資金繰り改善の手法 その21 ビジネスモデルの見直し

2024.05.22

中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。

現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、

資金繰りを改善する手法を伝えていきます。

 

21 ビジネスモデルの見直し

ビジネスモデルの見直しは資金繰りの改善に役立つ重要な手段の一つです。

ビジネスモデルとは、お客様にどのような価値を提供し、それと引き換えにどのように

収益を得るかという、会社における根本的な事業の仕組みのことを指します。

 

多くの会社は、お金が先に出てしまうや継続的に安定的に稼げないといったビジネスモ

デルによる資金繰り改善を必要としています。

 

具体的には、資金繰りに課題がある場合、原因として以下のようなビジネスモデル上の

問題が考えられます。

  1. 提供する製品・サービスの価値が顧客に十分伝わっていない
  2. コスト構造が非効率で収益が出にくい
  3. 収入源が限定的で多角化できていない

 

こうした問題点を洗い出し、ビジネスモデルを見直すことで、以下のような改善が期待できます。

  • 顧客の本当のニーズに合わせて価値提案を再構築し、売上げを伸ばす
  • 無駄なコストを削減したり外注化したりして収益性を高める
  • 新しい収入源を作ることで収入の多角化を図る

 

つまり、事業の根本に立ち返り、お客様価値の最大化と、コスト・収入構造の最適化を行うことで、

キャッシュフローを改善し、資金繰りを良くしていくわけです。

 

まず、ビジネスモデルの見直しはプロジェクトの選別と重点化とは違います。

ビジネスモデルの見直しは、事業全体の価値提案やコスト構造、収益モデル等の根本的な部分を再構

築することを指します。

つまり、企業が提供する価値そのものと、それを実現するための仕組みを抜本的に見直すことになります。

 

一方、プロジェクトの選別・重点化は、すでに進行中の個別のプロジェクトや事業の優先順位づけを行うこ

とを意味します。

限られた経営資源を最も重要で収益性の高いプロジェクトに集中投下することで、効率的な資金運用を図るも

のです。

 

つまり、ビジネスモデル見直しは「何をどのように提供するか」という事業の根幹に関わるのに対し、

プロジェクト選別は「優先して行うものは何か」を判断する話になります。

 

ただし、実際の経営課題に対処する際は、両者は密接に関連しています。

まずはビジネスモデルを抜本的に見直し、新たな価値提案を構築します。

その上で、その実現に向けて、優先的に推進すべきプロジェクトを選別・重点化していくという手順

になるでしょう。

 

また、ビジネスモデルの見直しと不採算部門からの撤退も異なります。

 

ビジネスモデルの見直しとは、企業全体の事業の根幹にかかわる価値提案、収益モデル、コスト構造など

を再構築することを指します。

つまり、「何を」「どのように」提供するかという、ビジネスの本質的な部分を抜本的に見直すプロセスに

なります。

 

一方、不採算部門からの撤退は、すでに存在する特定の事業分野や製品ラインなどから手を引くことを意

味します。

収益性が低く、将来的にも改善が見込めない領域から経営資源を引き上げ、有望な分野に集中投資すること

が目的です。

 

つまり、ビジネスモデルの見直しは事業全体の在り方を問い直すのに対し、不採算部門の撤退は既存の一部

分野から手を引くという、対象が異なります。

 

ただし、実際の経営判断では両者は関連することが多いでしょう。 ビジネスモデル見直しの結果、従来の方

向性から大きく舵を切ることになれば、それに伴い一部不採算部門から撤退せざるを得なくなる場合があります。

 

逆に、一部不採算部門を切り離した上で、残された中核事業のビジネスモデルを抜本的に再構築するという方向

性も考えられます。

 

このように、両者は経営の意思決定プロセスにおいて、別々の概念ではあるものの、連動して行われることが多く、

戦略的に組み合わせて実行していくことが重要になります。

 

つまり、ビジネスモデルの見直しは、慎重に計画を立てて実施しないと、かえって企業に多大な損害を与えかねま

せん。

思い付きで無計画に行うのは極めて危険です。

 

適切なビジネスモデル見直しを行うためには、以下のようなステップが必要不可欠です。

  1. 現状の徹底分析 現在の事業環境、顧客ニーズ、自社の強み弱みなどを客観的にデータに基づいて分析すること
  2. 戦略的課題の特定 分析結果から、現行のビジネスモデルの問題点や改善が必要な領域を特定すること
  3. 将来ビジョンの設計 自社が目指すべき新たな価値提案や収益モデルなどの将来ビジョンを明確にすること
  4. 具体的施策の立案 ビジョン実現に向けた具体的な施策(新規事業、業務プロセス改革など)を詳細に立案すること
  5. 影響の事前検証 新モデルへの移行がもたらす業績、組織、人員などへの影響を事前に検証すること
  6. 段階的な実行計画 リスクを最小化しながら、新モデルへスムーズに移行できるよう段階的な実行計画を策定すること

 

このようなプロセスを経て、初めて実行可能で持続可能な新ビジネスモデルが構築できます。

単なる思いつきでは、戦略の遂行は困難です。

 

計画性とデータに基づく丁寧な検討が不可欠なのです。

ビジネスモデル見直しは、経営の根幹に関わる重大な意思決定ですから、慎重に取り組む必要があります。