「売上は順調なのに、なぜか手元にお金が残らない…」
「資金繰りが厳しくて夜も眠れない…」
「どの仕事が本当に儲かっているのかわからない…」
そんな悩みを抱える中小企業の社長は多いのではないでしょうか。
実は、多くの会社が見落としているのが「プロジェクト別の資金管理」です。
会社全体の資金繰りは把握していても、個々のプロジェクトや案件ごとの
資金の動きを正確に把握している経営者は意外と少ないのが現実です。
売上全体は順調でも、実はいくつかの赤字プロジェクトが会社の資金を食いつぶ
していたり、見かけは利益が出ているプロジェクトが実は資金を大量に消費して
いたりすることは珍しくありません。
今回は、財務の専門知識がなくても実践できる「プロジェクト別資金管理」の導入
方法を、3つのステップでわかりやすく解説します。
多くの企業では、「会社全体」の資金繰りだけを見ています。
しかし、会社全体の数字だけでは、以下のような重要な情報が見えてきません:
1. どのプロジェクトが資金を生み出し、どのプロジェクトが資金を消費しているのか
2. 資金回収サイクルの長いプロジェクトと短いプロジェクトはどれか
3. 見かけの利益率と資金効率は一致しているのか
たとえば、売上高1億円、利益2,000万円の会社でも:
という内訳だった場合、利益率の低い案件Bが資金を大量に消費し、資金繰りを
圧迫している可能性があります。
利益額だけを見れば案件Aの方が圧倒的に良いように見えますが、資金効率という
観点では全く違った評価になるのです。
今すぐできること:あなたの会社の主要プロジェクト3つについて、売上・利益・資金回収期間を書き出してみましょう。
単に利益率が高いだけでなく、資金回収が早いプロジェクトを特定できます。
これにより、限られたリソースを最も効率的なプロジェクトに集中投下できるようになります。
個々のプロジェクトの入出金パターンを把握することで、全社の資金繰り予測の精度が高まり
ます。
「来月は資金が厳しくなりそう」という勘に頼った経営から、データに基づいた経営に変わる
ことができます。
新規案件の見積もり時に、利益だけでなく資金効率も考慮した価格設定や条件交渉ができます。
「この条件では資金的に厳しいので、前受金をお願いします」といった具体的な交渉ができる
ようになります。
難しく考える必要はありません。まずは以下の3ステップで始めましょう。
過去6ヶ月〜1年の主要なプロジェクトや案件を5〜10個ピックアップします。
業種によっては「顧客別」「工事別」「製品ライン別」など、適切な区分で考えましょう。
選定のポイント:
各プロジェクトについて、以下の情報をエクセルなどにまとめます:
1. 基本情報
2. 資金投入情報
3. 資金回収情報
各プロジェクトの資金効率を次の3つの指標で評価します:
1. 最大資金投入額 プロジェクト期間中に最も資金がマイナスになるポイントの金額
2. 資金回収期間 最初の資金投入から全額回収までの期間
この指数が高いほど、資金効率の良いプロジェクトと言えます。
今すぐできること:1つのプロジェクトだけでも、上記3つの指標を計算してみましょう。
意外な発見があるはずです。
製造業B社(従業員30名)がプロジェクト別資金管理を導入した結果をご紹介します。
プロジェクト1:大手メーカーX社向け特注部品
プロジェクト2:中小企業Y社向け定期納品
プロジェクト3:海外Z社向け輸出案件
この分析により、B社は以下のような気づきを得ました:
B社では以下の改善策を実行しました:
結果:6ヶ月後には資金繰りが大幅に改善し、新規設備投資も可能になりました。
プロジェクト別資金管理を始める際に直面しやすい課題と、その対応策をご紹介します。
対応策:
対応策:
対応策:
「難しそう」「手間がかかりそう」と思われるかもしれませんが、最初は以下のような
簡易的な方法から始めることができます。
以下のような簡単なエクセル表で十分に効果が得られます:
列項目の例:
新規プロジェクトの受注時に、以下の項目をチェックする習慣をつけましょう:
チェック項目例:
プロジェクトを資金効率で分類し、カラーコードで管理する方法も効果的です:
進行中のプロジェクト一覧をこの色分けで管理すれば、一目で会社全体の資金状況が把握できます。
プロジェクト別の資金管理は、一見すると「余計な手間」と思われがちですが、
多くの中小企業にとって資金繰り改善の大きな武器となります。
特に重要なのは、「会計上の利益」と「資金効率」は必ずしも一致しないという事実です。
利益率の高いプロジェクトが資金効率では最悪ということも少なくありません。
まずは簡単なエクセル表から始めて、自社のプロジェクトの「資金効率」を可視化してみましょう。
その小さな一歩が、資金繰り改善の大きな一歩となるはずです。
「今日から始められる、明日が変わる。」
あなたの会社の資金繰り改善は、プロジェクト別資金管理から始まります。