資金繰りを改善する手法 その8クレジットラインの設定
2024.05.09
中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
8 クレジットラインの設定
資金繰りを改善する手段の1つとして、クレジットラインの設定があります。
クレジットラインというコトバを聞いたこと無いかもしれませんので、用語の説明をします。
クレジットラインとは、銀行などの金融機関から一定の限度額の範囲内で融資を受けられる仕
組みのことです。
この仕組みを利用することで、企業は必要に応じて資金を機動的に調達することができます。
まずは関連する用語の説明から始めましょう。
- 限度額: 金融機関から借り入れることができる最大の融資金額のこと。
- 実行金額: 実際に借り入れた金額のこと。実行金額は限度額以内でなければなりません。
- 融資期間: 融資を受けることができる期間のこと。通常1年など一定期間が設定されます。
クレジットラインを設定するメリットは以下のようなものがあります。
【メリット】
- 機動的な資金調達が可能 クレジットラインでは、必要な時にすぐに融資を受けられるため、 急な出費にも対応できます。例えば、仕入代金の支払い、給与の前借り、事故や災害への対応など、 予期せぬ資金ニーズが生じた場合にスピーディーに資金を調達することができます。
- 金利の有利さ クレジットラインの金利は通常の借入れよりも低く設定されているケースが多く、 支払利息を抑えられます。これは、金融機関側も与信リスクが低いと判断しているためです。
- 事務手続きの簡素化 クレジットラインの設定時に与信審査が行われるため、実際に融資を受ける 際の審査が不要か、或いは簡素化されています。このため、スピーディーな資金調達が可能となります。
- 資金繰りの安定化 クレジットラインがあれば、いざというときの資金の捻出先が確保でき、資金繰 りに余裕を持たせることができます。
【デメリット】
- 手数料の発生 クレジットラインの設定やその後の利用に際して、金融機関に対し各種手数料を支払う 必要があります。この手数料が資金調達コストを高くする要因となります。
- 財務体質への影響
クレジットラインの限度額が高額になると、潜在的な借入金依存度が高くなり、財務体質が悪化するリスクがあります。
- 資金使途の制限 クレジットラインは主に運転資金への対応を目的としているため、設備投資などの長期の 資金使途には向いていない場合があります。
- 精神的ゆとり いつでも資金が調達できるという心理的な裏付けがあると、過剰な投資や無駄な支出を助長 しかねません。
つまり、クレジットラインは機動的な資金調達が可能になる半面、手数料の発生や財務健全性への影響など、
デメリットも存在します。企業はメリット・デメリットを勘案し、適切な限度額の設定と運用が求められます。
ただ、中小零細企業が銀行にお願いすれば設定できるわけではなく、計画性と財務の健全性が必要になります。
つまり、資金繰りを改善するためには、社長が財務の知識を使えることが必要なのです。