資金繰り改善の手法 その24 銀行借入の交渉

2024.05.25

中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。

現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、

引き続き資金繰りを改善する手法を伝えていきます。

 

24 銀行借入の交渉

資金繰りを改善するための手段の1つとして、銀行から新たに資金を借り入れることがあ

ります。

これまで紹介したとおり資金繰り改善の手法は様々あるのですが、日本の中小零細企業の

社長は、資金繰り改善イコール銀行からの新規借入という頭になっています。

 

このような社長が「資金繰り改善=銀行からの新規借入」と考えがちな背景には、以下のよう

な点が考えられます。

  1. 借入れへのアクセスが比較的容易 中小企業は銀行から融資を受けやすい環境にあり、                    借入は身近な選択肢となっている。
  2. 間口が広い 運転資金から設備投資資金まで、幅広い用途に使える点が魅力的。
  3. 制度資金がある 政府系金融機関による低利の制度融資が整備されている。
  4. 他の選択肢が乏しい 増資は大企業に比べて難しく、社債発行も容易ではない。

 

しかし、この考え方には以下のようなデメリットがあります。

  1. 返済負担が重くなる 借入金が増えれば、金利負担と返済リスクが高まる。
  2. 過度の債務依存に陥る 自己資本が不足し、財務体質が悪化する恐れがある。
  3. 経営の自由度が失われる 銀行の経営干渉が強まる可能性がある。
  4. 他の選択肢を見落とす 増資や、ベンチャーキャピタルからの出資など、他の資金調達手段を軽視しがち。

 

そして、銀行借入への過度な依存がもたらすデメリットについてさらに詳しく説明します。

  1. 財務リスクの増大 借入金が増えれば金利負担が重くなり、返済原資の確保が難しくなります。                景気が悪化した際に返済が滞る恐れが高まり、債務不履行(デフォルト)に陥るリスクが高まります。
  2. 経営の自由度低下 銀行は、債権者として融資先企業の経営内容をモニタリングし、必要に応                じて経営への関与(コベナンツ)を求めてきます。借入金が増えれば、このような銀行の経営干渉が              強まり、経営の自由度が低下します。
  3. 成長機会の制約 借入金の返済が重荷となり、成長のための投資に回せる資金が不足する可能性が              あります。新規事業や設備投資を控え、成長機会を逸することにつながりかねません。
  4. 再生の制約 債務超過に陥った場合、銀行借入依存度が高いと、債権放棄による債務圧縮が難しく              なります。企業再生が困難になる可能性があります。
  5. 信用リスクの高まり
    企業の信用力は、自己資本比率などで判断されます。借入金依存度が高まれば、自己資本比率が低              下し、企業の信用リスクが高まります。

 

つまり、過度の銀行借入依存は、リスクの増大、経営の自由度低下、成長機会の喪失など、様々な側面で

企業経営を硬直化させる恐れがあるのです。

 

特に、瀬戸際の時に銀行からの支援が打ち切られる。

これを晴れた時に傘を貸して雨の日に取り上げると言われますが、そもそもそのように考えていること

自体が問題です。

それは、「銀行は助けてくれる所」と社長が思い込んでいるから出てくる発想にすぎません。

そもそも、銀行と企業の利害関係は違います。銀行は自行の利益を最優先し、経営改善よりも債権回収を

優先する傾向にあります。企業の利益を第一に考えてはくれない可能性が高いということです。

また、銀行は企業の実態を完全には把握できないため、リスクを過剰に恐れ、いざというときにこそ支援

を渋る可能性があります。

そして、 銀行は組織であるため、意思決定には時間がかかり、緊急の資金需要に対して迅速な対応は期待

できません。

心理的な面からいうとモラルハザードの問題があります。「銀行が助けてくれる」と考えることで、経営者

自身が努力を怠るモラルハザードに陥るリスクがあります。

 

また、安易に銀行からの借入に頼ることは、代替手段検討の怠慢 銀行借入以外の資金調達手段(増資、

ベンチャーキャピタル等)を軽視してしまいかねません。

 

つまり、銀行頼みの考え方は、現実的ではなく、かえって企業の経営リスクを高める可能性があるのです。

経営者自らが主体的に、抜本的な経営改善策と、多角的な資金調達策を講じる必要があります。

銀行は、あくまで最終的な資金供給源としての位置付けが適切でしょう。

 

要するに、新規借入を行う際は、以下の点に留意する必要があります。

  1. 返済計画を立てる 借入金の返済計画を綿密に立て、返済原資を確保しておく。
  2. 担保の有無を確認する
    担保がある場合は金利が低く抑えられる一方で、担保を差し入れる必要がある。
  3. 銀行の条件を確認する 金利、返済期間、財務制限条項など、銀行の条件を良く確認する。

適切な借入計画と返済計画を立てることで、資金繰りを改善できますが、返済リスクにも注意が必要です。

状況に応じて、借入以外の資金調達方法も検討するのが賢明です。

 

そもそも、資金計画がないと、いつどのくらいの資金が必要になるかが不明確です。必要な資金を確保

できず、機会損失が生じたり、資金繰りに窮することにもなりかねません。

そして、計画なく銀行から借入をしていると、銀行から経営の不健全さを指摘され、融資を渋られる可能性

が高くなります。

 

したがって、経営計画を立てることが資金繰り改善には不可欠なのです。