資金繰りを改善する手法 その9コミットメントラインの設定

2024.05.10

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中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。

現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、

資金繰りを改善する手法を伝えていきます。

 

9 コミットメントラインの設定

コミットメントラインについても聞いたことが無いと思いますので、用語の説明

からします。

 

■用語説明

・コミットメントライン あらかじめ金融機関と融資限度額を決めておき、企業から実行

を求められれば、金融機関は約束した限度額までなら拒否できない融資枠のこと。

・コミットメント料 コミットメントラインを設定する際に金融機関に支払う手数料。

・アベナンツ(財務制限条項) 金融機関が融資の条件として課す、一定の財務数値などを維持することを定めた条項。

 

コミットメントラインのメリットとして、以下のような点が資金繰り改善につながります。

  1. 確実な資金調達力の確保 コミットメントラインは金融機関に法的拘束力があるため、                    一定の条件さえ満たせば確実に融資が受けられます。このため、必要な資金を機動的                      かつ確実に調達することができます。
  2. 資金計画の立案がしやすい 確実に融資が受けられることから、企業は中長期的な資金計                    画を立てやすくなります。緊急時の資金対応力が高まるため、計画的な資金運用が可能になります。
  3. 与信力の向上 コミットメントラインの設定自体が企業の信用力の裏付けとなるため、                      金融機関からの与信判断で有利に働く可能性があります。

一方で、コミットメントラインにはデメリットもあります。設定手続きが煩雑で費用も高額となる

こと、財務制限条項への抵触リスクなどが挙げられます。

  1. 高額な手数料 コミットメント料が高額となり、資金調達コストが嵩みます。
  2. 財務制限条項への抵触リスク
    コベナンツに抵触した場合、期限の利益を失う可能性があります。
  3. 与信審査が厳しい 設定時に企業の財務状況などについて厳しい審査を受ける必要があります。
  4. 調達できる資金使途が限定的 主に運転資金確保が目的のため、設備投資資金としては向いていないことがあります。

 

コミットメントラインは確実な資金調達力を持つ反面、高額な手数料などの高コストがかかることがデメリットです。

企業は資金ニーズや財務状況に合わせて、メリット・デメリットを十分に見極める必要があります。

 

因みに、クレジットラインはその8で説明したコミットメントラインとは異なる仕組みです。

 

クレジットラインは、あくまでも金融機関側に与信残高の範囲内で融資する義務はないという点で、金融機関は

融資を拒否することができます。つまり、金融機関側に法的拘束力はありません。

 

一方、コミットメントラインは、あらかじめ決められた条件の範囲内であれば、金融機関側は融資を拒否できない

契約となっています。

企業は確実に融資が受けられるため、より安心して資金計画を立てることができます。

 

具体的な違いは以下の通りです。

【クレジットライン】

  • 金融機関側に法的拘束力はない
  • 融資するかどうかは金融機関の裁量
  • 設定する際の手続きが比較的簡単

【コミットメントライン】

  • 金融機関側に法的拘束力がある
  • 一定の条件が満たされれば金融機関は融資を拒否できない
  • 設定には借入企業の財務状況などの厳しい審査がある
  • 手数料が高くつく

 

つまり、コミットメントラインは、融資の確実性は高いものの手数料が高くつく代わりに、

クレジットラインは融資が受けられるかどうか不確実性はあるものの、低コストで設定できる

という違いがあります。

企業はそのニーズに合わせて判断する必要があります。

 

したがって、コミットメントラインは確実な資金調達手段として有効ですが、その実行可能性や

費用対効果を十分に検討した上で、クレジットラインなどの他の手段と組み合わせて総合的に

資金繰りを改善することが賢明だと言えます。

どちらにしても、社長の計画性と財務の知識が不可欠です。

 

About Post Author

NAGASE YOSHIYUKI

財務コンサルタント。 ビジョン「1000年繁栄し続ける企業への変容するようサポートする」 ミッション「ご縁をいただいた会社、社長、従業員の成長、発展、成功、繁栄への道を共に歩む社外の一番のパートナー」
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