資金繰り改善の実践 ~具体的なアクションプラン~
前回までは、実務的な資金管理の方法についてお話ししてきました。
今回は、その管理の仕組みを活用して、実際にどのように資金繰りを
改善していくのか、具体的な方法をお伝えします。
資金繰り改善の本質は、入金サイトの短縮と支払いサイトの適正化に
あります。
しかし、これは単純な取引条件の変更だけでは実現できません。
取引先との関係性や、自社のビジネスモデルそのものを見直す必要があるのです。
まず、入金サイトの改善について考えてみましょう。
多くの企業では、得意先ごとの支払条件が長年の商習慣として固定化しています。
「業界の慣習だから」「先方の言い値だから」と、諦めているケースも少なくありません。
しかし、実際に分析してみると、意外な事実が見えてきます。
例えば、ある製造業B社では、主要取引先の支払条件を分析した結果、以下のことが判明
しました:
・最も取引条件の良い得意先は、実は価格交渉も厳しい
・支払いの遅い得意先は、品質クレームも多い
・現金取引の得意先との取引が最も安定している
この分析結果を基に、B社は取引条件の見直しを進めました
。ポイントは、単なる条件変更の要請ではなく、取引全体の見直しです:
・早期支払いへの現金割引の導入
・注文から納品までのリードタイム短縮
・品質保証体制の強化
・共同での業務効率化提案
その結果、平均回収期間を20日短縮することに成功しました。
次に、支払いサイトの適正化です。
ここで重要なのは、単なる支払い遅延ではありません。
それは一時的な効果しかなく、むしろ取引関係を悪化させるリスクがあります
。重要なのは、取引先との関係性を維持しながら、双方にとって合理的な条件
を見出すことです。
具体的なアプローチとして:
・必要最小限の在庫量の見直し
・発注単位の最適化
・納期の調整
・一括支払いから分割支払いへの変更
・電子決済の活用
・相殺取引の拡大
・情報共有による効率化
・共同での物流改善
・品質管理コストの低減
特に効果的なのは、サプライチェーン全体での最適化視点です。例えば:
・発注から納品までのリードタイム短縮
・在庫情報の共有による適正化
・物流コストの削減
・品質管理プロセスの効率化
これらの取り組みにより、取引先との関係を維持しながら、資金効率を改善
することが可能になります。
また、運転資金の効率化も重要です:
・適正在庫量の見直し
・死に筋商品の早期処分
・仕掛品の削減
・経費の支払時期の調整
・不要な固定費の削減
・変動費化の検討
・投資の優先順位付け
・リースの活用
・遊休資産の活用
これらの改善活動を進める上で重要なのは、数値による管理です。
ただし、ここでいう数値とは会計上の数値ではなく、実際の資金の動きに
基づく数値です:
・実質的な回収サイト
・実際の支払いサイト
・在庫回転日数
・運転資金回転期間
これらの指標を、実態に即して管理していくことが重要です。
最後に強調しておきたいのは、この改善活動は一時的なものではなく、継続
的な取り組みとして定着させる必要があるということです。そのためには:
・定期的なモニタリング
・改善活動の見える化
・社内での情報共有
・成功事例の水平展開
これらを通じて、持続可能な資金管理の仕組みを構築していく必要があります。
資金繰り改善は、単なる財務上の課題ではありません。それは、企業活動全体
の効率化と最適化を促す重要な経営課題なのです。
この視点を持って、継続的な改善活動を進めていただければと思います。