事業計画を社長自身で書くべき5つの理由|売上好調の顧問先が倒産した日に学んだこと
「長瀬さんの目標は何ですか?」
知り合いの社長から、こう聞かれたことがあります。コンサルティングでもメルマガでも、私は自分の目的や目標について、ほとんど書いてきませんでした。この問いをきっかけに、なぜ私が「社長自身で事業計画を書けるようになること」にこだわるのかを、お話ししようと思います。
結論から申し上げます。事業計画を社長自身で書くべき理由は、売上が伸びていても会社が倒れることがあり、その危険を事前に見抜けるのは、自分で数字を組み立てた社長だけだからです。私はそれを、売上好調だった顧問先の倒産という形で思い知らされました。
収益満開経営の長瀬好征です。財務を軸とした経営コンサルタントとして、30社以上の資金繰り改善を支援してきました。この記事は、ノウハウの記事ではありません。私がなぜこの仕事をしているのか、そしてなぜ「計画書をつくってあげる」のではなく「社長が自分で書けるようにする」ことにこだわるのか、その原点の話です。この記事では、次のことをお伝えします。
- 20歳の決意から、独立、そして挫折までの道のり
- 売上好調だった顧問先が突然倒産した日に学んだこと
- 事業計画を社長自身で書くべき5つの理由
- 「外注した計画」と「自分で書いた計画」の違い
- 社長自身で書けるようになるための出発点とセルフチェック
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なぜ私は「社長自身で事業計画を書く」ことにこだわるのか?
事業計画を他人に書いてもらった社長は、計画書を持っていても、自分の会社の危険を自分で見抜くことができないからです。計画書という「成果物」より、計画を書く過程で社長の頭の中にできあがる「会社の数字の地図」のほうが、はるかに大切です。
私の目的は、「日本経済の再興のために、日本の中小企業をお金に困らない会社にすること」です。そしてその目的のための目標として、「日本の中小企業の社長に財務を理解してもらい、社長自身で事業計画を書けるようになる人を100人育成すること」を掲げています。
なぜ「計画書をつくる人」ではなく「計画書を書ける社長」を育てることを目標にしているのか。その答えは、20歳の頃から続く、私自身の紆余曲折の中にあります。
20歳の決意は、どこから始まったのか?
バブル崩壊後の「失われた10年」の中で、中小企業が良くならなければ日本は良くならない、と確信したことから始まりました。
私が20歳のとき、日本はバブル崩壊から「失われた10年」と呼ばれる時期にありました。景気はなかなか回復せず、就職氷河期に入り、若い人たちの正規雇用が減っていった時代です。
この状況を目の当たりにして、一つの確信を持ちました。「日本経済が弱くなっているのは、中小企業の復活がないからだ。中小企業が良くならないと、多くの人が経済的な自由を得て幸せに生活することができない」——。
【20歳の決意】
そこで「事業再生専門の弁護士」になることを決意し、司法試験の勉強を始めました。中小企業の再生こそが、日本経済復活の鍵だと信じていたからです。
司法試験の勉強そのものは、難しいとは思いませんでした。ところが身体の調子がどんどん悪くなり、毎年、択一試験の前には歩くのもつらいほどになりました。32歳のとき、ついに歩くことも困難になり、司法試験を諦めて、新橋の会社に営業職として就職しました。
それでも、会社員として過ごすつもりはありませんでした。司法試験の合間に読んでいたマーケティングの知識を生かし、「中小企業の売上と利益を上げるコンサルタントとして独立しよう」という思いを、胸に秘めていました。
【2011年3月11日の気づき】
東日本大震災が起きたとき、私はマーケティングディレクターとして働いていました。圧倒的な自然の脅威を前に、「いつ自分のしたいことが突然できなくなるかもしれない」と思ったとき、20歳の頃の「日本経済の再生のためのコンサルタントになる」という思いがよみがえってきました。
売上好調だった顧問先は、なぜ突然倒産したのか?
売上は伸びていても、会社を支えるお金の流れが、誰にも見えていなかったからです。当時の私自身も、それが見えていませんでした。
2011年5月、会社の看板すらない、まったくのゼロの状態で独立しました。生活はできていたものの、鳴かず飛ばずの状態が5年続きました。
2016年、たまたまコンサルティングをしていた会社が、マーケティングの成果で売上をどんどん伸ばしていき、社長にも喜んでいただいていました。ところが、その社長と突然、連絡が取れなくなったのです。
【衝撃の現実】
おかしいと思って会社に行ってみると、何もありませんでした。ただ「倒産しました」という貼り紙が貼ってあるだけ。売上は好調に伸びていたにもかかわらず、です。そのとき、遅まきながら「会社が良くなるためには、売上だけではダメなんだ」ということを思い知りました。
売上が伸びると、多くの場合、仕入れや外注の支払いが先に増え、売掛金の回収は後からついてきます。売上が急に伸びる会社ほど、支払いと回収の時間差が広がり、手元のお金が足りなくなることがあります。損益計算書の上では順調に見えても、資金が尽きれば会社は続けられません。
私は、売上を伸ばすことしか見ていませんでした。その会社の社長もおそらく同じだったのだと思います。売上を伸ばしたときに、お金がどう動くか。それを事前に考える道具が、事業計画と資金繰り表です。もしあの社長が、自分の手で計画と資金繰りを組み立てていたら、危険の兆しに気づけたかもしれない——。この体験から私は「財務」の重要性にたどり着き、それが今の仕事の原点になりました。
事業計画を社長自身で書くべき5つの理由とは?
お金の流れの理解、判断の質、資金の見通し、説明する力、そして経営の自立——この5つです。どれも、計画書を「持っている」だけでは得られず、自分で「書く」過程でしか身につきません。
売上と利益とお金の関係が、自分の言葉でわかる
売上が上がっても倒産することがある理由、利益が出ても資金繰りが苦しくなる構造を、計画を組み立てる過程で体で理解できます。他人がつくった計画書を読むだけでは、この理解は生まれません。
大きな判断を、数字の裏づけをもって下せる
大口の注文を受けるか、設備に投資するか、人を採るか。自分で組み立てた計画があれば、「この判断で、来年の資金はどう動くか」をその場で考えられます。感覚だけに頼らない判断ができるようになります。
資金の見通しを、先回りして立てられる
将来の資金需要を予測し、銀行への相談や投資のタイミングを前もって考えられます。足りなくなってから慌てるのではなく、足りなくなる前に手を打てます。
社員や銀行に、計画を自分の言葉で説明できる
自分で書いた計画は、なぜその数字なのかを説明できます。説明できる計画は社員と共有でき、銀行との対話の材料にもなります。
専門家に依存せず、自分で会社の行き先を決められる
コンサルタントや専門家の助言は活用しても、最終的な判断の軸は社長が握る。私が目指しているのは、私がいなくても自分で計画を書き、使いこなせる社長を育てることです。
「外注した計画」と「自分で書いた計画」を比べると、違いがはっきりします。
| 場面 | 外注した計画 | 社長が自分で書いた計画 |
|---|---|---|
| 銀行から数字の根拠を聞かれたとき | 作成者に確認しないと答えられない | その場で前提を説明できる |
| 計画どおりに進まなかったとき | どこがずれたのかわからず、作り直しを依頼する | どの前提が外れたかがわかり、次の手を考えられる |
| 大口の注文や投資を判断するとき | 計画書を開いても判断の材料にならない | 資金への影響をその場で見積もれる |
| 社員に方針を伝えるとき | 数字だけが一人歩きする | なぜその数字なのかを自分の言葉で語れる |
| 計画をつくった後 | 提出したら棚に置かれる | 毎月開いて、実績と比べて使う |
「書きたいのに書けない」社長がつまずく原因は、こちらで整理しています。
📖 事業計画書を作れない社長に共通する3つの原因 →
福沢諭吉の「独立の気力」は、経営に何を教えているのか?
自分の頭で考える力のない者は、人に頼り、人に頼る者は人を恐れるようになる——自立とは、判断の軸を他人に預けないことだ、ということです。
「独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る、人を恐るる者は必ず人にへつらうものなり」
— 福沢諭吉『学問のすゝめ』第三編
福沢諭吉は『学問のすゝめ』で、一人ひとりが独立の気概を持つことが国の独立の土台になると説きました。この一節は、経営にもそのまま当てはまります。事業計画を他人任せにしている社長は、銀行や専門家の言葉に左右されやすくなります。数字の意味を自分で判断できないため、相手の言うことを受け入れるしかないからです。
事業計画を社長自身で書けるということは、経営における「独立の気力」を持つことです。専門家の知恵は大いに借りればよい。しかし、判断の軸は自分で握る。私が「書いてあげる」のではなく「書けるようにする」ことにこだわるのは、この自立こそが、会社をお金に困らない状態に導く土台だと考えているからです。
コンサルタントに依存しない「自立型経営」の考え方は、こちらで掘り下げています。
📖 一倉定の哲学に学ぶ現代コンサルティングの限界と自立型経営の本質 →
社長自身で書けるようになるには、何から始めればよいか?
まず「真の経営者」の条件を知り、自社の過去の数字を自分の手で並べるところから始めます。私は、真の経営者の条件を次の2つだと考えています。
🎯 真の経営者の2つの条件
- 5か年の事業計画書を、自分で作成できる
- 資金繰り表を、自分で作成できる
これができないうちは、法的な立場としての「社長」ではあっても、厳密な意味での「経営者」とは言えません。厳しく聞こえるかもしれませんが、逆に言えば、この2つは学べば誰でも身につけられる力です。
そのための出発点として、次の順番で進めることをお勧めしています。
- 決算書の3つの表の関係を知る——損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書が、どうつながっているかを理解する
- 過去3年分の数字を自分の手で並べる——売上・利益・現預金の動きを、自分で表にしてみる
- 自社を取り巻く環境を書き出す——顧客・競合・仕入先の変化から、機会と危険を言葉にする
- 売上・利益・資金の目標を数字にする——売上目標を置いたら、資金がどう動くかも必ず考える
- 毎月、計画と実績を比べる——ずれた前提を見つけ、計画を書き直す習慣をつける
✅ セルフチェック:あなたは事業計画を自分で書けますか
- □ 今の事業計画書の数字の根拠を、作成者に聞かずに説明できますか
- □ 過去3年分の売上・利益・現預金の推移を、何も見ずにおおよそ言えますか
- □ 売上が2割増えたら、運転資金がどう動くかを考えたことがありますか
- □ 3か月先までの資金繰り表を、自分で作れますか
- □ 計画と実績のずれを、毎月確かめていますか
資金繰りを自分で点検する第一歩として、黒字倒産・資金ショートのリスクを確かめられる「資金繰りチェックシート」を無料でお配りしています。
📊 チェックシートを無料で受け取る社長が自分で事業計画書をつくり、使いこなすまでの手順は、こちらのガイドにまとめています。
📖 事業計画書作成10ステップ完全ガイド|社長が自分で作り、使いこなすための全体像 →
【まだ道半ば】
「目標に近づいていますか?」と聞かれたら、まだまだこれからです、と答えます。それでも、20歳の頃から一貫して、この目標に向かって歩み続けています。
📝 まとめ:目的があるから、紆余曲折しても進める
振り返ってみれば、弁護士を目指していた頃よりも、今のほうが20歳の頃に目指していた存在に近づいている気がします。目的が定まっていたから、紆余曲折はあっても、自分の行きたい方向に歩んでこられたのだと感じています。
だから私は、「目的が大切ですよ」とどこかで聞いた話をしているのではありません。自分自身がその大切さを身をもって知っています。売上好調の顧問先が倒産した日に学んだのは、会社を守るのは売上ではなく、社長自身がお金の流れを見通す力だということでした。事業計画を社長自身で書けるようになることは、依存からの脱却であり、経営の自立への第一歩です。
今すぐできる一歩:過去3年分の決算書を取り出し、売上・利益・現預金の3つの数字を、自分の手で一枚の表に並べてみてください。
❓ よくある質問
あります。専門家の助言を借りることはよいのですが、数字の前提を社長自身が決めなければ、計画どおりに進まなかったときにどこがずれたのかがわからず、銀行や社員にも説明できません。計画書という成果物より、書く過程で社長の頭にできる「会社の数字の地図」が大切です。
計画書はできても、社長が数字の根拠を説明できず、判断にも使えないことです。銀行から根拠を聞かれても答えられず、計画とずれても原因がわからないため、結局は提出用の書類として棚に置かれがちです。
あります。売上が急に伸びると、仕入れや外注の支払いが先に増え、売掛金の回収は後からついてくるため、手元のお金が足りなくなることがあります。損益が順調に見えても、資金が尽きれば会社は続けられません。
5か年の事業計画書と資金繰り表を、自分で作成できることです。これができないうちは、法的な立場としての社長ではあっても、厳密な意味での経営者とは言えません。どちらも学べば身につけられる力です。
決算書の3つの表の関係を知り、過去3年分の売上・利益・現預金の数字を自分の手で並べることから始めます。そのうえで環境を書き出し、目標を数字にし、毎月計画と実績を比べる習慣をつけます。
※本稿は長瀬好征の実体験をもとに、AIを構成・編集のパートナーとして活用し作成しました。
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