資金繰り改善の手法 その62 資金繰り表を作成できることが9割

2025.04.24

 

「社長、今月の資金繰り表をお持ちしました」

 

経理担当から渡される資金繰り表。

しかし、その数字は会計システムから出力された、実態とはかけ離れた数値

かもしれません。

 

実は、会社を本当の意味で強くするために最も重要なのは、社長自身が資金繰

り表を作成できるようになることなのです。

 

■なぜ社長が作るべきなのか

 

税理士や経理担当が作成する資金繰り表には、重大な限界があります。

彼らは会計システムのデータや税務会計の観点から数字を見ています。

 

しかし、実際の取引の中身や、得意先との関係性、業界の商習慣などを熟知して

いるのは社長しかいません。

 

例えば、ある得意先からの入金が毎月5日と決まっているのに、実際には10日前後

にずれ込むことを知っているのは社長です。

また、特定の仕入先との支払い条件に柔軟性があることも、社長だからこそ把握

できている情報です。

 

■本当の資金繰り表とは

 

社長が作成する資金繰り表に必要なのは、以下の視点です:

 

  1. 実際の入金時期

– 得意先ごとの実態に即した入金予定

– 過去の支払い傾向の反映

– 商談中の案件の確度

 

  1. 実際の支払い時期

– 仕入先との実質的な支払い条件

– 経費の実際の支払いタイミング

– 交渉可能な支払い時期

 

  1. 現実的な余裕度

– 入金遅延の可能性

– 予期せぬ出費の見込み

– 季節変動の影響

 

■作成のポイント

 

重要なのは、複雑な表を作ることではありません。

エクセルで十分です。むしろ、以下の点に注意して作成します:

 

・実際の取引実態を反映

・過去の経験則を活かす

・直感的に理解できる形式

・更新のしやすさ

 

■具体的な活用法

 

社長自身が作成する資金繰り表は、単なる管理ツールではありません。

これは、極めて重要な経営判断のツールとなります:

 

  1. 新規案件の判断

– 本当に利益の出る案件なのか

– 資金繰りへの影響は許容範囲か

– 支払条件は現実的か

 

  1. 取引条件の交渉

– どの取引先と優先的に交渉すべきか

– どの程度の条件改善が必要か

– 何を交渉材料にできるか

 

  1. 投資判断

– 時期は適切か

– 規模は適正か

– 回収見込みは現実的か

 

■実践のステップ

 

まずは、以下の手順で始めてください:

 

  1. 主要取引先10社程度の実際の入金パターンを把握

 

  1. 固定的な支払い(給与、家賃、借入返済等)の一覧作成

 

  1. 過去3ヶ月の実際の入出金を日次でリストアップ

 

これだけでも、かなり実態に即した資金繰り表の基礎ができあがります。

 

■最後に

 

「経理に任せておけばよい」「税理士が作ってくれる」という考えは、社長として危険です。

会社の血液である資金の流れを、社長自身が把握し、コントロールする。

 

これこそが、強い会社づくりの第一歩となります。

 

複雑な会計知識は必要ありません。

必要なのは、実態を正確に把握し、先を読む力です。

それは、まさに社長としての本質的な仕事なのです。

 

資金繰り表の作成は、決して難しいものではありません。

しかし、これを継続することで、経営判断の精度は格段に向上します。

 

ぜひ、今日から始めてみてください。

 

会社の未来は、社長自身が作る資金繰り表から見えてくるはずです。