値上げと売上アップ、どちらが利益を増やすか
10%の値上げは33%の増収に匹敵する
「値上げしたい気持ちはあるが、お客様が離れるのが怖い」——そうおっしゃる社長と、日々お話ししています。一方で、「とにかく売上を増やそう」と動き続けているのに利益が残らない、という相談も後を絶ちません。
結論から申し上げます。粗利率30%の会社なら、10%の値上げで得られる粗利の増加は、売上を33%増やしたときと同じです。しかも値上げなら、お客様が4人に1人減っても、粗利は元の水準を保てます。
この記事では、50秒の動画で要点をつかんでいただいたうえで、その計算の中身と、値上げを判断するときに社長が確かめるべき数字を、本文で詳しく解説します。
🎬 まずは50秒の動画でポイントをつかむ
📌 この記事で確認できること
- 売上1,000万円・粗利率30%の会社を例にした、値上げの効果の計算
- 同じ粗利を「売上アップ」で達成しようとすると何%増が必要か
- 値上げでお客様が何%減っても粗利を保てるか(早見表つき)
- 粗利率の違いで、値上げの効果がどう変わるか
- 値上げを判断する前に確かめるべき3つのこと
※動画は要点のみの短縮版です。計算の前提や判断のポイントは本文で解説しています
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数字で比べると、差は歴然とする
「値上げは怖い」という感覚は理解できます。しかし感覚で判断する前に、一度数字を並べてみることをお勧めしています。具体的な数字が見えた瞬間、多くの社長が「これは考え方を変えなければいけない」とおっしゃいます。
売上原価:700万円
粗利(売上総利益):300万円(粗利率30%)
売上原価:700万円(変わらず)
粗利:400万円
粗利の増加率:+33%
売上原価:約933万円
売上の増加率:+33%が必要
10%の値上げで達成できることを、売上アップで補おうとすると33%の増収が必要になる。
なぜこれほど差がつくのでしょうか。理由は単純です。値上げで増えた100万円は、原価が1円も増えないため、そのまま粗利になります。一方、販売数量を増やして売上を伸ばす場合は、売上が増えた分だけ原価も増えます。粗利率30%の会社では、売上を100万円増やしても、手元に残る粗利は30万円にすぎません。粗利を100万円増やすには、売上を約333万円増やす必要があるのです。
しかも、売上を33%増やすには、営業の人手や時間、場合によっては人の採用や設備の増強も必要になります。売上が増えれば、代金を回収するまでに立て替えるお金も増えます。同じ粗利100万円でも、値上げと売上アップでは、そこに至るまでの労力とお金の負担がまったく違うのです。
※この計算は、値上げ後も販売数量と1個あたりの原価が変わらないという前提です。実際には値上げでお客様が減る可能性があります。その影響は次の章で確かめます。
値上げでお客様が減っても、利益は残るのか?
残ります。粗利率30%の会社が10%値上げした場合、お客様(販売数量)が25%減っても、粗利は値上げ前と同じ300万円を保てます。値上げの判断で本当に確かめるべきなのは、「お客様が減るかどうか」ではなく、「何%までなら減っても粗利を保てるか」です。
値上げ後は、1個あたりの粗利が大きくなります。値上げ前は売価100に対して粗利30でしたが、10%値上げすると売価110に対して粗利40になります。粗利300万円を保つのに必要な販売数量は、値上げ前の4分の3(300÷400)で済むのです。
| 価格の変更(粗利率30%の場合) | 1個あたりの粗利 | 粗利を保てる販売数量の変化 |
|---|---|---|
| 5%値上げ | 30 → 35 | 約14%減まで |
| 10%値上げ | 30 → 40 | 25%減まで |
| 15%値上げ | 30 → 45 | 約33%減まで |
| 10%値下げ | 30 → 20 | 50%増が必要 |
表の最後の行にも注目してください。10%の値下げをすると、粗利を保つためだけに販売数量を50%も増やさなければなりません。「値引きして数を売る」という判断が、いかに重い負担を会社に課すかがわかります。
支援の現場でも、値上げをためらう社長ほど、実は値引きには抵抗がないという場面をよく見かけます。値引きは「お客様のため」に見えますが、粗利の面では値上げの逆向きの効果が、同じ大きさで跳ね返ってくるのです。
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📊 診断シートを無料で受け取る粗利率が低い会社ほど、値上げの効果が大きいのはなぜか?
粗利率が低いほど、値上げで増える粗利が、もとの粗利に対して大きな割合を占めるからです。同じ10%の値上げでも、粗利率が低い会社ほど、粗利の伸び率は大きくなります。
| 粗利率(売上1,000万円) | 値上げ前の粗利 | 10%値上げ後の粗利 | 粗利の増加率 |
|---|---|---|---|
| 20% | 200万円 | 300万円 | +50% |
| 30% | 300万円 | 400万円 | +33% |
| 40% | 400万円 | 500万円 | +25% |
値上げで増える粗利は、粗利率に関係なく一律100万円です。その100万円が、粗利200万円の会社にとっては5割増し、粗利400万円の会社にとっては2割5分増しになります。薄利で苦しんでいる会社ほど、価格を見直す効果は大きいのです。
粗利率の違いが経営の安定性にどれほど影響するかは、次の記事で詳しく比べています。
なぜ「売上アップ」を先に考えてしまうのか?
「値上げはお客様への負担」「売上を増やす努力は正しい行動」という感覚が、数字による判断より先に立ってしまうからです。これは経営者の心理として自然なことですが、経営判断としては順序が逆です。
ドラッカーは、利益を「事業を続けていくためのコスト」と捉えるべきだという趣旨の考えを示しています。利益は結果として残るおまけではなく、会社が将来も存続するために必要な費用だということです。そうであれば、その利益を最も効率よく確保する方法を、感情ではなく数字で考えることが社長の仕事になります。
もう一つの理由は、売上の数字がいちばん見えやすいことです。税理士から届く試算表も、銀行との面談も、話題の中心は売上と利益の合計になりがちです。取引先ごと・商品ごとの粗利がいくらで、どこに価格を見直す余地があるのかまでは、誰も一緒に考えてくれません。
📐 財務支援の3層構造で見る「価格の判断」
- 3流:売上の合計だけを見て、「もっと売上を増やしましょう」と判断する
- 2流:商品別・取引先別に粗利の実態をつかみ、どこに利益が出ていないかを把握する
- 1流:つかんだ実態をもとに、どの商品をいくらで売るかという価格の判断そのものに数字を使う
価格を決めるのは社長にしかできない仕事です。その判断を支える数字を、社長自身が持てるかどうかが分かれ目です。
値上げを検討する前に確認すべき3つのこと
値上げは、数字の上では強力な打ち手です。ただし、やみくもに価格を上げればよいわけではありません。実行する前に、次の3つを確かめてください。
まとめ:先に確認すべきは「値上げの余地」
売上を33%増やすことと、価格を10%上げること——どちらが現実的かを冷静に考えてみてください。多くの場合、後者のほうが短期間で、少ない労力と資金で実現できます。そして10%の値上げなら、お客様が25%減っても粗利は保てます。
もちろん値上げが適切かどうかは、業種・取引先・競合の状況によります。しかし「怖いから検討すらしない」という状態は、経営判断ではありません。まず数字を並べて、値上げを選択肢として視野に入れることから始めてみてください。
「頑張って売上を増やす」前に、「今の価格は適正か」を問う——これが、経営者として先に考えるべき順序です。
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❓ よくある質問
粗利率30%の会社なら、10%の値上げで粗利は300万円から400万円へ33%増えます。同じ粗利を売上アップで得るには、売上を約1,333万円まで33%増やす必要があります。値上げで増えた売上は原価が増えないためそのまま粗利になるのに対し、販売数量を増やすと原価も一緒に増えるためです。
粗利率30%の会社が10%値上げした場合、1個あたりの粗利が30から40に増えるため、販売数量が25%減っても粗利は値上げ前と同じ水準を保てます。値上げを判断するときは、何%までなら減っても粗利を保てるかを先に計算しておくことが大切です。
粗利率30%の会社が10%値下げすると、1個あたりの粗利は30から20に減ります。粗利を保つためだけに販売数量を50%増やす必要があり、値下げは値上げの逆向きの効果として粗利を大きく圧迫します。
変わります。売上1,000万円の会社が10%値上げすると粗利は一律100万円増えますが、粗利率20%の会社では粗利が50%増、30%では33%増、40%では25%増になります。粗利率が低い会社ほど、価格を見直す効果は大きくなります。
商品別・取引先別の粗利率、何%のお客様が減っても粗利を保てるかの計算、そしてお客様に誠実に説明できる値上げの根拠の3つです。まず自社の数字を並べることから始めてください。現状の確認には、メルマガ登録特典の「資金繰りチェックシート」も役立ちます。
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