資金繰り改善の手法 その14プロジェクト選別と重点化

2024.05.15

中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。

現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、

資金繰りを改善する手法を伝えていきます。

 

14 プロジェクト選別と重点化

会社は様々なプロジェクトに経営資源(人材、資金、設備など)を投入しています。

しかし、資源には限りがあるため、どのプロジェクトに資源を重点投入するかを選別し、

重点化することが重要になります。

これが「プロジェクトの選別と重点化」です。

 

この手法を実施するためには、PPM(プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント)という

フレームワークを活用します。PPMでは次の手順で進めます。

  1. 全プロジェクトの洗い出し まず企業内の全プロジェクトを棚卸しし、一覧化します。
  2. プロジェクト評価の基準設定 次に、プロジェクトを評価する基準を設定します。                      例えば、「収益性」「リスク水準」「戦略的な重要度」などです。
  3. プロジェクトの評価と選別 設定した基準に基づき、各プロジェクトを評価・ランク付けします。               この評価を経営陣が確認し、有望なプロジェクトを選別します。
  4. 資源の重点配分 選別されたプロジェクトに対して、人材や資金などの経営資源を重点的に投入               することになります。
  5. モニタリングと見直し プロジェクトの進捗を常にモニタリングし、必要に応じて資源配分を                見直します。

このプロセスを経ることで、限られた経営資源を有望なプロジェクトに集中投下でき、資金繰りが

改善されるとともに、企業全体の収益性や成長性が高まることが期待できます。

 

一方で、有望案件の見落としや、環境変化への機動性の低下などのデメリットもあり、そのバランス

を取ることが大切です。

目的を改めて「資金繰り改善」と設定すれば、PPMが最適なフレームワークと言えます。

フレームワークには他にSWOT分析やファイブフォース分析などがありまが、

SWOT分析

  • 内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)の観点から全体像を把握できる
  • 単一のプロジェクトよりも、企業全体や事業部門単位での活用に適している                     PPM(プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント)
  • 個々のプロジェクトを評価し、優先順位付けを行うための体系的な手法
  • プロジェクトの選別と資源配分の最適化に特化している
  • プロジェクト間の関係性も考慮できる                                         ファイブフォース分析
  • プロジェクトの事業環境についての競争力分析に適している
  • 競合の脅威、新規参入リスク、代替品の影響など外部環境に焦点

このように、それぞれ長所と適用領域が異なります。

資金繰り改善の手法としての個々のプロジェクトを選別する場合は、PPMが最も適切でしょう。

PPMでは、プロジェクトの価値、リスク、実行可能性などの評価軸を設定し、体系的に優先順位付けできます。

 

そして、検討する前に次のような準備が必要となります。

  1. プロジェクトの洗い出しと詳細把握 まず全てのプロジェクトを洗い出し、                         それぞれの詳細(目的、計画、必要資源、リスク、期待収益など)を精査す                         る必要があります。選別の際の判断材料を整備するためです。
  2. 選別基準の設定 次に、どのような観点からプロジェクトを選別するのか、                         その基準を経営戦略や状況に基づいて設定します。例えば、収益性、成長性、                       リスク水準、コア事業との親和性などが基準になり得ます。
  3. 評価プロセスの構築 プロジェクトをどのように評価し、優先順位をつけるのか、                      そのプロセスを決める必要があります。関係者で検討を重ね、公平性と客観性を確保                    した仕組みを作ります。
  4. 関係者との合意形成 選別と重点化は大きな経営判断です。経営層のみならず、現場                    の関係者の理解と合意を得ることが不可欠です。十分なコミュニケーションを通じて                   全社的な合意を形成する必要があります。
  5. 継続的なモニタリング体制の確立 選別後も環境変化に合わせて随時プロジェクトの見                     直しが求められます。モニタリングの仕組みを設けて、機動的な対応ができる体制を整                  備しましょう。

 

その上で、プロジェクトの選別と重点化を行うことで、資金繰り改善にはつながりますが、

メリットだけではなく、デメリットも当然あります。

【メリット】

  1. 経営資源の集中 限られた経営資源(人材、資金、時間など)を有望で収益性の高いプロジェクト               に集中投入できます。これにより資源の無駄を防ぎ、効率的な事業運営が可能になります。
  2. リスク分散 有望なプロジェクトに経営資源を重点化することで、リスクを分散できます。                  さまざまなプロジェクトにリソースを分散すると、いずれかが失敗した際の影響が大きくなります。
  3. 業績向上 選別された有望プロジェクトに経営資源を集中投下することで、プロジェクト自体の成功             確率が高まります。これにより企業全体の業績向上が期待できます。
  4. 意思決定の明確化 プロジェクトの選別と重点化を行うことで、経営陣の意思決定が明確になります。             優先順位が明らかになり、全社員が同じ目標に向かって進めるようになります。

【デメリット】

  1. 選別ミスのリスク 選別の過程で有望なプロジェクトを見逃してしまう可能性があります。潜在的な             成長機会を逃す恐れがあります。
  2. 柔軟性の欠如 選別されたプロジェクトに経営資源を集中すると、環境変化への対応が遅れがちにな             ります。新たな機会を素早く取り込めなくなるリスクがあります。
  3. 従業員のモチベーション低下 選別によって自分のプロジェクトが中止になった従業員のモチベーシ             ョンが低下する可能性があります。
  4. 選別コストの増加 プロジェクトを適切に選別するためには、綿密な分析とリソースが必要です。               選別作業自体にコストがかかります。

このように「プロジェクト選別と重点化」には長所と短所がありますが、適切に実施すれば資金繰り改善

に有効な手段となります。経営環境に合わせて、メリット・デメリットを総合的に検討することが重要です。

 

つまり、ただ形式的な分析に終始し、本質的な課題解決につながらないので、計画性のある検討が必要になります。