中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
13 余剰資産の売却
余剰資産とは、企業が本来の事業活動に不要な、つまり余剰となっている資産のことを指します。
具体的には以下のようなものが該当します。
【固定資産の例】
- 遊休地や遊休設備
- 社宅や社員寮など賃貸に出していない不動産
- 事業の撤退に伴い不要になった建物や設備
- 将来の用途が見込めない投資不動産
【流動資産の例】
- 滞留在庫や過剰在庫
- 回収が見込めない売掛金
- 運用目的がなくなった有価証券
- 事業との関連性が薄い投資有価証券
これらの余剰資産は、企業にとって保有コストがかかる一方で、十分に活用されていない”眠り資産”
とみなされます。
そのため、資金繰り改善のために処分を検討する対象となるのです。
余剰資産を適切に売却・処分することで、現金化による資金繰り改善と保有コスト削減の二つの効果
が期待できます。
資金繰り改善のために余剰資産を売却する場合、
原則として流動資産を優先して売却することが一般的に推奨されます。その理由は以下の通りです。
【流動資産を優先する理由】
- 換金性が高い 流動資産は現金化が比較的容易で、すぐに資金を調達できます。
- 事業運営への影響が小さい
棚卸資産や売掛金の処分は、事業活動自体に大きな支障を与えません。
- 固定資産売却に伴うリスクが回避できる 固定資産売却には事業縮小の印象や従業員士気の 低下などのリスクが伴います。
一方で、固定資産売却も状況次第では選択肢になり得ます。 例えば、遊休地や不要な設備など、
事業に直接関係ない余剰固定資産があれば、優先的に売却を検討するメリットがあります。
したがって、資金繰り改善のための売却対象は、まず流動資産を中心に検討し、次に不要な固定
資産の売却可能性を探ることが一般的な手順となります。
余剰資産の売却は、メリットとデメリットがあるので、それらを理解することが重要です。
【メリット】
- 現金化できる 余剰資産を売却することで、現金が手元に入ります。この現金を運転資金 や借入金の返済に充てることができ、資金繰りが改善されます。
- 保有コストが減少 不要な資産を手放すことで、維持・管理費用などの保有コストを節約できます。
- 経営資源の再配分が可能 売却資金を有効活用の高い事業に振り向けることで、経営資源を最適化できます。
【デメリット】
- 将来的な収益機会の喪失 売却した資産が将来的に価値を持つようになった場合、収益を得る機会を失ってしまいます。
- 売却価格の問題 希望する価格で売却できない可能性があり、想定外の損失が発生するリスクがあります。
- 従業員や取引先への影響 事業の一部売却の場合、従業員の雇用や取引関係に影響が出る可能性があります。
つまり、一時的な資金繰り改善が期待できる一方で、将来的な収益源を失うリスクもあります。
余剰資産の売却は慎重に検討し、長期的な経営戦略に沿った判断が必要不可欠です。
ただし、最終的には経営者の判断により、経営戦略やその時々の資金ニーズなどを総合的に勘案して、売却対象と順序を決める必要があります。
ただし、事業運営への影響などを慎重に検討する必要があります。
つまり、資産の切り売りにならないためには計画性のある資産売却が重要です。