資金繰り改善の手法 その29 資金繰り予測の精度を高める

2024.05.30

中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。

現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、

引き続き資金繰りを改善する手法を伝えていきます。

 

29 資金繰り予測の精度を高める

 

資金繰り予測の精度を高めることは、企業の資金繰りを改善するための重要な手段です。

資金繰り予測とは、将来の現金の入出金を正確に見積もることを指します。

これにより、いつ資金が不足するかや、余剰資金がいつ発生するかを事前に把握できます。

資金繰り予測の精度を上げるには、次の点に気をつける必要があります。

  1. 売上の予測 顧客からの入金日や金額を正確に見積もることが大切です。過去の実績から                  パターンを把握し、季節変動なども考慮に入れます。
  2. 支出の把握 仕入れ代金の支払い日や、人件費、租税公課など、支出をできるだけ正確に予測します。
  3. 情報の一元管理 売上、支出に関する情報をきちんと一元管理し、タイムリーに更新することで、               予測の精度が上がります。
  4. 適切な期間設定 資金繰りは短期と中長期で発生パターンが異なるため、それぞれに適した期間で              予測を行います。
  5. 定期的な見直し 実際の入出金状況と予測にずれがあれば、その原因を分析し、次の予測に生かし              ていきます。

このように、関連する様々な情報を適切に収集・管理し、過去の実績から学びながら、定期的に見直しを

行うことで、資金繰り予測の精度が高まり、資金繰りの改善につながるのです。

そして、そうするためには資金繰り表の作成が非常に重要になります。

資金繰り表がなければ資金繰りが予想と合っているかどうかの振り返りができないからです。

資金繰り表とは、将来の一定期間における現金の入出金を項目別に記載した表のことです。

これを適切に作成し、活用することで、資金繰り予測の精度向上が図れます。

資金繰り表を作成する際の主なポイントは以下の通りです。

  1. 期間の設定 短期(数ヶ月先まで)と中期(半年〜1年先)など、経営者のニーズに合わせて適切な期間を設定します。
  2. 入金項目の洗い出し 売上入金、借入金の返済、その他の収入など、全ての入金項目を洗い出します。
  3. 支出項目の洗い出し 仕入代金、人件費、設備投資、借入金の返済など、全ての支出項目を網羅的に拾い上げます。
  4. 過去実績やデータに基づく予測 各項目の金額は、過去の実績データや関連する情報を参考に、できるだけ正確に予測します。
  5. 定期的な更新 実際の入出金状況に合わせて、資金繰り表を適宜更新していきます。

このように、入金と支出を全て網羅した資金繰り表を作成し、過去データを活用しながら定期的に更新することで、

資金繰り予測の精度が格段に上がるのです。

 

もっとも、資金繰り予測の精度を上げるためには、予測そのものだけでなく、予測の基礎となる会計データの正確性

が非常に重要となります。

会計データが不正確だと、資金繰り表に反映される売上、仕入、人件費などの金額予測にずれが生じてしまいます。

そうなれば、資金繰り表自体の信頼性が低下し、適切な資金計画を立てられなくなってしまいます。

そこで会計データの正確性を高めるために必要なことは、主に以下の3点です。

  1. 適切な会計処理 売上計上のタイミングや、費用の期間帰属など、会計基準に従った適正な処理を徹底する。
  2. データの正確な入力 伝票起票時の入力ミスがないよう注意を払う。入力内容のダブルチェックなども有効です。
  3. 会計ソフトの適切な運用 導入された会計ソフトを適切に活用し、データ管理や計算処理を正確に行う。

このように、会計データの正確性を常に意識し、適切な会計処理と入力作業、ソフト運用に注力することが重要に

なります。

正確な会計データがあれば、資金繰り表の質も高まり、予測精度の向上につながります。

会計と資金繰り予測及び計画性は車の両輪のように密接に関係しているため、両者を適切に管理することが、

資金繰り改善に欠かせないのです。

 

資金繰り予測の精度を高めるためには、単に未来の入出金を見積もるだけ、そう思うやそうなるはずだではなく、

過去の実績データと現在の会計データの正確性が極めて重要になります。

過去の実績データが不正確であれば、予測の基礎となるパターンや季節変動などを適切に捉えられません。

また、現在の会計データに誤りがあれば、出発点である現状の売上高や支出額を正しく認識できなくなります。

つまり、資金繰り予測は過去・現在・未来の数値の3つのフェーズにおいて、それぞれのデータの正確性が問われるのです。

  • 過去の実績データの正確性
  • 現在の会計データの正確性
  • これらに基づく未来の入出金計画予測の正確性

この3つが全て正確でなければ、資金繰り予測の精度は著しく低下してしまいます。

そのため、過去の伝票データや売上実績などの入力ミスをなくすこと、現在の会計ソフトの適切な運用と会計処理

の徹底を図ること、さらにその上で将来予測の高度化に努めることが不可欠となるのです。

 

こうした一連の正確性の追求によって、初めて信頼できる資金繰り表が作成でき、適切な資金繰り改善策を立案

することができるのです。