試算表と通帳が一致しない理由を完全解説

2025.12.08




試算表と通帳が一致しない理由を完全解説

30社の実績から解明した「2つのバケツ理論」
📅 更新日:2025年12月8日

「税理士先生の試算表では黒字なのに、なぜ通帳残高が減っているのか?」この矛盾に悩む社長は、決して少なくありません。実際、30社以上の財務改善を支援してきた経験から、この問題を理解していない社長は99%に達すると断言できます。

さらに深刻なのは、売上が前年比150%に成長した会社が、運転資金不足で倒産寸前まで追い込まれたケースも実在することです。「売上が伸びているから大丈夫」という思い込みが、突然の資金ショートを招くのです。

東京商工リサーチのデータによれば、2024年の倒産件数は1万件を超え、その中には「黒字倒産」も多数含まれています。つまり、会計上は利益が出ているのに、現金がなくて倒産する会社が後を絶たないのです。

財務を軸とした経営コンサルタントとして30社以上の資金繰り改善を支援してきた経験から、この問題の本質は「2つのバケツの違いを理解していない」ことにあると確信しています。

古典の叡智である山田方谷の「入りを量りて出を制す」という教えと、「収益満開経営」の視点で、この構造的問題を完全解明します。

この記事を読むことで、あなたは以下を習得できます:

  • 試算表と通帳残高が一致しない本質的理由
  • 「会計のバケツ」と「現金のバケツ」の決定的な違い
  • 売掛金・在庫・減価償却による3つのズレのメカニズム
  • 社長が本当に見るべき数字の見分け方
  • 資金繰り悪化を未然に防ぐ具体的アクション

多くの社長が気づかないうちに資金繰り悪化に陥る今、この知識は会社を守るための必須スキルです。

2つのバケツが存在する理由

多くの社長は、この重要な事実を知りません。実は、会社には2種類のバケツがあるのです。

ほとんどの社長は、この2つを混同しています。いえ、そもそも2つあることすら知らないかもしれません。しかし、この2つの違いを理解しない限り、資金繰りの苦しさから抜け出すことは不可能です。

30社以上の財務改善支援を通じて確信したのは、「試算表と通帳が一致しない」という悩みの99%は、この「2つのバケツの違い」を理解していないことが原因だということです。

💡 近江商人の叡智との共通点

近江商人は300年前から「日々損益を明らかにしないでは寝につかぬ」という習慣を持っていました。これは、毎日「現金のバケツ」を確認していたということです。彼らは本能的に、会計(帳簿)と現金(実際の商売)は別物だと理解していたのです。

それでは、この2つのバケツについて、詳しく見ていきましょう。

会計のバケツ:税金計算用

これは、税理士先生が毎月作ってくれている試算表や、決算書に記載されている数字のことです。

📊

発生主義

契約・納品時に計上

🏛️

税金計算用

公平な課税のため

👥

利用者

税理士・税務署・銀行

基準:「契約した時」「納品した時」

売上は、実際にお金が入る前から計上されます。在庫は、売れていなくても「資産」として計上されます。

これは公平性のためです。国としては、すべての会社に同じルールで税金を計算してもらう必要があります。「うちはお金が入ってないから、まだ売上じゃない」と各社が勝手に言い出したら、税務署は困ってしまいます。

だから、明確な基準が必要なのです。

目的:公平に税金を計算すること

会計のバケツは、税理士先生の仕事の成果物です。税務署が見たいのも、この数字です。銀行が融資審査で見るのも、基本的にはこの数字です。

つまり、外部の人たち(税務署・銀行)のための数字なのです。

致命的な弱点

しかし、この「会計のバケツ」には、致命的な弱点があります。

実際のお金の動きとは、まったく無関係だということです。

これが、試算表と通帳が一致しない根本原因です。

現金のバケツ:経営判断用

もう一つのバケツ。それが、社長が本当に見なければいけない「現金のバケツ」です。

💰

現金主義

入金・支払時に認識

🛡️

経営判断用

会社を潰さないため

👨‍💼

利用者

社長・あなただけ

基準:「実際に入金された時」「実際に支払った時」

会計のバケツとは違い、現金のバケツは正直です。入金されるまで、水は入りません。支払った瞬間に、水が出ていきます。

目的:会社を潰さないこと

どんなに黒字でも、現金がなければ会社は倒産します。給料も払えません。仕入れ代金も払えません。

だから、この「現金のバケツ」こそが、社長が毎日見るべき、本当に大切な数字なのです。

誰が管理するのか?

ここが重要です。

税理士は、基本的にこの数字を作りません(作る義務がありません)。税務署も興味がありません。銀行も、最初はあまり見ません。

つまり、この数字を管理する責任は、100%、社長であるあなたにあるのです。

これが、山田方谷の「入りを量りて出を制す」という教えの現代的実践です。入り(現状の現金)を正確に把握し、出(支出)をコントロールする。これこそが財政健全化の本質なのです。

ズレが生まれる3つの場面

それでは、具体的に「どこで」この2つのバケツがズレるのか。3つの典型的な場面を見ていきましょう。

場面1:売掛金のズレ

4月1日、あなたは500万円の商品を納品しました。

会計のバケツの動き

4月1日: 売上500万円を計上

→「水が500リットル入った!」

税理士先生の作る試算表には、「4月の売上:500万円」と記録されます。

しかし、取引条件は「翌々月末払い」。つまり、実際の入金は6月30日です。

現金のバケツの動き

4月1日: 何も起きない(水ゼロ)

5月1日: まだ何も起きない(水ゼロ)

6月30日: やっと500万円入金(水が入った!)

この間、3ヶ月です。

問題は、この3ヶ月の間に、会社は動き続けているということです。

  • 従業員の給料:毎月25日に支払い
  • 家賃:毎月末に支払い
  • 仕入れ代金:毎月10日に支払い

すべて「現金のバケツ」から出ていきます。

会計のバケツでは「黒字」なのに、現金のバケツの水がどんどん減っていく…

これが、売掛金によるズレの正体です。

そして、恐ろしいことに、売上を伸ばせば伸ばすほど、このズレは拡大します。これを「運転資金の増加」と呼びます。

場面2:在庫のズレ

次は、在庫です。3月に、100万円分の商品を仕入れました。

現金のバケツの動き

3月15日: 仕入代金100万円を支払い

→「水が100リットル出た!」

通帳から、確実に100万円が消えます。

一方、会計のバケツでは…

会計のバケツの動き

3月15日: 在庫100万円を計上

→「資産が100万円増えた」

→ 経費ではない(まだ売れてないから)

利益は減らない

つまり、会計上は「お金を使った」ことになっていません。「形を変えただけ」という扱いです。

現金100万円 → 商品100万円(資産が移動しただけ)

しかし、もしこの商品が売れなかったら?

現金のバケツ: 100万円の水は、永遠に戻ってこない

会計のバケツ: 資産100万円(変わらず。決算で評価損を計上するまで、利益は減らない)

会計のバケツでは「資産」として輝いているのに、現金のバケツでは「底に沈んだヘドロ」になっている。

これが、在庫によるズレの怖さです。

場面3:減価償却のゆがみ

最後に、少し複雑ですが重要な話を。1000万円の機械を購入したとします。

現金のバケツの動き

購入時: 1000万円が一気に出ていく

→「水が1000リットル、ドバッと出た!」

これは明確です。通帳から1000万円が消えます。

しかし、会計のバケツでは…

会計のバケツの動き

購入時: 固定資産1000万円を計上 → まだ経費じゃない

その後5年間、毎年:

→ 減価償却費200万円を計上

これが経費になる

つまり、こういうことです:

購入した年

現金のバケツ:
1000万円減った

会計のバケツ:
200万円の経費(減価償却費)

2年目以降

現金のバケツ:
何も出ていかない

会計のバケツ:
200万円の経費(減価償却費)

この逆転現象が、社長を混乱させます。

「会計上は赤字なのに、なぜか手元に現金がある…これって大丈夫?」

大丈夫です。それは、初年度に既に現金が出ているからです。

逆に危険なのは、こう思ってしまうことです:「会計上は黒字だから、お金もあるはずだ」

実際には、減価償却以外の支出で現金が消えているかもしれないのに。

社長が見るべきバケツの選び方

ここまでの話で、お分かりいただけたでしょうか。

今まで、多くの社長は…

  • 税理士からの試算表(会計のバケツ)だけを見ていた
  • 「黒字だから大丈夫」と安心していた
  • 気づいたら、通帳残高が減っていた

✅ これからの正しい見方

1. 会計のバケツは「税金計算用」として尊重する

これは税理士先生の専門分野です。税金を正確に計算するために必要な数字です。

2. でも、それとは別に「現金のバケツ」を毎日チェックする

資金繰り表、キャッシュフロー計算書、そして通帳残高。これらが「現金のバケツ」です。

3. 本当に大事なのは「今日使える現金がいくらか?」

経営判断をする時に見るべきは、常に「現金のバケツ」なのです。

💡 西林克彦教授の研究との関連

西林克彦教授の研究によれば、人は「わかったつもり」になりやすい生き物です。試算表を見て「黒字だから大丈夫」と思い込むのは、まさにこの「わかったつもり」の典型例です。真の理解とは、「会計のバケツと現金のバケツは別物」という構造を把握することなのです。

今日から実践できる4つのステップ

では、具体的に何をすればいいのか。今日からできるアクションを4つお伝えします。

ステップ1:直近の試算表を用意してください

税理士先生からもらった、最新の試算表を手元に準備します。

ステップ2:「売掛金」の前月比を確認

  • 売掛金が増えている → 氷が増えている
  • 売上が伸びているのに現金が増えない原因の一つ
  • 売掛金回収サイトが長すぎないか確認する

ステップ3:「在庫」の前月比を確認

  • 在庫が増えている → ヘドロが溜まっている
  • 現金が回収できていない証拠
  • 不良在庫がないか、在庫回転率を計算する

ステップ4:通帳残高と比較してみる

試算表の「利益」と、実際の通帳残高の増減を比べてみてください。

これだけで、会計のバケツと現金のバケツの差を、体感できます。

これらは、まずは「2つのバケツが違う」ことを、体感するためのステップです。この4つのステップを毎月続けることで、あなたの財務感覚が確実に育っていきます。

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💡 体系的学習ガイド:まず本記事で「2つのバケツ」の概念を理解し、次に「経常運転資金で劇的に変わる!」で具体的な数字管理を学び、最後に「キャッシュフロー悪化の隠れた原因」で総合的な財務管理能力を身につけてください。

合同会社エバーグリーン経営研究所

財務コンサルタント 長瀬好征

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