中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
20サブスクリプションモデル
サブスクリプションモデルとは、製品やサービスを一括で購入するのではなく、月額や
年額などの定期的な課金を設けて提供する仕組みです。
従来の製品販売では、製品を売り切ってしまうと次の収入があるまで待たなければならず、
収入が不規則になりがちです。
一方、サブスクリプションモデルでは、顧客に継続して料金を支払ってもらえるため、
安定した継続的な収入を確保できます。
例えば、従来はワープロソフトを製品として一括で購入していましたが、サブスクリプショ
ンモデルだとOffice365のように月額課金で常に最新版が使えるようになります。
メリットは以下のようなものがあります。
そして、サブスクリプションモデルが売れやすい理由の1つとして、1回あたりの支払い金額が
低いため、心理的な抵抗感が下がるという点が挙げられます。
具体的には以下のような理由があります。
こういった理由から、サブスクリプションモデルでは心理的抵抗が下がり、比較的簡単に顧客を獲得
しやすくなるわけです。
もちろん、デメリットもあります。
1 価格設定が難しい
製品とサービスの特性に合わせて、サブスクリプションモデルの導入を検討することが重要です。
2 入金管理が難しい
入金管理ですが、従来の一括払いとは異なり、サブスクリプションでは多数の顧客から少額ずつ
継続的に入金があります。こうした入金を正確に管理し、漏れがないようにすることが重要にな
ります。
特に自動更新の失敗や支払い情報の変更などがあると、入金トラブルが発生しがちです。
入金管理システムを構築し、きちんと入金状況を監視する必要があります。
3 継続管理の難しい
サブスクリプションでは顧客が簡単に解約できてしまうため、顧客の継続率を高めることが収益を
左右します。退会してしまう顧客を出来るだけ減らす工夫が必須です。
たとえば、サービスの質を高く保つこと、新規コンテンツを継続的に提供すること、キャンペーン
を打つことなどで、顧客にとってのサービス価値を維持し続けることが大切になります。
加えて、解約手続きが面倒にならないよう、解約ルートを適切に設計する必要もあります。
このように、サブスクリプションモデルでは、安定収益を得るために、入金と継続の徹底的な管理が
求められます。
システム導入や業務プロセスの構築など、適切な準備が不可欠といえます。
そして、一番デメリットは、実は資金繰りが苦しくなるということです。
サブスクリプションモデルでは一括での前払いがないため、事業の立ち上げ期や初期段階では、資金繰り
が逼迫しやすくなる可能性があります。
従来の製品販売モデルでは、製品を販売して入金を一括でもらえるので、立ち上げ時の運転資金を確保し
やすかったのですが、サブスクリプションモデルではその入金がなくなります。
代わりに、顧客から少しずつ継続的に入金が発生しますが、初期投資に見合う収益が出るまでには時間が
かかります。
このため、サブスクリプションモデルに移行する際には、以下のような対策が必要となります。
サブスクリプションの長期的な安定収入メリットは大きいですが、切り替え期の資金繰り難には十分な注意
が必要になります。事業の立ち上げ期から運転資金を確保する戦略が重要です。
つまり、単に「売れるから」といった理由だけでなく、十分な計画性と準備が必要不可欠です。
サブスクリプションモデルには、確かに心理的抵抗が少なく顧客獲得がしやすいというメリットがあります。
しかし、一方で以前説明したように、立ち上げ期の資金繰りリスクや、入金/継続管理の難しさなど、新たな
課題も生じます。
そのため、サブスクリプションモデルを導入する際には、以下のような点を十分に検討し、計画を立てる必要
があります。
要するに、サブスクリプションモデル自体の特性を深く理解し、それに合わせた事業計画と準備を整えることが
不可欠なのです。
適切な計画なくサブスクリプション化しただけでは、かえってリスクが高くなる可能性があります。
導入メリットとデメリットを冷静に検討し、事業に合ったモデル設計を行うことが肝心です。