中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
引き続き資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
25 キャッシュマネジメントの徹底
キャッシュマネジメントとは、手元の現金や預金残高を適切に管理・運用することを指します。
具体的には、以下の3点に注力することが大切です。
- 入金と出金のタイミングを把握する 受取りと支払いのタイミングをしっかり把握し、 いつ現金が入ってくるか、いつ支払いが発生するかを事前に把握しましょう。 これにより、いつどのくらいの現金が必要になるかを予測できます。
- 余剰資金を有効活用する 入金と出金のタイミングにずれがある場合、一時的に余剰現金が 発生します。この余剰資金を適切に運用(例:普通預金など)することで、資金を有効活用できます。
- 出金のタイミングを調整する 支払い時期が遅れている場合は、できる限り支払いを遅らせる ことで、その期間は現金を別の用途に回せます。ただし、支払い遅れには注意が必要です。
このように、入金と出金のタイミングを意識し、余剰資金を運用し、支払いタイミングを調整するこ
とで、手元の現金を有効活用でき、資金繰りが改善されます。
まずは、入金と出金の予定表を作成するところから始めてみるとよいでしょう。
ただ、入出金のタイミングの管理ができていないのが中小零細企業の実情です。
そういった場合でも、以下のようなポイントに気をつければ、キャッシュマネジメントを改善できます。
- 売上入金と支払いの記録を徹底する
- 売上入金は受注時や入金時に必ず記録する
- 支払い(経費)は発生時に項目ごとに記録する
- Excelなどの簡易なツールを活用するのがおすすめ
- 大まかな入出金サイクルを把握する
- 月次や週次の売上入金のピークを確認する
- 大型の定期支払い(給与、家賃など)のタイミングを確認する
- サイクルをおおよそ把握できれば、資金ニーズが予測しやすくなる
- 入出金の許容範囲を設定する
- 最低どの程度の現金残高が必要か目安を設ける
- 入金が遅れた場合の支払い上限額を決める
- 資金の枯渇リスクを最小限に抑える
入出金が完璧に記録できなくても、こうした対応で手元の資金状況を把握し、計画的に資金を運用すること
ができます。徐々に改善を重ねていくことが肝心です。
そして、資金繰り計画を作成することは、キャッシュマネジメントを徹底する上で非常に有効な手段
となります。
資金繰り計画を立てることは、以下のようなメリットがあります。
- 資金不足への対策が立てやすくなる
- いつ頃資金が不足するかが事前に分かる
- 運転資金の調達や支払い時期の調整など、対策を検討できる
- 余剰資金の有効活用が可能
- 一時的な余剰資金の発生タイミングが把握できる
- 余剰資金を安全で利回りの高い金融商品で運用できる
- 計画と実績の差異分析ができる
- 実際の入出金と計画との乖離を確認できる
- 乖離の原因を分析し、次回の計画に反映できる
資金繰り計画の作成方法は、過去の実績データから将来を予測する方法や、売上/仕入/経費の予定を元に
積み上げる方法などがあります。期間は長すぎても実態とかけ離れるので、3カ月~半年が適切でしょう。
このように、資金繰り計画を立てることで、手元資金の管理が一層徹底できます。
特に資金繰りが厳しい中小零細企業にとっては重要な経営手法と言えるでしょう。
資金繰り計画表にも、日繰り表と月繰り表等があります。
月繰り表は、概算の資金計画を立てるのに適しています。
- 月次の売上入金や主要な支払い(給与、家賃など)の概算を記入
- 大まかな資金の残高見通しが把握できる
- 月単位でどの時期に資金が足りなくなるかが分かる
一方、日繰り表は、実際の日々の入出金管理に役立ちます。
- 日々の入金と支払いの正確な予定を記入
- 手元流動性の正確な残高管理ができる
- 必要に応じて数日先の資金ニーズまで把握可能
つまり、月繰り表で月次の資金計画を立て、日繰り表で日々の入出金管理を行うのが理想的です。
中小零細企業であれば、以下のように作成するのがおすすめです。
- 月繰り表:月初に翌月分の概算を作成する
- 日繰り表:毎営業日、当日の正確な入出金予定を記入する 月末に次月の日繰り表も作成する
いきなり完璧なものを作ろうとせずに、徐々に改善を重ねながら、キャッシュマネジメントの習慣
を身につけていくことが大切です。
そして、資金繰り計画の精度を高めるためには、以下の点に気をつける必要があります。
- 正確なデータ収集
- 過去の売上/経費等の実績データを正確に収集する
- 受注額、売掛金、買掛金などの正確な残高管理が重要
- 可能な限り細かい内訳(商品、サービス、取引先別など)で管理する
- 適切な予測方法の選択
- 売上予測には過去実績からのトレンド予測やシーズン変動の反映が有効
- 経費予測では定期的な固定費と変動費を分けて予測することが重要
- 業界動向や自社の事業計画なども加味する
- 頻繁な見直し
- 毎月または四半期ごとに計画の見直しを行う
- 実績値と計画値の乖離を確認し、その要因を分析して計画に反映する
- 販売計画や事業計画の変更があれば、それに合わせて修正する
- 責任者の設置
- 資金繰り計画の作成・維持・分析を専任で行う担当者を置く
- 経理財務部門と営業部門が連携して、適切なデータを収集・反映する
- ITツールの積極活用
- Excel等のシート機能を使って計画を自動化する
- ERPなどの基幹システムと連携させる
- データ収集と計画立案の手間を削減する
このように、きめ細かいデータ管理と頻繁な見直し、担当者の設置、ITツールの活用が精度向上には重要です。
つまり、計画を立てるだけでは効果はなく、PDCAサイクルを回すことが必要です。