事業計画書の本質的価値 第2回経営の真実:数字の向こう側にある本当の力

2025.05.19






経営の真実:数字の向こう側にある本当の力


経営の真実:数字の向こう側にある本当の力


【5回連載】事業計画の本質的価値 – 第2回

さて、前回のは「無計画は間違った計画よりも恐ろしい」というテーマで、アルプス山脈の偵察隊の逸話をお伝えしました。

間違ったピレネー山脈の地図であっても、それがあることで隊員たちは冷静さを取り戻し、無事に帰還できたという物語です。


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今回は、この教訓を「会計と財務」の世界に応用し、とくに「会計が苦手」という悩みを抱える社長さんに向けて、数字の本当の意味と活用法についてお話ししたいと思います。

「売上」「利益」「預金残高」の誤解

多くの社長さんは単純な図式で経営を捉えがちです。

よくある誤解:

  • 売上が上がれば会社が良くなる
  • 利益が増えれば会社が良くなる
  • 預金残高が増えれば儲かっている

この考え方は、一見正しいようで、実は経営の本質を見誤る危険があります。

前回お話ししたアルプス山脈の偵察隊が間違った地図(ピレネー山脈の地図)でも無事に帰還できたように、経営における「数字」の本当の役割も、単なる「正確な指標」ではないのです。

売上や利益といった数字は、「正確な地図」である必要はなく、組織に方向性と冷静さを与える「共有の物語」なのです。

会計の本質:「お金の物語」を読み解く力

会計を難しく感じる理由は、多くの場合、それが「無味乾燥な数字の羅列」として教えられるからです。

しかし、会計の本質は「お金の物語」を読み解くことにあります。

📊 損益計算書

「価値創造の物語」を語っている

💰 貸借対照表

「会社の体力の物語」を語っている

💸 キャッシュフロー計算書

「お金の流れの物語」を語っている

私が他のコンサルタントと違うのは、この「物語」の部分を大切にしていることです。

複雑な財務モデルや高度な分析手法ではなく、シンプルな言葉で「お金の物語」を読み解き、共有することこそが重要だと考えています。

経営の基本:「3つの問い」に答える

経営の基本を知らないという悩みを抱える社長さんには、まず「3つの問い」から始めることをお勧めします:

  1. 存在の問い:私たちは誰に、どんな価値を提供するのか?
  2. 成長の問い:その価値をどうやって広げていくのか?
  3. 持続の問い:その活動をどうやって続けていくのか?

これらの問いに対する答えが、本当の意味での「経営の基本」です。

そして、会計や財務の数字は、これらの問いに答えるための「道具」に過ぎません。道具の使い方を知らなくても、大工の腕が悪いとは限らないのです。

前回の教訓を深める:「数字の真の力」

前回お伝えしたアルプス山脈の偵察隊の逸話を思い出してください。

ピレネー山脈の地図を持った偵察隊が無事に帰還できたのは、なぜでしょうか?

それは、地図があることで:

🗺️ 地図の効果

  • 混乱と恐怖が収まった
  • 全員が同じものを見て議論できた
  • 一つの方向に向かって進む決意ができた

📈 数字の効果

  • 社員全員が同じゴールを見ることができる
  • 日々の判断に一貫性が生まれる
  • 成功と失敗から学ぶサイクルが回り始める

これこそが、数字の真の力なのです。

社長が本当に知るべき「会計の基本」

では、会計が苦手な社長さんが最低限知っておくべき「会計の基本」とは何でしょうか?

それは複雑な会計基準や財務分析手法ではなく、次の3つの感覚です:

  1. 時間感覚:売上・利益・キャッシュの「ずれ」を理解する
    例)売上が立っても、入金はずっと後かもしれない
  2. 関係性感覚:数字同士の「つながり」を理解する
    例)売上が2倍になっても、利益は2倍にならない理由
  3. 健全性感覚:会社の「体力」を直感的に把握する
    例)売上が伸びているのに、なぜキャッシュが減るのか

これらの感覚は、専門知識がなくても、「お金の物語」として理解できるものです。

「間違った計画」から学ぶ財務予測の知恵

前回の「間違った計画でも無計画より優れている」という教訓は、財務計画にも当てはまります。

多くの社長さんは「正確な財務予測ができない」ことに悩みます。しかし、完全に正確でなくても財務計画には価値があるのです。

その価値とは:

  1. 共通言語を生み出す
    「来年度は売上30%増を目指す」という具体的な数字が、抽象的な議論を具体的な行動に変える
  2. 思考の整理を促す
    「増収減益になるのはなぜか」といった問いが、ビジネスモデルの理解を深める
  3. 変化への感度を高める
    「計画と大きく乖離している」という気づきが、早期の軌道修正を可能にする

社長の直感を「数字の言葉」に翻訳する

優れた社長は、直感的に「この商品は売れる」「このサービスに価値がある」と感じます。

しかし、その直感を組織全体で共有するのは難しいものです。

事業計画とは、社長の直感を「数字の言葉」に翻訳し、共有可能にする作業なのです。

それは「正解を導く」ためのものではなく、「共感を生む」ためのものです。

「生きた数字」が生み出す組織の一体感

会計が苦手な社長さんが、実はすでに持っている強みがあります。

それは「人の心がわかる」ということです。

会計や財務の数字を「生きた数字」として扱えば、それは組織の一体感を生み出す強力なツールになります。

  • 売上目標は単なる数字ではなく、「お客様に届けたい価値」の物語
  • コスト削減は単なる節約ではなく、「本当に大切なものを守る」ための選択
  • 投資計画は単なる支出ではなく、「未来への希望」の表現

前回の教訓を発展させる:「共創としての計画」

前回お伝えした「計画は対話のきっかけ」という視点をさらに発展させると、財務計画は「共創の場」として機能します。

特に会計や財務に苦手意識を持つ社長さんこそ、計画策定を「専門家に任せる」のではなく、「チームで共に創る」プロセスとして捉えることで、その真価を発揮できます。

共創のポイント:

  • 専門用語を避け、誰にでもわかる言葉で語る
  • 完璧を求めず、仮説として共有する
  • 定期的に振り返り、学びのサイクルを回す

まとめ:数字を超えた「経営の真髄」

経営の真髄は、会計知識や計画の精緻さにはありません。それは「人の可能性を信じ、共に未来を創る力」です。

会計や財務の数字は、その力を支える道具に過ぎません。

アルプス山脈の偵察隊がピレネー山脈の地図で帰還できたように、完璧ではない計画や数字でも、それを「共有の基盤」として使うことで、組織は大きな力を発揮できるのです。

会計が苦手な社長さん、あなたはすでに社長として最も大切なものを持っています。

それは「人と共に何かを成し遂げたい」という情熱です。

その情熱と、「お金の物語」としての会計知識が結びつくとき、真の経営力が生まれるのです。

【次回予告】「説明できない計画は、計画ではない」

次回は、計画において「説明できる」ということの決定的な重要性についてお伝えします。

スローガンと計画の違い、そして「なぜ」「どのように」「誰が」という要素がなぜ不可欠なのかを解説します。

引き続きアルプス山脈の偵察隊から学ぶ経営の知恵をお届けします。


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