利益は知恵の証|思考型経営5つの原則

2025.06.17





利益は知恵の証|思考型経営5つの原則

サンマルクカフェ創業者・片山直之氏に学ぶ経営の本質
📅 更新日:2025年11月24日
⏱️ 読了時間:10分

💡 この記事で得られること

「頑張っているのに、なぜか利益が出ない」

多くの中小企業社長が抱えるこの悩み。実は、その原因は「頑張り方」ではなく「考え方」にあります。

サンマルクカフェ創業者・故片山直之氏(1958年-2018年)は、こう言いました:

「売上は人気のバロメーター、
利益は知恵のバロメーター」

この言葉に凝縮された経営の本質を、30社以上の財務改善を支援してきた経験から解説します。「頑張る経営」から「考える経営」へ—その転換点となる5つの原則をお伝えします。

売上と利益の本質的な違い

多くの社長が「売上至上主義」に陥っています。売上が伸びれば会社は良くなる—そう信じて、日々懸命に営業活動に励んでいます。

しかし、売上が伸びても利益が出ない会社は数多く存在します。30社以上の財務改善を支援してきた経験から言えば、その割合は驚くほど高いのが現実です。

⚠️ 典型的な「頑張る経営」の症状

• 売上は前年比120%なのに、手元の資金が減っている
• 忙しくて休む暇もないのに、利益率は3%未満
• 価格競争に巻き込まれ、値下げ要求に応じ続けている
• 「もっと頑張れば」と思いながら、疲弊していく

これらはすべて、「頑張り」が先行し「考える」ことが後回しになっている典型例です。

片山氏が見抜いた本質

サンマルクカフェ創業者・片山直之氏は、この構造を明確に言語化しました:

📊 売上

= 人気のバロメーター

どれだけ多くの人に選ばれたか。市場での存在感や認知度を示す指標。「頑張り」で伸ばせる。

💡 利益

= 知恵のバロメーター

どれだけ賢く事業を運営しているか。仕組み化・システム化の成果。「考える」ことで伸ばせる。

この定義の何が革命的かといえば、利益を「結果」ではなく「知恵の証明」として位置づけた点です。利益が出ないのは運が悪いからでも、市場が厳しいからでもなく、経営者の思考が足りないからだという明確なメッセージです。

✅ 30社支援の実績から見える真実

利益率を3%から10%に改善した企業の共通点は、「売上を追わなくなったこと」でした。

代わりに彼らが注力したのは:
• どの顧客にフォーカスするか(顧客の選別)
• どの商品・サービスに注力するか(商品の選別)
• どのような仕組みで提供するか(オペレーションの最適化)

つまり、「もっと売る」ではなく「賢く売る」という思考への転換です。

片山直之氏の経営哲学

👨‍💼 片山直之氏とは

サンマルクカフェ創業者(1958年-2018年)。メディア露出を極力控えた「メディア嫌いの天才経営者」として知られる。独自の経営哲学により、激戦のコーヒーチェーン市場で差別化に成功。2018年に60歳で逝去した後も、その経営理念は継承され、V字回復を実現している。

「意表の喜び創造業」という事業定義

片山氏は自社の事業分野を「意表の喜び創造業」と規定していました。

「意表を突く」とは、相手の予想を超えるということ。つまり、顧客が予想もしていなかった価値を提供することを使命として定義していたのです。

🥐 「チョコクロ」という革命

2001年に誕生した「チョコクロ」は、この哲学の結晶です。コーヒーチェーンの主役が「コーヒー」であることは業界の常識でしたが、片山氏は「パン」という意外な主役を据えることで、独自のポジションを確立しました。

🏪 店内製造という差別化

スターバックスやドトールなど強力なプレイヤーが席捲する市場で、片山氏が選んだ差別化は「店内製造」。焼きたてパンの香りが店内に漂う—この体験価値は、他のチェーンでは提供できないものでした。

🤝 フランチャイズの常識を覆す仕組み

通常のフランチャイズでは、本部と加盟店の利害が対立します。しかし片山氏は「本部には売上に応じたロイヤリティしか入らない」システムを構築。これにより、本部は加盟店の成功に全力を尽くさざるを得なくなりました。近江商人の「三方よし」に通じる発想です。

思考型経営の5つの原則

片山氏の経営哲学と、30社以上の財務改善実績から導き出した「思考型経営の5つの原則」をご紹介します。

1
業界の常識に疑問を投げかける

「業界ではこれが当たり前」という思考停止が、差別化を阻む最大の敵です。片山氏はコーヒーチェーンの常識に挑戦し、「パン」を主役にしました。あなたの業界の「当たり前」は本当に正しいですか?

💡 実践ステップ
自社の事業を「○○業」ではなく、「顧客にとっての価値」で再定義してみましょう。片山氏は「飲食業」ではなく「意表の喜び創造業」と定義しました。
2
短期的利益より長期的な仕組みを重視する

フランチャイズの仕組みで、片山氏は目先の利益(加盟店に高く商品を売る)より、長期的な仕組み(売上連動のロイヤリティ)を選びました。この判断が、持続可能な成長を実現しました。

💡 実践ステップ
今期の利益を10%削っても、3年後に20%の利益増につながる投資は何か?を考えましょう。それが「知恵」です。
3
「効率」と「こだわり」を高次元で両立させる

片山氏は「店内製造」というこだわりを貫きながら、調理オペレーションを徹底的に効率化しました。矛盾する二つの要素を、より高い次元で統合する—これが思考力の証です。

💡 実践ステップ
「品質」と「コスト」など、相反すると思われる要素を書き出し、「どちらも実現する方法はないか?」と問い続けましょう。
4
思考法を継承する仕組みを作る

片山氏は「経営塾」を直轄で運営し、事業会社のトップになるには卒業が条件でした。これは単なる知識伝達ではなく、「考える人材」を育成する仕組みです。社長一人が考えるだけでは限界があります。

💡 実践ステップ
幹部に「正解」を教えるのではなく、「どう考えた?」と問いかける習慣をつけましょう。思考法の伝承が始まります。
5
市場を「追う」のではなく「創る」

競合を追いかけるのではなく、独自の市場を創造する。チョコクロは「ベーカリーカフェ」という新しいカテゴリーを生み出しました。市川伸一教授の認知心理学研究によると、人間は「既存の枠組み」で思考する傾向があります。その枠組み自体を変える勇気が必要です。

💡 実践ステップ
「当社は何業か?」ではなく「当社は顧客にどんな体験価値を提供しているか?」を問い直しましょう。

「頑張る経営」vs「考える経営」

30社以上の支援経験から見えてきた、「頑張る経営」と「考える経営」の決定的な違いをまとめます。

❌ 頑張る経営

  • 目標:売上拡大
  • 方法:営業量を増やす
  • 判断基準:「これまでの常識」
  • 競争:競合を追いかける
  • 利益:結果として出るもの
  • 組織:社長が考え、社員が動く
  • 時間軸:短期的成果重視

✅ 考える経営

  • 目標:利益最大化
  • 方法:仕組みを改善する
  • 判断基準:「本質的な価値」
  • 競争:独自の市場を創造
  • 利益:知恵の証明
  • 組織:全員が考え、動く
  • 時間軸:持続可能性重視

🎯 典型的な転換事例

製造業A社(年商3億円)の場合:

【改善前:頑張る経営】
• 営業担当者を3名から5名に増員
• 新規顧客開拓に注力
• 売上は120%に伸びたが、利益率は2%→1.5%に低下

【改善後:考える経営】
• 顧客を利益率で分析し、上位20%にフォーカス
• 標準化・マニュアル化で品質向上とコスト削減を両立
• 売上は前年並みだが、利益率は8%に向上

「もっと売る」から「賢く売る」への転換が、利益率を4倍にしました。

思考型経営への第一歩

「考える経営」に転換するために、今日からできる具体的なアクションをお伝えします。

✅ 今日から始める4つの質問

質問1:当社の「売上」と「利益」は何を示していますか?
売上が高くても利益が低いなら、「人気はあるが知恵が足りない」状態です。仕組み化・システム化の余地がないか見直しましょう。

質問2:当社の業界の「当たり前」は本当に正しいですか?
業界の常識を3つ書き出し、それぞれに「なぜ?」を5回繰り返してみましょう。常識が単なる思考停止だと気づくはずです。

質問3:当社は何業ですか?(顧客価値で答えてください)
「製造業」「サービス業」という答えではなく、「顧客にとって当社はどんな価値を提供しているか?」を言語化しましょう。

質問4:相反する要素を統合できませんか?
「品質かコストか」「スピードか丁寧さか」—二者択一で考えていることはありませんか?両立する方法を考え抜きましょう。

💪 コンサルタントの役割

私が経営コンサルタントとして提供するのは、「正解」ではなく「考える軸」です。

多くの社長は「すぐに・早く・簡単に・安く」できる魔法のような解決策を期待されます。しかし、片山氏のような0.001%の経営者が示してくれたように、真の経営力は「自ら考え抜く力」から生まれます。

短期的には遠回りに見えるかもしれませんが、長期的には圧倒的な差別化と持続可能な成長をもたらす唯一の道だと信じています。

まとめ:知恵を磨き続ける経営

片山直之氏が遺したもの

「売上は人気のバロメーター、利益は知恵のバロメーター」

この言葉は、単なる経営指標の話ではありません。それは「思考し続ける経営者」と「頑張るだけの経営者」を分ける決定的な視点なのです。

片山氏が2018年に60歳で逝去した後も、その経営理念は継承され、サンマルクはV字回復を実現しました。これは、片山氏の経営哲学が単なる個人的な能力ではなく、継承可能な思考法だったことを証明しています。

🌸 真の経営力とは

真の経営力は、安易な答えに飛びつくことなく、自らの頭で考え抜き、問題の枠組み自体を組み替える勇気にあります。

多くの社長は「正解」を求めます。しかし真に優れた社長は、こうした「既製品の答え」に安住することなく、自らの頭で考え抜く困難な道を選びます。

あなたは「すぐの正解」と「考える力」、どちらを選びますか?

片山氏のような思考型経営者への道は、決して平坦ではありません。しかし、その先に待っているのは、誰にも真似できない独自の価値創造と、持続可能な競争優位なのです。

💬 よくある質問

Q1. 売上を追わずに利益を追うとは、具体的にどういうことですか?

A. 「売上を追わない」とは「売上を無視する」ことではありません。すべての顧客・すべての商品に同じように注力するのではなく、利益率の高い顧客・商品にフォーカスするということです。30社以上の支援経験から、顧客上位20%が利益の80%を生み出しているケースが多いことがわかっています。全方位的な「頑張り」から、戦略的な「選択と集中」への転換が必要です。

Q2. 業界の常識に疑問を持つとは、具体的にどう実践すればいいですか?

A. まず、自社の業界で「当たり前」とされていることを3つ書き出してみましょう。そして、それぞれに「なぜそうなのか?」を5回繰り返します。市川伸一教授の認知心理学研究によると、人間は既存の枠組みで思考する傾向があります。「なぜ?」を繰り返すことで、常識が単なる思考停止に過ぎないことに気づくことができます。片山氏も「コーヒーチェーンの主役はコーヒー」という常識に疑問を持ち、パンを主役にしました。

Q3. 思考型経営に転換するには、どれくらいの時間がかかりますか?

A. 思考型経営への転換は、一朝一夕には実現しません。30社以上の支援経験から、最低でも6ヶ月、通常は1〜2年の継続的な取り組みが必要です。しかし、小さな成功体験は早期に得られます。例えば、顧客を利益率で分析し、上位20%にフォーカスするだけで、3ヶ月以内に利益率が改善するケースは多いです。重要なのは、「考える習慣」を身につけることです。

Q4. 社員に「考える」習慣をつけさせるにはどうすればいいですか?

A. 片山氏が「経営塾」を運営したように、思考法を組織に浸透させる仕組みが必要です。具体的には、社員に「正解」を教えるのではなく、「どう考えた?」と問いかける習慣をつけましょう。また、失敗を許容する文化も重要です。近江商人の「三方よし」の精神に基づき、社員の成長が会社の成長につながることを明確に示すことで、内発的動機が生まれます。

Q5. 「効率」と「こだわり」を両立させるのは理想論ではありませんか?

A. 一見矛盾する要素の両立は、確かに容易ではありません。しかし、片山氏は「店内製造」というこだわりと「オペレーションの効率化」を実際に両立させました。鍵は、「どちらか一方を選ぶ」のではなく、「両方を実現する方法はないか?」と問い続けることです。30社以上の支援経験から、この問いを諦めずに考え抜いた企業だけが、真の差別化を実現しています。安易な妥協ではなく、高次元での統合を目指しましょう。

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💡 思考型経営の学習ガイド:この記事で紹介した思考型経営の原則を実践するには、財務の基礎知識も重要です。特に「売上があるのにお金がない理由」と「経常運転資金の削減方法」は、利益と資金の関係を理解する上で必読です。

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