中小零細企業の社長が悩んでいるのが、「お金」のこと、要は資金繰りだと思います。
現場で財務改善を支援している財務コンサルタントが、
引き続き資金繰りを改善する手法を伝えていきます。
30 早期債務返済の検討
資金繰り改善のための早期債務返済は、借入金の返済を早めることで支払利息の負担を軽減する手法です。
この債務の返済というのは、他人資本でも特に金融機関からの借り入れということを指しています。
事業を行う際に、自己資金だけでは不足する場合があり、その際に金融機関から資金を借り入れることが
あります。この借入金が「債務」にあたります。
債務には次のようなものが含まれます。
このように、自社の資金だけでは不足する場合に、外部から資金を調達することを「他人資本の調達」と
呼びます。
一方、自己資金を「自己資本」と呼び、増資や内部留保資金などがこれにあたります。
資金繰り改善のための早期債務返済とは、主に金融機関などからの借入金を早めに返済し、支払利息の負担
を軽減することを指します。
自己資本による資金調達は、利息負担がないためです。
借入金があると毎月一定の金額を利息として支払う必要があります。
この利息の支払いが資金繰りを圧迫する要因となります。
そこで、借入金の残高を減らすことで支払利息額を低く抑えられるのが早期返済の狙いです。
例えば、1,000万円の借入残高に対し年利5%の場合、年間50万円の利息負担があります。
ここで、300万円の一括返済ができれば、残高が700万円に減り、年間の支払利息は35万円に下がります。
つまり15万円の利息負担が軽減されるわけです。
しかし、金融機関からの借入の場合、単に資金繰りに影響を及ぼすのは金利だけではなく、元金返済の有
無の方は資金繰りへの影響という意味では大きいです。
なぜならば、損益計算書(P/L)上で元金返済の影響が表れないため、社長が資金繰りへの影響を過小評価し
てしまうからです。
具体的には、以下のようになります。
つまり、金利に着目しがちな経営者は、「借入金の返済=支払利息の削減」と単純に捉え、元金返済の重大な
影響を見落とす可能性があるわけです。
借入金の返済には、金利の支払いだけでなく、元金の返済が伴います。
損益計算書には表れないため、経営者が過小評価しがちです。
しかし、資金繰りへの影響は極めて大きいことに注意が必要です
このように、P/Lと実際の資金繰りには乖離があるのです。
なので、長期の設備投資資金など、一定期間後に元金を返済していく借入金と、当座貸越のように回転させ
ながら利息のみを支払う借入金では、資金繰りへの影響が全く異なります。
長期借入金の場合:
当座貸越の場合:
ですので、借入形態により、考える必要があります。
このように、借入形態によって資金繰りへの影響が変わるため、借入金を返済すれば資金繰りが改善されると
いうものではなく、具体的な借入形態を踏まえた上で、メリット・デメリットを踏まえて計画的に返済をして
いくことが重要です。