「社長、今月の資金繰り表をお持ちしました」
経理担当から渡される資金繰り表。
しかし、その数字は会計システムから出力された、実態とはかけ離れた数値
かもしれません。
実は、会社を本当の意味で強くするために最も重要なのは、社長自身が資金繰
り表を作成できるようになることなのです。
■なぜ社長が作るべきなのか
税理士や経理担当が作成する資金繰り表には、重大な限界があります。
彼らは会計システムのデータや税務会計の観点から数字を見ています。
しかし、実際の取引の中身や、得意先との関係性、業界の商習慣などを熟知して
いるのは社長しかいません。
例えば、ある得意先からの入金が毎月5日と決まっているのに、実際には10日前後
にずれ込むことを知っているのは社長です。
また、特定の仕入先との支払い条件に柔軟性があることも、社長だからこそ把握
できている情報です。
■本当の資金繰り表とは
社長が作成する資金繰り表に必要なのは、以下の視点です:
– 得意先ごとの実態に即した入金予定
– 過去の支払い傾向の反映
– 商談中の案件の確度
– 仕入先との実質的な支払い条件
– 経費の実際の支払いタイミング
– 交渉可能な支払い時期
– 入金遅延の可能性
– 予期せぬ出費の見込み
– 季節変動の影響
■作成のポイント
重要なのは、複雑な表を作ることではありません。
エクセルで十分です。むしろ、以下の点に注意して作成します:
・実際の取引実態を反映
・過去の経験則を活かす
・直感的に理解できる形式
・更新のしやすさ
■具体的な活用法
社長自身が作成する資金繰り表は、単なる管理ツールではありません。
これは、極めて重要な経営判断のツールとなります:
– 本当に利益の出る案件なのか
– 資金繰りへの影響は許容範囲か
– 支払条件は現実的か
– どの取引先と優先的に交渉すべきか
– どの程度の条件改善が必要か
– 何を交渉材料にできるか
– 時期は適切か
– 規模は適正か
– 回収見込みは現実的か
■実践のステップ
まずは、以下の手順で始めてください:
これだけでも、かなり実態に即した資金繰り表の基礎ができあがります。
■最後に
「経理に任せておけばよい」「税理士が作ってくれる」という考えは、社長として危険です。
会社の血液である資金の流れを、社長自身が把握し、コントロールする。
これこそが、強い会社づくりの第一歩となります。
複雑な会計知識は必要ありません。
必要なのは、実態を正確に把握し、先を読む力です。
それは、まさに社長としての本質的な仕事なのです。
資金繰り表の作成は、決して難しいものではありません。
しかし、これを継続することで、経営判断の精度は格段に向上します。
ぜひ、今日から始めてみてください。
会社の未来は、社長自身が作る資金繰り表から見えてくるはずです。