

・現金取引の得意先との取引が最も安定している

 

この分析結果を基に、B社は取引条件の見直しを進めました

。ポイントは、単なる条件変更の要請ではなく、取引全体の見直しです:

 

・早期支払いへの現金割引の導入

・注文から納品までのリードタイム短縮

・品質保証体制の強化

・共同での業務効率化提案

 

その結果、平均回収期間を20日短縮することに成功しました。

 

次に、支払いサイトの適正化です。

 

ここで重要なのは、単なる支払い遅延ではありません。

それは一時的な効果しかなく、むしろ取引関係を悪化させるリスクがあります

。重要なのは、取引先との関係性を維持しながら、双方にとって合理的な条件

を見出すことです。

 

具体的なアプローチとして:

 

  1. 発注の適正化

・必要最小限の在庫量の見直し

・発注単位の最適化

・納期の調整

 

  1. 支払い方法の見直し

・一括支払いから分割支払いへの変更

・電子決済の活用

・相殺取引の拡大

 

  1. 取引先との協力関係強化

・情報共有による効率化

・共同での物流改善

・品質管理コストの低減

 

特に効果的なのは、サプライチェーン全体での最適化視点です。例えば:

 

・発注から納品までのリードタイム短縮

・在庫情報の共有による適正化

・物流コストの削減

・品質管理プロセスの効率化

 

これらの取り組みにより、取引先との関係を維持しながら、資金効率を改善

することが可能になります。

 

また、運転資金の効率化も重要です:

 

  1. 在庫の適正化

・適正在庫量の見直し

・死に筋商品の早期処分

・仕掛品の削減

 

  1. 固定費の見直し

・経費の支払時期の調整

・不要な固定費の削減

・変動費化の検討

 

  1. 設備投資の最適化

・投資の優先順位付け

・リースの活用

・遊休資産の活用

 

これらの改善活動を進める上で重要なのは、数値による管理です。

ただし、ここでいう数値とは会計上の数値ではなく、実際の資金の動きに

基づく数値です:

 

・実質的な回収サイト

・実際の支払いサイト

・在庫回転日数

・運転資金回転期間

 

これらの指標を、実態に即して管理していくことが重要です。

 

最後に強調しておきたいのは、この改善活動は一時的なものではなく、継続

的な取り組みとして定着させる必要があるということです。そのためには:

 

・定期的なモニタリング

・改善活動の見える化

・社内での情報共有

・成功事例の水平展開

 

これらを通じて、持続可能な資金管理の仕組みを構築していく必要があります。

 

資金繰り改善は、単なる財務上の課題ではありません。それは、企業活動全体

の効率化と最適化を促す重要な経営課題なのです。

 

この視点を持って、継続的な改善活動を進めていただければと思います。