ニッキン1月15日号に、「横浜銀行がこの8カ月で82億5千万の資本性劣後ローン実行した。ノウハウが豊富な日本政策金融公庫と協調して対応する動きもでている」という記事がありました。
まず、資本性劣後ローンがどういうモノが分からない方もおられるとは思います。
説明の仕方は様々あるでしょうが、このニッキンの記事にある説明がコンパクトで分かりやすいのでそれを使って説明します。
資本性劣後ローンとは、銀行が「一時的に大幅な赤字や債務超過に陥った先でも、将来の回復が見込める」場合に、その会社を支援するために「倒産時において返済順位が劣後するリスクを金融機関が負う」貸出です。
資本性劣後ローンについて、これ以上詳細な説明は別の機会にでもしますね。
さて、横浜銀行は82億5千万円実行したとありますが、件数は?というと、2020年12月末までに19件とあります。
とすれば、1件あたり、約4.3億円になります。
多いと感じるかどうか人によって異なると思いますが、財務コンサルティングをしている立場からはそんなに驚くほど多い訳ではないと思います。
なぜなら、年商25億円ぐらいの会社に対してでも月商の2か月分ほどでしかありませんから。
さて、多いかどうかを議論する以前に、この資本性劣後ローンを横浜銀行が新設した際の大矢頭取の発言がポイントになります。
どういうものかというと、
「地域経済にとって特に重要なお客様を支える」
です。
つまり、今横浜銀行からお金は借りているけど、資本性劣後ローンの提案を受けていない又は受けるような動きがないという会社は、横浜銀行からみて、「地域経済にとって特に重要な」会社でもないし、「将来の回復が見込める」ような会社ではないということになりますね。
冒頭に書いた通り、資本性劣後ローンは貸し出しをする銀行がリスクを負うものです。
だから、簡単には出せない融資ではあるのですが、裏を返すと、リスクを負う貸出をして、その融資先が優良企業へと回復すれば、将来銀行にとって貴重なビジネスチャンスになるということです。
つまり、資本性劣後ローンを出すことによって将来の融資先を確保していくことになるのです。
コロナ禍において、健全性を保っている優良企業は間違いなく減っていきます、銀行は生き残りをかけて、リスクを負って資本性劣後ローンを出しているのです。
ということは、リスクを負わない保証協会付き融資しかできない銀行は当然淘汰されていくしかないのです。
このことが中小零細企業にどのような影響を与えるのでしょうか?
分かりますよね。
中小零細企業は、銀行を選ぶ選択肢が減るのです。
具体的にいうと、これまでA、B、C、Dの4つの銀行から融資を受けられる可能性があったのに、BとDが合併等によってなくなったため、AとCの2つの銀行からしか融資を受けられる可能性がなくなるということです。
そうでなくても、地方に行けばいくほど銀行の数はあまりありません。
国は政策として地方銀行の再編を推進していますが、実はこのことは日本においては、中小零細企業にも大きな影響を与えるものなのです。
あなたの会社は、取引がある銀行から資本性劣後ローンを提案されるような会社でしょうか?