中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
引き続き資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
23 ベンチャーキャピタルからの資金調達
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、資金繰り改善の手法として考えることが出来ます。
ベンチャーキャピタル(以下、「VC」)とは、新規ビジネスに対して投資を行う投資会社のこと
を指します。
日本には、以下のような種類のベンチャーキャピタル(VC)が存在しています。
そして、VCは有望な事業アイディアや技術を持つ企業に出資することで、事業の成長を支援し、
将来的に高い利益を得ることを目指しています。
具体的なプロセスは以下の通りです。
起業家側のメリットは、実績のない新規事業でも優れた事業プランがあれば資金調達できる点にあります。
一方デメリットは、VCによる経営への関与や、将来的に株式公開や事業売却による高いリターンが求めら
れる点です。
VCの投資を受けるには、独自の技術やビジネスモデル、成長性のある市場など、投資に値する魅力的な事業
アイデアが必要不可欠です。
事業プランの作成からVCとのネゴシエーションまでが重要なプロセスとなります。
しかし、日本の中小企業がベンチャーキャピタルから資金調達することは難しい現実があります。
主な理由は以下のようなものが考えられます。
このように、中小企業がVCから資金を調達するには、様々な課題がある現状があります。
そのため、金融機関からの借入や補助金活用など、他の選択肢を検討せざるを得ない中小企業が多いのが
実情です。
最大の障害は、ベンチャーキャピタルから出資を受ける際には、経営権の一部を失う懸念や、配当、
EXIT(売却)など様々な条件面での制約があるため、社長に抵抗感があることです。
その原因としては、以下の点が考えられます。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける際には、以下の点を理解しておく必要があります。
つまり、VCとの利害対立が一定程度避けられないことを認識し、経営権の一部を譲渡する覚悟
が必要となります。
自社の将来像と、VCの存在による影響をよく検討する必要があるでしょう。
そして、日本の中小零細企業、特に小規模閉鎖会社においては、以下の2点が大きな要因となり、
VC出資に対する理解が進みにくい状況があります。
多くの経営者は、従来から銀行借入などのデット調達は理解していますが、エクイティファイ ナンスの意味合いを十分に理解していないことが多いようです。エクイティとは株式の保有を通 じて企業の所有権の一部を持つことを指します。つまり、資金を調達する代わりに経営権の一部 をVCに渡すことになります。このトレードオフが十分に認識されていないケースが多い。
中小企業、特に小規模閉鎖会社では、創業者や一族が100%の株式を所有している場合がほとん どです。このような状況下で、外部への株式の分散(エクイティファイナンス)に対する心理的ハー ドルが非常に高くなっていると考えられます。
つまり、デットとエクイティの違いへの理解不足と、完全な一族所有体制が、VCからの出資=経営
権の一部譲渡へのマインドセットの転換を困難にしている大きな要因なのです。
株式公開に対する機運が乏しいことも、この背景にあると言えるでしょう。
中小企業がVC出資を有力な資金調達手段として検討するためには、このような事業形態の特徴を
踏まえた上で、エクイティファイナンスの意義や条件をきちんと理解する必要があります。
そして、エクイティファイナンスによる資金調達をすることは、中長期的な事業計画との関連性は
非常に高いと言えます。
なぜなら、ベンチャーキャピタルや投資家は、単に資金提供をするだけではなく、長期的に企業価値
を最大化することを目的としているからです。
具体的には、以下の点で事業計画との密接な関係があります。
このように、エクイティファイナンスを受ける企業は、単なる短期的な資金計画だけでなく、3年後、5年後、10
年後の事業の姿を具体的に描いた中長期計画を提示し、投資家を納得させる必要があります。
計画が的確で実現可能性が高いほど、望ましい条件での資金調達が可能になるためです。
事業の持続的な成長を見据えた中長期計画の重要性が高いと言えるでしょう。
となると、計画性のない感で経営している会社は、エクイティファイナンスによる資金調達を実現するのが極めて
難しいと言えます。
なぜなら、エクイティファイナンスを受けるには、財務、法務、経営戦略の全ての側面において、中長期的な事業
計画と体制が備わっていることが投資家から求められるからです。
具体的には以下のような点が課題となります。
【財務面】
【法務面】
【経営戦略面】
このように、単なる資金計画だけでなく、財務、法務、経営全般にわたる中長期の事業計画とその実現体制が
整備されていないと、投資家から信頼を得ることは難しくなります。
計画性のない経営では、投資家が求める透明性と合理性が確保できないため、エクイティファイナンスへの
道は極めて険しいと言えるでしょう。