これは30社以上の事業計画作成を支援してきた中で、最も多く聞かれる社長の悩みです。
実は、この現象には明確な財務的理由があります。多くの経営者が知らない「お金の流れの真実」
「売上が上がっているのにお金が増えない」という現象は、多くの中小企業経営者が直面する
深刻な問題です。
しかし、この現象は決して不思議なことではありません。
本記事では、この謎を解く鍵となる重要な概念と、古典の叡智に学ぶ資金管理の本質について
詳しく解説します。
読み終える頃には、売上とキャッシュフローの違いを明確に理解し、資金繰り改善への具体的
な道筋が見えてくるでしょう。
コンサルティングで最も多く相談される「お金の問題」があります。以下のような状況に
心当たりはありませんか?
もしこれらの状況に一つでも当てはまるなら、あなたは決して珍しいケースではありません。
実際、急成長している企業ほどこの現象に悩まされる傾向があります。
なぜなら、売上の増加と手元資金の増加は全く別のメカニズムだからです。
「売上 = お金が手に入る」
この考え方は財務の観点から明確に間違いです!
多くの経営者が「売上が上がれば資金繰りは楽になる」と考えていますが、現実は正反対
のケースも多々あります。以下の具体例で、その理由を見てみましょう。
売上計上と入金のタイミングのズレが、資金繰り悪化の主要因となっています。
このように、売上計上と入金のタイミングのズレが、資金繰り悪化の主要因となります。
これが理解できると、なぜ黒字企業でも倒産が起こるのかという疑問も解決できるでしょう。
売上とお金の流れの違いを理解するために、
まず「お金が出ていくタイミング」と「お金が入ってくるタイミング」を整理してみましょう。
📤 お金が出ていくタイミング
|
📥 お金が入ってくるタイミング
出ていくタイミングの方が早い! |
この「出ていくのが早く、入ってくるのが遅い」という構造こそが、売上増加なのにお金が
増えない根本原因なのです。
この現象を正確に理解するために、一つ重要な概念をご紹介します。
それが「運転資金」という考え方です。
「あなたがサービスや商品を売って、お客様がお金を支払うまでの間に、あなたが
立て替えて支払っているお金の総額」
つまり、事業活動を継続するために常に必要な「立替金」のようなものです。
この金額が増えれば増えるほど、手元の現金は減少します。
売上が増加すると、この「立替金」も同時に増加するため、手元資金が減少するのです。
現代の資金繰り問題は、実は江戸時代から指摘されてきた経営の本質でもあります。
備中松山藩の山田方谷(やまだほうこく)の名言:
「入りを量りて出を制す」
これは『礼記』に由来する言葉で、「収入の実態を正確に把握し、それに応じて支出をコント
ロールする」という意味です。
山田方谷は、この原則に基づいて備中松山藩の財政を劇的に改善しました。
彼の改革は単なる質素倹約ではなく、産業奨励、計画的な借り入れ交渉、そして人事の断行
を伴う総合的な財務改革だったのです。
現代の経営においても、この「入りを量りて出を制す」の原則は極めて重要です。
売上(入り)の実態を正確に把握し、それに基づいて適切な支出管理を行うことが、健全な
資金繰りの基盤となります。
お金の流れの真実を理解したところで、具体的な管理方法を見ていきましょう。
これらの金額と前月からの変化を毎月確認し、運転資金の増減をモニタリングすることが重要です。
A. 一般的には月商の1-2倍程度が目安とされていますが、業種によって大きく異なります。
製造業は在庫が多いため高くなりがちで、サービス業は比較的低くなります。
重要なのは金額よりも「増減の傾向」を把握することです。
A. まず原因を特定します。売掛金増加が原因なら回収強化、在庫増加が原因なら販売促進
や仕入調整、買掛金減少が原因なら支払条件の見直しを検討します。
A. むしろ小規模企業ほど有効です。資金繰りの余裕が少ない中小企業こそ、運転資金の管理
により大きな効果を期待できます。
売上が上がってもお金が増えないのは、財務の理屈から言えば「ごく当たり前」のことです。
重要なのは、この現象に悩むのではなく、お金の流れの仕組みを理解し、適切に管理することです。
古典の叡智「入りを量りて出を制す」を現代に活かし、売上の実態を正確に把握した上で、戦略的な資金管理を行いましょう。
週3回配信で経営に役立つ情報をお届けしています。財務初心者の社長でも分かりやすく実践的な内容です。
✅ 月・水曜日:経営のヒントや最新情報
✅ 土曜日:今週のまとめ(YouTube・ブログ更新情報)