事業計画の本質的価値第4回 ToDo リストでは会社は良くならない

2025.06.02

ToDoリストでは会社は良くならない

〜99.999%の社長が陥る「思考停止の罠」と、0.001%だけが知る「真の計画」の力〜


【5回連載】事業計画の本質的価値 – 第4回


「具体的に何をするんですか?」

この質問に対して、多くの社長が自信満々で「ToDoリスト」を取り出します。しかし、それこそが30年間日本企業を停滞させている根本原因なのです。


🔗 シリーズナビゲーション

📚 事業計画の本質的価値 シリーズ記事一覧
第1回:間違った計画でも無計画より価値がある理由
第2回:経営の真実:数字の向こう側にある本当の力
第3回:説明できない計画は、計画ではない
第4回:ToDoリストでは会社は良くならない ← 今回
第5回:思考なき「頑張り」の限界(近日公開)

シリーズを振り返る:計画の本質への旅路

これまで3回にわたって、事業計画の本質的価値について段階的にお伝えしてきました。

  • 第1回:「間違った計画でも無計画よりマシ」という教訓
  • 第2回:「お金の物語」としての会計の捉え方
  • 第3回:「説明できることの重要性」

そして今回は、多くの経営者が前回のメッセージを受けて陥りがちな、最も危険な誤解について取り上げます。


⚠️ 危険な誤解

「説明できるToDoリストを作れば、それが計画だ」

これは計画ではありません。それは「思考停止したタスクの羅列」に過ぎないのです。


「頑張る社長」の典型的なパターン

多くの社長が、こんなリストを作って満足しています:

  • 「新規顧客を10社開拓する」
  • 「ホームページをリニューアルする」
  • 「新商品を2つ投入する」
  • 「売上を前年比120%にする」

これらは確かに「具体的」で「説明しやすい」でしょう。しかし、これこそが「思考なき頑張り」の典型例なのです。


アルプス偵察隊に学ぶ:「地図」と「やることリスト」の違い

シリーズ第1回から引用しているアルプス山脈の偵察隊の逸話を、新たな視点で考えてみましょう。

彼らを救ったのは「ピレネー山脈の地図」でした。では、もし彼らが「地図」ではなく「やることリスト」だけを持っていたとしたら?

❌ タスクリストの場合

  • □ 北に2km進む
  • □ 小川を渡る
  • □ 東に向かって森を抜ける
  • □ 岩場を登る

結果:おそらく全員が遭難

✅ 地図(全体像)の場合

  • 現在地がわかる
  • 目的地との関係がわかる
  • 周辺の地形がわかる
  • 危険箇所が予測できる

結果:無事帰還

この違いこそが、「ToDoリスト経営」と「真の計画経営」の違いなのです。


なぜ日本の社長は「タスクリスト」に依存するのか?

ここに、日本特有の「思考停止文化」の問題があります。

「とにかく頑張れば何とかなる」
「具体的な行動こそが大事」
「考えてばかりいても仕方がない」

これらの価値観が、社長を「なぜそれをするのか?」という本質的な問いから遠ざけているのです。

この問題については、次回の第5回でさらに深く掘り下げる予定です。


「真の計画」が持つ5つの要素

単なる「タスクリスト」と「真の計画」を区別する要素があります:

  1. 目的と価値:なぜその事業をするのか、どんな価値を提供するのか
  2. 環境認識:市場や競合、技術トレンドをどう捉えているか
  3. 戦略的意図:どのような差別化・優位性を目指すのか
  4. リソース配分:限られた経営資源をどこに集中させるか
  5. 成功の定義:どうなれば成功と言えるのか、その指標は何か

タスクリストは、この全体構造の中の一部分に過ぎません。

この5つの要素については、第2回の「お金の物語」第3回の「説明できる計画」でも触れた内容と密接に関連しています。


📊 実例で見る:「頑張る経営」vs「考える経営」

製造業A社の失敗例(ToDoリスト型経営)

「毎年、『やるべきこと』のリストは完璧に作っていた。新規開拓100件、展示会5回出展、新商品3つ開発…しかし、市場環境が変わると、それらのタスクの半分は無意味になってしまう。それでも『計画だから』と実行し続け、結局、時間とリソースを無駄にしていた。タスクの完了率は95%だったが、売上は前年割れが3年続いた。

サービス業B社の成功例(真の計画型経営)

「詳細なタスクは3ヶ月先までしか決めない。ただし『なぜそれをするのか』『どんな効果を期待するのか』は1年先、3年先まで明確にしている。だから環境が変わっても、『手段』は柔軟に変えつつ、『目的』に向かって進み続けられる。結果として、3年間で売上が2.5倍、利益率も大幅改善した。


💡 社長が本当にすべきこと:「ToDo」から「To Be」へ

99.999%の社長が「何をするか(ToDo)」に囚われる中、0.001%の成功する社長は「どうありたいか(To Be)」に集中します。

社長が真に注力すべき3つの領域:

  1. ビジョンの明確化:「どのような会社になりたいのか」「どんな価値を社会に提供したいのか」
  2. 戦略的優先順位の設定:「限られたリソースをどこに集中させるべきか」
  3. 組織文化の醸成:「どのような判断基準や行動原理を組織に根付かせるか」

これらは「思考する経営者」だけが取り組める領域なのです。

この「思考する経営者」の特徴については、次回の第5回で詳しく解説します。


📌 今日からできること

明日の会議で、この3つの質問をしてみてください:

「これはなぜ必要なのですか?」
「この目標を達成すると、会社はどう変わりますか?」
「他にもっと良い方法はありませんか?」

この3つの質問が、あなたの会社を「頑張る会社」から「考える会社」へと変える最初の一歩になります。


🔜 次回予告:第5回「思考なき頑張りの限界」

今回、「ToDoリスト」では会社が良くならない理由をお伝えしました。しかし、なぜ多くの社長が「考える」ことより「頑張る」ことを選ぶのでしょうか?

次回は、日本の経営文化に根深く潜む「思考なき頑張り」という致命的な価値観について深掘りします。戦後復興を支えた「頑張り精神」が、なぜ現代では企業の足枷になっているのか?そして、真に「考える経営者」になるための具体的な方法とは?

📅 配信予定:6月中旬


まとめ

「社長としての真の決断は、日々のタスクを決めることではなく、会社の在り方を決めることにあります。その決断が、会社の未来を変えるのです。」

第1回のアルプス山脈の偵察隊が教えてくれたように、不確実な環境では「地図」こそが生死を分けます。あなたの会社にとっての「地図」とは何か?それを考え続けることこそが、社長の最も重要な仕事なのです。


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第5回:思考なき「頑張り」の限界 →


合同会社エバーグリーン経営研究所 長瀬好征
「和魂洋才」による収益満開経営で、失われた30年を終わらせ、2200年の日本に繁栄を残す

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