会社法を社長が軽視する5つの理由【経営者必読の法的リスク対策】

2025.07.10

会社法を社長が軽視する5つの理由【経営者必読の法的リスク対策】

🚨 経営者必見:知らないでは済まされない法的責任

なぜ多くの社長が会社法を軽視してしまうのでしょうか?

コンサル現場で30社以上の経営者と接してきた経験から、会社法への無関心が引き起こす

役員個人の賠償責任、刑事罰、株主とのトラブル、資金調達やM&A頓挫、事業承継困難など、

経営に致命的なリスクを解説します。

🎯 この記事で分かること

会社法を軽視する社長の5つの共通パターンと、知らぬ間に直面する具体的な危険性を徹底解説。

この記事を読めば、会社法に関する最低限の知識と、これらのリスクを回避するための実践的な対

策が分かり、貴社の経営を盤石なものにできます

 

1. 会社法 社長が軽視する5つの背景

1.1 日常業務の優先順位と会社法の位置づけ

多くの社長は、日々の事業運営において、売上向上、顧客獲得、資金繰り、人材育成といった

「攻めの経営」に直結する課題を最優先事項として捉えています。

これらの業務は、企業の存続と成長に直接的に影響するため、必然的に社長の限られた時間と

エネルギーの大部分が割かれることになります。

 

一方で、会社法に関する知識の習得や遵守は、「守りの経営」と位置づけられがちです。

法的リスクの回避やコンプライアンスの強化は重要であるものの、目先の利益や緊急の課題と

比較すると、その優先順位は低くなりがちです。

特に、緊急性の低いと感じられる定款の見直しや株主総会の形式的な運営などは、後回しに

される傾向が顕著です。

 

優先される日常業務(攻めの経営) 後回しにされがちな会社法関連業務(守りの経営)
売上向上、顧客獲得、新規事業開発 定款の見直し、株主総会の適正な運営、役員変更登記
資金繰り、融資交渉 資本金変更登記、内部統制システムの構築
人材採用・育成、労務管理 会社法改正への対応、法令遵守体制の構築
製品・サービス改善、品質管理 株主との関係性構築、情報開示義務の履行

1.2 専門用語の多さと学習へのハードル

会社法の条文は、一般の経営者にとって非常に難解な専門用語で構成されています。

「機関設計」「自己株式」「剰余金の配当」「計算書類の開示」といった法律特有の表現は、日常

業務で使われる言葉とはかけ離れており、その意味を正確に理解するには専門的な知識と時間が

必要です。

 

このような専門性の高さは、社長会社法を独学で習得する上での大きな障壁となります。

法務関連の書籍を読んでも内容が頭に入りにくく、セミナーに参加するにも時間的・金銭的な

コストがかかります。

結果として、「専門家である弁護士や司法書士に任せておけば大丈夫」という意識が生まれやすく、

自ら積極的に学習するモチベーションが湧きにくい状況にあります。

 

1.3 「うちは中小企業だから」という誤解

会社法は大企業のための法律であり、うちのような中小企業には関係ない」という誤解は、多く

社長に見られます。

しかし、これは明確な誤りです。株式会社として設立された企業である限り、その規模や従業員数

に関わらず、会社法の規定は等しく適用されます。

 

例えば、取締役の忠実義務や善管注意義務、株主総会の招集・運営、計算書類の作成・開示といった

基本的な規定は、上場企業であろうと家族経営の零細企業であろうと、全ての株式会社に課せられる

義務です。こ

れらの義務を怠れば、規模の大小にかかわらず、法的責任を問われる可能性があります。

 

この誤解が、会社法への意識の低さにつながり、結果として予期せぬトラブルやリスクを招く原因と

なるのです。

 

1.4 専門家依存による主体性の欠如

多くの社長は、会社法に関する事項を顧問弁護士や司法書士に完全に依存してしまう傾向があります。

「プロに任せておけば安心」という考えは一見合理的ですが、会社法 社長として経営者自身が基本的

な知識を持たないことで、適切な判断ができない状況を生み出しています。

 

専門家への相談タイミングを逸したり、費用を惜しんで重要な手続きを先送りしたりするケースが

後を絶ちません。ま

た、専門家からの助言の重要性を理解できず、会社法違反につながる経営判断を下してしまう社長

少なくありません。

 

1.5 短期的思考による長期リスクの軽視

社長の多くは、四半期や年度単位での業績向上に意識が集中し、会社法遵守のような長期的なリスク

管理を軽視しがちです。

「今すぐ問題にならなければ大丈夫」という短期的思考が、将来的な重大なリスクを見落とす原因

となっています。

 

しかし、会社法違反のリスクは、M&Aや事業承継、上場準備といった企業の重要な局面で一気に

顕在化します。

その時になって慌てて対処しようとしても、時間と費用の大幅な増加は避けられません。

会社法 社長として、今から準備しておくことが不可欠です。

 

2. 会社法 社長が知らないことの具体的な危険性

2.1 知らないでは済まされない法的責任と罰則

2.1.1 会社法違反による役員個人の賠償責任

会社法は、取締役や監査役といった役員に対して、会社に対する善管注意義務や忠実義務を課しています。これらの義務に違反し、会社に損害を与えた場合、任務懈怠責任(会社法第423条)として、役員個人が会社に対して損害賠償責任を負うことになります。会社法 社長として、不適切な投資、違法な利益供与、取締役会決議を経ずに重要な財産を処分したなどが該当します。また、悪意または重大な過失により第三者に損害を与えた場合には、第三者に対する損害賠償責任(会社法第429条)も発生し、その賠償額は会社の規模によっては莫大なものとなる可能性があります。

具体的には、以下のような行為が賠償責任につながる可能性があります

  • 法令や定款に違反する行為を認識しながら放置した。
  • 著しく不合理な取引を承認・実行した。
  • 競業避止義務や利益相反取引規制に違反した。
  • 株主総会や取締役会の手続きを怠り、その結果会社に損害が生じた。

2.1.2 刑事罰や行政処分につながるケース

会社法には、特定の違反行為に対して刑事罰が定められています。

社長が会社法を軽視していると、意図せずともこれらの罰則の対象となる危険性があります。

特に重要なのは、特別背任罪(会社法第960条)です。

これは、取締役などが自己または第三者の利益を図り、会社に損害を与える目的で任務に背く

行為をした場合に適用され、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方

科される可能性があります。

また、計算書類や事業報告に虚偽の記載をした場合(会社法第976条)なども罰則の対象となりま

す。

 

違反行為の類型 関連条文(会社法) 具体的な行為例 主な罰則 社長への影響
特別背任罪 第960条 会社の資金を私的に流用、不当な取引で会社に損害を与える 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、または併科 逮捕、起訴、有罪判決、実刑の可能性
虚偽記載等 第976条 計算書類、事業報告、有価証券報告書等への虚偽記載 5年以下の懲役または500万円以下の罰金、または併科 信用失墜、上場企業では上場廃止リスク
株主総会等の議事録不作成等 第976条 議事録の不作成、虚偽記載、閲覧拒否 100万円以下の過料 法的紛争のリスク増大、ガバナンス不全
違法配当 第963条 分配可能額を超過した配当の実施 5年以下の懲役または500万円以下の罰金、または併科 会社への損害賠償責任、株主からの追及

さらに、会社法違反が他の法律(例えば金融商品取引法、独占禁止法など)にも抵触する場合、より重い

行政処分や罰則が科されることもあります。

これらの法的リスクは、社長個人の人生だけでなく、会社の存続をも脅かす可能性があります。

 

2.2 会社経営における致命的なリスク

2.2.1 株主とのトラブル発生とその危険性

会社法は、株主の権利を保護するための多くの規定を設けています。

社長がこれらの規定を理解していないと、株主との間で深刻なトラブルに発展する危険性があります。

例えば、株主総会の招集通知の不備、議事録の作成・保管の怠り、不適切な議事運営などは、株主

総会決議の取り消し訴訟につながる可能性があります。

 

また、少数株主であっても、会計帳簿閲覧請求権や代表訴訟提起権といった強力な権利を有しています。

会社法に則った適切な情報開示や経営がなされていないと、これらの権利行使を通じて経営陣の責任が

追及され、会社の運営が停滞したり、多大な訴訟費用や時間的コストが発生したりする事態に陥りかね

ません。

特に、M&Aや事業承継の際には、株主間の意見の相違や権利行使が、取引の頓挫や紛争の原因となること

が少なくありません。

 

2.2.2 資金調達やM&Aでの頓挫

新たな資金調達やM&A(合併・買収)を検討する際、投資家や金融機関、買収側企業は、対象企業の

デューデリジェンス(DD)を徹底的に行います。

このプロセスで、過去の会社法違反、ガバナンス体制の不備、不適切な会計処理などが発覚すると、

深刻な問題となります。

例えば、過去の株主総会議事録の不備や、取締役会の決議が適切に行われていなかった事実が判明すれば、

会社の法的リスクが高いと判断され、資金調達やM&A交渉が頓挫する可能性が極めて高まります。

 

投資家は、法的リスクを抱える企業への投資をためらうため、増資計画が失敗したり、金融機関からの

融資が受けられなくなったりすることもあります。

M&Aにおいては、買収価格の減額交渉につながったり、最悪の場合、交渉自体が白紙に戻ることもあり

ます。こ

れは、企業の成長機会を奪い、事業戦略に大きな影響を及ぼす致命的な事態と言えるでしょう。

2.2.3 事業承継が困難になる事態

事業承継は、会社の将来を左右する重要な経営課題ですが、会社法の知識不足がこれを極めて困難に

することがあります。

特に、株式の適切な移転や、後継者への役員権限の委譲、定款変更の手続きなど、会社法上の手続き

を怠ると、承継プロセスが滞る原因となります。

 

例えば、創業者保有の株式が適切に承継されず、複数の相続人の間で分散してしまったり、種類株式

の活用や黄金株(拒否権付種類株式)の導入など、経営権を安定させるための会社法上の仕組み

知らないために、承継後に経営が不安定になるケースがあります。

また、役員の選任・解任手続きの不備は、後継者の正当な経営権限を危うくし、社内外からの信頼を

失うことにもつながりかねません。

適切な事業承継計画には、会社法に基づく綿密な準備が不可欠です。

2.3 企業イメージの失墜と信用の低下

会社法違反が明るみに出た場合、その影響は法的責任や経営リスクに留まりません。

企業のイメージは大きく損なわれ、社会的な信用が著しく低下します。

メディアによる報道や、インターネット上での情報拡散は、一度失墜した信用を取り戻すことを非常に

困難にします。

 

信用低下は、具体的に以下のような悪影響を及ぼします

  • 取引先からの信頼喪失: 契約の見直しや取引停止につながり、売上の減少や事業縮小を余儀なくされる。
  • 顧客からの支持低下: 不買運動やブランドイメージの悪化により、顧客離れが加速する。
  • 従業員の士気低下と離職: 会社の不祥事は従業員のモチベーションを著しく低下させ、優秀な人材の流出を招く。
  • 採用活動への悪影響: 新卒・中途採用において、応募者数が激減し、人材確保が困難になる。
  • 金融機関からの評価悪化: 新規融資が困難になったり、既存融資の条件が厳しくなったりする。

これらの影響は、短期的な売上減少だけでなく、企業の持続的な成長を阻害し、最悪の場合、倒産

至る可能性すらあります。会

社法を遵守することは、単なる義務ではなく、企業のブランド価値と持続可能性を守るための不可欠

な経営戦略と言えるでしょう。

 

3. 最低限これだけは知っておくべき会社法の基礎知識

会社法は、会社の設立から運営、解散に至るまで、企業活動のあらゆる側面を規定する法律です。

社長がその全条文を暗記する必要はありませんが、経営判断に直結する基本的なルールを知らないことは、

重大なリスクにつながります。

ここでは、最低限押さえておくべき会社法の基礎知識について解説します。

3.1 定款の重要性と変更時の注意点

定款は、会社の基本的なルールを定めた「会社の憲法」とも言える重要な書類です。

会社設立時に作成され、会社の商号、目的、本店所在地、発行可能株式総数、役員の任期など、会社の

根幹に関わる事項が記載されています。

 

記載事項の種類 概要 記載がない場合 変更時の決議
絶対的記載事項 会社設立に必須の事項。記載がないと定款自体が無効になります。(例:商号、目的、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額、発行可能株式総数など) 定款が無効 株主総会の特別決議
相対的記載事項 定款に記載しないと、その事項に関する効力が発生しない事項。(例:株式の譲渡制限規定、取締役会設置会社の定め、監査役設置会社の定めなど) 効力なし 株主総会の特別決議
任意的記載事項 会社法に違反しない範囲で、自由に定められる事項。(例:事業年度、役員の報酬、株主総会の招集時期など) 記載の有無は任意 原則として株主総会の特別決議(内容による)

 

定款の内容を変更する際には、原則として株主総会の特別決議が必要となります。

これは、株主の権利や会社の根幹に関わる重要な変更であるため、厳格な手続きが求められるためです。

また、商号や目的、本店所在地、資本金、発行可能株式総数など、登記されている事項に変更が生じた場合

は、変更登記が必要になります。

これを怠ると、過料の対象となる可能性があります。

定款の規定に反する行為は、その行為の無効や、場合によっては役員の責任追及につながる可能性がある

ため、常に内容を把握し、適切に運用することが重要です。

 

3.2 株主総会と取締役会の適切な運営

会社法では、会社の意思決定と業務執行を適切に行うために、株主総会と取締役会(設置会社の場合)

という機関を定めています。それぞれの役割と適切な運営方法を理解することは、会社の健全な経営に

不可欠です。

3.2.1 株主総会の役割と運営

株主総会は、会社の最高意思決定機関であり、会社の基本的な方針や重要事項を決定します。

主な決議事項には、役員の選任・解任、定款の変更、合併・会社分割などの組織再編、計算書類の承認

などがあります。

適切な運営のためには、以下の点に注意が必要です

  • 招集手続きの適法性: 株主総会開催日の2週間前(公開会社でない場合は1週間前)までに、株主に対して招集通知を発送するなど、会社法で定められた手続きを遵守する必要があります。
  • 決議要件の遵守: 決議には、普通決議、特別決議、特殊決議など、事項によって異なる要件があります。特に、定款変更や役員解任など重要な事項は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議が求められます。
  • 議事録の作成と保管: 株主総会の議事については、議事録を作成し、本店に10年間、支店に5年間備え置く義務があります。議事録は、決議の証拠となるだけでなく、登記申請の添付書類としても必要です。

これらの手続きに不備があると、決議の無効を訴えられたり、役員が会社に対する損害賠償責任を負う

可能性が生じます。

3.2.2 取締役会の役割と運営

取締役会は、会社の業務執行の決定を行い、取締役の職務執行を監督する機関です。

取締役会設置会社において、会社の重要な業務執行の決定は取締役会が行い、個々の取締役の業務執行

を監督します。

適切な運営のためには、以下の点に注意が必要です

  • 招集手続きの適法性: 原則として、各取締役に対し、会日の一週間前までに招集通知を発送する必要があります。
  • 決議要件の遵守: 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行われます。特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができません。
  • 議事録の作成と保管: 株主総会と同様に、取締役会の議事についても議事録を作成し、本店に10年間備え置く義務があります。

取締役会が適切に機能しない場合、会社の業務執行に重大な支障が生じたり、取締役の職務執行に

対する監督が不十分となり、不祥事や法令違反のリスクが高まります。

 

3.3 役員変更登記や資本金変更登記の義務

会社法は、会社の重要な情報に変更があった場合に、その内容を法務局に登記することを義務付けています。

これは、会社の取引の安全を確保し、第三者が会社の状況を正確に把握できるようにするためです。

特に、役員変更登記資本金変更登記は、社長が意識すべき重要な義務です。

 

会社法第915条第1項により、登記すべき事項に変更が生じた場合は、原則として変更日から2週間以内

にその登記を申請しなければなりません。

 

登記の種類 変更内容の例 登記義務発生のタイミング 申請期限 登記懈怠のリスク
役員変更登記
  • 役員の就任、退任、辞任、重任(任期満了による再任)
  • 役員の氏名変更、住所変更
変更の効力発生日 変更日から2週間以内
  • 過料(罰金)の対象
  • 会社の信用失墜
  • 取引上の不利益
資本金変更登記
  • 増資(新株発行、準備金の資本組入れなど)
  • 減資(資本金の減少)
効力発生日 変更日から2週間以内
  • 過料(罰金)の対象
  • 金融機関からの信頼低下
  • 許認可の要件不適合
その他重要な登記
  • 本店移転登記
  • 商号変更登記
  • 目的変更登記
変更の効力発生日 変更日から2週間以内
  • 過料(罰金)の対象
  • 取引上の混乱

 

これらの登記を怠ると、会社法第976条に基づき、100万円以下の過料に処される可能性があります。

これは罰金とは異なり刑事罰ではありませんが、裁判所が判断する行政罰です。

また、登記情報が現状と乖離していると、金融機関からの融資審査や、M&Aの際の企業価値評価に

悪影響を及ぼすなど、会社の信用を著しく損なうことになります。

司法書士や弁護士などの専門家と連携し、定期的に登記情報を確認し、適切な時期に変更登記を行う

ことが重要です。

 

3.4 会社法が求める内部統制の考え方

会社法は、会社の規模や特性に応じて、内部統制システムの構築を求めています。

内部統制とは、会社の業務が適正かつ効率的に行われるよう、組織内部に整備される一連の仕組みや

プロセスのことです。その目的は、法令遵守、資産の保全、財務報告の信頼性確保、業務の効率性向上

などにあります。

 

特に、会社法第362条第5項では、大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)の取締役会

に対し、内部統制システムを構築する義務を課しています。

具体的には、以下の体制を整備することが求められます。

 

大会社に求められる内部統制体制

  • 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
  • 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  • 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • 監査役会設置会社においては、監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項、その使用人の取締役からの独立性に関する事項、監査役への報告に関する体制、その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

 

中小企業においては、大会社のような厳格な内部統制システムの構築義務はありません。

しかし、規模に関わらず、法令違反や不祥事を未然に防ぎ、企業の持続的な成長を実現するためには、

規模に応じた内部統制の考え方を取り入れることが不可欠です。

例えば、経費精算のルール、情報セキュリティ対策、契約書の管理体制、ハラスメント防止策などは、

規模の大小に関わらず取り組むべき内部統制の要素です。

 

内部統制が不十分な場合、不正会計、情報漏洩、従業員による横領といった不祥事が発生しやすく

なります。

これらは企業の信用を失墜させ、事業継続そのものを困難にする可能性があります。

社長は、自社の規模や事業内容に応じた内部統制の重要性を認識し、リスク管理とコンプライアンス

意識した組織体制を構築するよう努めるべきです。

 

4. 会社法の危険を回避するための実践的対策

社長が会社法に関する知識不足に起因するリスクを回避し、持続可能な企業経営を実現するためには、

単に知識を習得するだけでなく、実践的な対策を講じることが不可欠です。

ここでは、具体的な行動として取り組むべき施策を解説します。

4.1 法務部門の設置または担当者の育成

会社法は多岐にわたるため、社長一人がすべてを把握し続けるのは現実的ではありません。

継続的な法務リスク管理のためには、組織としての対応が求められます。

大企業では法務部門が独立して存在しますが、中小企業においては、法務専任の部署を設けることが

難しい場合も少なくありません。

そのような場合は、既存の部署内に法務担当者を置く、あるいは特定の社員を法務担当者として育成

することが有効です。

担当者は、契約書のレビュー、社内規程の整備、株主総会や取締役会の議事録作成、登記関連業務の

管理など、日常的な法務業務を担います。また、外部の専門家との連携窓口としての役割も期待されます。

法務担当者の育成は、企業内の法的リテラシーを高め、初期段階でのリスク発見・対応を可能にする

重要な投資と言えるでしょう。

 

4.2 顧問弁護士や司法書士との連携強化

自社内での対応には限界があるため、外部の専門家との連携は必須です。

特に、会社法に関する専門的な判断や、複雑な手続きが必要な場面では、その知見が大きく役立ちます。

顧問弁護士は、会社法全般にわたる法的アドバイス、契約書作成・レビュー、紛争解決、M&Aにおける

法務デューデリジェンスなど、広範なサポートを提供します。

一方、司法書士は、会社の設立登記、役員変更登記、本店移転登記、増資・減資登記など、会社法に

基づく各種登記手続きの専門家です。

 

専門家 主な役割(会社法関連) 得意分野
弁護士 法的アドバイス全般、契約書作成・レビュー、紛争解決、M&A法務、コンプライアンス体制構築 法的紛争対応、複雑な契約交渉、企業法務全般
司法書士 会社設立登記、役員変更登記、資本金変更登記、本店移転登記など各種登記手続き 登記手続き、商業登記、不動産登記

 

両者の役割を理解し、適切に連携することで、法的リスクを最小限に抑えることができます。

特に、顧問契約を結ぶことで、緊急時の迅速な対応や、継続的な法務相談が可能となり、費用対効果

の面でもメリットが大きいと言えます。

 

4.3 定期的な法務研修と情報収集

会社法は改正されることも多く、過去の知識が常に通用するとは限りません。

最新の法改正や判例動向を把握し、社内の意識を常にアップデートしていくことが、コンプライアンス

経営の基盤となります。

 

社長自身はもちろんのこと、役員、管理職、そして法務担当者に対して、定期的な法務研修を実施する

ことが重要です。

研修では、会社法の基礎知識に加え、最近の法改正のポイント、企業が陥りやすい法的トラブルの事例、

内部統制の重要性などをテーマとすると良いでしょう。

 

情報収集の方法としては、専門家が開催するセミナーへの参加、法務関連のニュースレター購読、

専門誌や書籍の活用、法務省や関連省庁のウェブサイトでの情報確認などが挙げられます。

能動的に情報を取得し、自社の業務に落とし込む姿勢が求められます。

4.4 会社法改正へのアンテナと対応

会社法は、社会経済情勢の変化に対応するため、定期的に改正が行われます。こ

れらの改正は、企業の経営戦略や日々の業務に大きな影響を与える可能性があります。

例えば、役員報酬の開示義務の拡大、株主総会運営の見直し、M&Aに関する規制の変更など、

改正内容は多岐にわたります。

改正の動向に常にアンテナを張り、自社にどのような影響があるのかを早期に分析し、必要な対

応を講じることが、法的リスクを未然に防ぐ上で極めて重要です。

 

具体的には、改正法が施行される前に、定款の変更、社内規程の改定、株主総会の招集通知や

議事録作成方法の見直し、役員や従業員への周知徹底などを行う必要があります。

改正法への対応を怠ると、予期せぬ法的責任を問われたり、事業機会を逸したりする危険性がある

ため、専門家と連携しながら計画的に準備を進めるべきです。

 

5. まとめ

🎯 会社法への適切な理解と対応が企業の未来を守る

本記事では、社長が会社法を軽視しがちな背景と、それが引き起こす深刻な危険性を解説しました。

会社法は、規模に関わらず企業経営の根幹であり、その無知は法的責任、事業の頓挫、企業イメージ

の失墜といった重大なリスクに直結します。

 

これらの危険を回避し、持続的な企業運営を実現するためには、経営者自身が会社法の基礎を学び、

顧問弁護士や司法書士といった専門家との連携を強化することが不可欠です。

会社法への適切な理解と対応こそが、企業の未来を守る盾となるでしょう。

 

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合同会社エバーグリーン経営研究所 長瀬好征
「和魂洋才」による収益満開経営で、失われた30年を終わらせ、2200年の日本に繁栄を残す

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