「事業計画を作ろうとすると、何から始めればいいか分からない」
前回の記事「孫子が説く『算なき経営』の末路」では、事業計画の重要性をお伝えしました。多くの経営者から「事業計画が必要なのは分かった。でも、具体的にどう作ればいいのか?」というご質問をいただきました。
実は、この疑問に対する答えも、2500年前の中国古典『孫子』が「五事七計」という形で明確に示しています。孫子は「戦う前に何を検討すべきか」を体系化し、それに基づいて「勝算」を計算する方法論を確立しました。
30社以上の事業計画作成を支援してきた経験から、この「五事七計」こそが、現代の事業計画作成における最も実践的なフレームワークであることが分かっています。
多くの経営者が陥る罠は、いきなり「売上目標」や「利益目標」から考え始めることです。これでは根拠のない数字の羅列になり、「絵に描いた餅」になってしまいます。
古典的叡智である「五事七計」は、経営の本質的な要素を漏れなく検討し、それに基づいて現実的な戦略を立てるための完璧な枠組みなのです。
財務を軸とした経営コンサルタントとして30社以上の事業計画作成を支援してきた経験と、古典の叡智を現代経営に応用する「収益満開経営」の視点から、実践的な事業計画の立て方を解説します。
「五事七計」は、単なる古典の理論ではありません。現代の経営戦略論(マイケル・ポーターの競争戦略、SWOT分析など)の原型であり、2500年の時を経ても色褪せない普遍的な戦略思考の体系です。
この記事を読むことで、以下の具体的な価値を得られます:
1. 古典的フレームワーク「五事七計」の本質と、現代経営への応用方法が理解できる
2. 一倉定氏の社長学と古典的戦略論の共通点が分かる
3. 「収益満開経営」における戦略的事業計画の立て方が学べる
4. 今日から使える、具体的なチェックリストが手に入る
理化学研究所の研究により、戦略的思考力は4ヶ月の正しい訓練で習得可能であることが証明されています。2500年の叡智を、あなたの経営に活かしてください。
本記事は、前回の「算なき経営の末路」の続編として、より実践的な内容になっています。まだ前回の記事をお読みでない方は、先にそちらをご覧いただくことをお勧めします。
2500年前の中国古典『孫子』始計篇には、「算」(勝算の計算)の前提として、「五事」と「七計」を検討せよと記されています。
現代語に訳せば、「戦争の勝敗を予測するには、五つの要素(五事)を検討し、七つの視点(七計)で敵味方を比較分析せよ」という意味です。
五事とは: 道(理念・大義)、天(タイミング・外部環境)、地(市場・競争環境)、将(リーダーシップ)、法(仕組み・体制)
七計とは: 上記の五事に加え、兵(人材の質と量)、賞罰(評価制度)の7項目について、自社と競合を比較分析する方法論
この古典的フレームワークの天才的な点は、単なるチェックリストではなく、優先順位が明確な体系になっていることです。
最も重要なのは「道」(理念・大義)です。次に「天」(タイミング)、「地」(市場)と続きます。多くの経営者が陥る間違いは、「法」(仕組み・制度)や「兵」(人員配置)から考え始めることです。
経営の本質的要素(五事)
競合比較の視点(七計)
色褪せない戦略思考の体系
現代の経営戦略論で言えば、SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)やマイケル・ポーターの競争戦略(コスト・差別化・集中)の原型がすべてこの「五事七計」に含まれています。
この体系が2500年前に確立されていたという事実は、驚異的としか言いようがありません。そして、この普遍性こそが、現代の事業計画作成にも完璧に応用できる理由なのです。
古典的フレームワークの「五事」を、現代の事業計画作成に応用する方法を詳しく解説します。
古典では「道とは、民をして上と意を同じくせしむる者なり」と説きます。現代風に言えば、「経営理念を社員と共有し、同じ方向を向かせること」です。
事業計画での実践: 「なぜこの事業をやるのか?」「誰を幸せにするのか?」を明文化します。渋沢栄一の「論語とそろばん」で言えば、「論語」(道徳・理念)の部分です。
私が支援したある製造業では、社長が「この技術で地域の雇用を守る」という理念を明確にしたところ、社員の離職率が半減しました。理念が明確な会社は、困難な時期でも組織が一つにまとまります。
チェックポイント:
・経営理念が明文化されているか?
・社員がその理念を理解し、共感しているか?
・日々の意思決定が理念に基づいているか?
古典では「天とは、陰陽・寒暑・時制なり」と説きます。戦争では天候や季節が勝敗を左右します。経営では、経済環境、技術トレンド、法規制などの「タイミング」が該当します。
事業計画での実践: PEST分析(政治・経済・社会・技術)を行い、外部環境の変化を予測します。「今がチャンスか?」「待つべきか?」の判断基準を明確にします。
例えば、2020年のコロナ禍でオンライン化が一気に進みました。この「天」の変化に素早く対応できた企業は成長し、対応が遅れた企業は苦境に陥りました。
チェックポイント:
・業界のトレンドを把握しているか?
・法規制の変化を予測しているか?
・技術革新の影響を考慮しているか?
古典では「地とは、遠近・険易・広狭・死生なり」と説きます。戦場の地形が戦術を決定します。経営では、市場の規模、競合の状況、参入障壁などが該当します。
事業計画での実践: 3C分析(顧客・競合・自社)を行い、「戦うべき市場」を明確にします。マイケル・ポーターの言う「ポジショニング」の決定です。
私が支援したある小売業では、大手との価格競争を避け、「高齢者向けの配送サービス」というニッチ市場に特化することで、高収益を実現しました。
チェックポイント:
・ターゲット市場が明確か?
・競合との差別化ポイントは?
・市場規模は十分か?
古典では「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」と説きます。優れた将軍の条件として、知恵、信頼、思いやり、勇気、厳格さの5つを挙げています。
事業計画での実践: 経営者自身と幹部社員の能力を客観的に評価します。不足している能力は、採用や教育で補強する計画を立てます。
一倉定氏も社長学で「経営は社長の器以上にはならない」と説いています。事業計画を実行できる「人的資源」が揃っているかの確認が不可欠です。
チェックポイント:
・経営者は戦略を立案できるか?
・幹部は実行を任せられるか?
・不足する能力をどう補うか?
古典では「法とは、曲制・官道・主用なり」と説きます。組織の編成、指揮系統、物資管理などの「仕組み」です。
事業計画での実践: 組織図、業務フロー、会計制度、人事評価制度などを整備します。特に重要なのは、月次決算の体制です。
収益満開経営では、「月次で計画と実績を比較し、素早く軌道修正する仕組み」を最重視します。この「法」が整っていない会社は、どんなに良い戦略を立てても実行できません。
チェックポイント:
・組織図は明確か?
・月次決算は15日以内に出るか?
・評価制度は機能しているか?
「五事」で自社の状況を整理したら、次は「七計」で競合と比較分析します。
古典では以下の7項目で、自社と競合を比較せよと説きます:
現代の事業計画での実践:
この「七計」は、現代の競合分析そのものです。SWOT分析で「強み・弱み」を分析する際の具体的なチェックリストとして活用できます。
| 七計の項目 | 現代の経営要素 | 分析ポイント |
|---|---|---|
| 主孰れか有道 | 経営理念・ビジョン | 社員の共感度、離職率 |
| 将孰れか有能 | 経営者の能力 | 戦略立案力、実行力 |
| 天地孰れか得たる | 市場機会の把握 | トレンド対応、市場シェア |
| 法令孰れか行わる | 組織体制・仕組み | 月次決算、PDCA |
| 兵衆孰れか強き | 人材の質と量 | 採用力、人員配置 |
| 士卒孰れか練いたる | 社員教育 | 研修制度、スキル向上 |
| 賞罰孰れか明らかなる | 評価制度 | 人事評価の透明性 |
重要なのは、「競合より劣っている項目」を明確に認識することです。古典では「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と説きます。自社の弱点を正直に認め、それを事業計画で補強する戦略を立てるのです。
私が支援したある小売業では、「主孰れか有道」(経営理念)と「賞罰孰れか明らかなる」(評価制度)で大手に劣ると判断しました。そこで、経営理念の再定義と人事評価制度の刷新を事業計画の最優先項目に据えた結果、1年後に離職率が40%減少し、生産性が大幅に向上しました。
一倉定氏の社長学と古典的フレームワーク「五事七計」には、驚くべき共通点があります。
一倉氏は著書『社長の姿勢』で、社長が最初に取り組むべきこととして以下を挙げています:
一倉氏も古典も、「理念」を最優先しています。そして、「仕組み」は最後です。
多くの経営者は、経営理念が曖昧なまま、いきなり「組織図を作ろう」「評価制度を整えよう」と「法」(仕組み)から着手します。しかし、これでは組織は機能しません。
一倉氏は「社長の仕事は、社長にしかできないこと、すなわち経営理念の確立と戦略の立案である」と説きます。
これは古典の「将は国の輔(たす)けなり。輔、周なれば則ち国必ず強し」という思想と完全に一致します。リーダーの最も重要な役割は、「道」(理念)を示し、「天地」(環境)を読み、勝てる戦略を立てることなのです。
現代の「収益満開経営」でも、社長の最優先業務は「理念の浸透」と「戦略立案」と位置づけています。日々の業務に追われて、この本質的な仕事ができていない社長は、一倉氏に言わせれば「社長失格」です。
それでは、「収益満開経営」の視点で、古典的フレームワークを実際の事業計画作成にどう活用するかを解説します。
ステップ1:五事の現状診断(所要時間:2時間)
まず、五事それぞれについて、自社の現状を5段階で評価します:
– 道(理念):5=明文化され浸透 / 1=曖昧で共有されていない
– 天(環境):5=トレンドを完全把握 / 1=全く把握していない
– 地(市場):5=明確に定義 / 1=不明確
– 将(リーダー):5=戦略立案と実行力あり / 1=どちらも弱い
– 法(仕組み):5=PDCAが回る / 1=月次決算もない
ステップ2:七計による競合比較(所要時間:3時間)
主要競合3社と自社を、七計の各項目で比較します。5段階評価で、競合より劣っている項目を特定します。
ステップ3:優先課題の設定(所要時間:1時間)
五事の評価が低い項目、七計で競合に劣る項目を「優先課題」に設定します。ここで重要なのは、古典の優先順位に従うことです:
1. 最優先:「道」(理念) – これが不明確なら、まずここから着手
2. 次に重要:「天」「地」 – 外部環境と市場の分析
3. その次:「将」 – リーダーシップの強化
4. 最後:「法」 – 仕組みの整備
多くの経営者は「法」(仕組み)から着手しますが、それでは失敗します。家を建てる時、土台(理念)がないのに内装(仕組み)から始めるようなものです。
ステップ4:具体的アクションプランの策定(所要時間:2時間)
優先課題それぞれについて、具体的な改善策を立案します:
診断結果:
– 道(理念):2/5 → 社員が理念を知らない
– 天(環境):4/5 → 業界トレンドは把握
– 地(市場):3/5 → ターゲットが不明確
– 将(リーダー):4/5 → 社長は優秀だが幹部が弱い
– 法(仕組み):2/5 → 月次決算が2ヶ月遅れ
優先課題と対策:
【最優先】道(理念)の確立
– アクション:3ヶ月かけて経営理念を再定義
– 方法:社員アンケート、幹部ワークショップ
– 目標:全社員が理念を暗唱できる状態
【次】地(市場)の明確化
– アクション:ターゲット顧客を「年商5億円以上の製造業」に絞る
– 方法:既存顧客の収益性分析
– 目標:新規営業の無駄打ちを50%削減
【その次】法(仕組み)の整備
– アクション:経理担当を増員し、月次決算を10日以内に
– 方法:会計ソフトの刷新と業務フロー見直し
– 目標:毎月15日に前月実績を社内共有
成果(1年後):
– 売上:前年比120%(無駄な営業削減で効率化)
– 営業利益率:5% → 8%に改善
– 社員満足度:大幅向上(理念浸透により)
– 現預金:月商の1ヶ月分 → 3ヶ月分に増加
この事例が示すように、古典的フレームワークを使えば、「何をすべきか」が明確になり、優先順位も自然と決まります。
最後に、実際に事業計画を作成する際に使える、具体的なチェックリストを提供します。
【道】経営理念
□ 経営理念が明文化されている
□ 社員全員が理念を知っている
□ 理念が日々の意思決定に反映されている
□ 理念に共感する社員が多い
□ 採用時に理念への共感を確認している
【天】外部環境
□ 業界の成長率・縮小率を把握している
□ 技術トレンドの変化を予測している
□ 法規制の変更を把握している
□ 経済環境の影響を分析している
□ 社会トレンド(SDGsなど)に対応している
【地】市場・競争環境
□ ターゲット市場が明確に定義されている
□ 市場規模と成長性を把握している
□ 主要競合3社を特定している
□ 自社の差別化ポイントが明確
□ 顧客から選ばれる理由を説明できる
【将】リーダーシップ
□ 社長は戦略立案ができる
□ 幹部は実行を任せられる
□ 次世代リーダーが育っている
□ 社長の時間の50%以上を戦略に使える
□ 幹部会議が機能している
【法】仕組み・体制
□ 組織図が明確で役割分担ができている
□ 月次決算が15日以内に出る
□ 計画と実績を毎月比較している
□ 人事評価制度が整備されている
□ 業務マニュアルが整備されている
以下の各項目について、自社を5点満点で評価し、主要競合3社と比較してください:
□ 主孰れか有道: 経営理念の明確さと浸透度
□ 将孰れか有能: 経営者と幹部の能力
□ 天地孰れか得たる: タイミングと市場の把握
□ 法令孰れか行わる: 組織の機能度
□ 兵衆孰れか強き: 人材の質と量
□ 士卒孰れか練いたる: 社員教育の充実度
□ 賞罰孰れか明らかなる: 評価制度の明確さ
判定基準:
– 5項目以上で競合に勝っている → 優位性あり
– 3-4項目で拮抗 → 要改善
– 2項目以下 → 緊急改善が必要
五事七計のチェックリストで課題が明確になったら、以下の順序で改善を進めてください:
第1ヶ月:【道】理念の再確認と明文化
– Week1: 現状の経営理念を言語化
– Week2: 社員アンケートで理念の浸透度を測定
– Week3: 幹部ワークショップで理念を再定義
– Week4: 全社員に理念を発表し、共有
第2ヶ月:【天】【地】環境分析と市場戦略
– Week5-6: PEST分析で外部環境を整理
– Week7-8: 3C分析でターゲット市場を明確化
第3ヶ月:【将】【法】体制強化
– Week9-10: 幹部の役割を再定義
– Week11-12: 月次決算と報告の仕組みを構築
重要: この順序を入れ替えてはいけません。「道」→「天地」→「将法」の優先順位は、2500年前に確立された鉄則です。
2500年前に確立された「五事七計」は、完璧な戦略フレームワークです。これを現代の事業計画作成に応用することで、「絵に描いた餅」ではない、実行可能で勝算のある計画を立てることができます。
一倉定氏の社長学も、古典的フレームワークと本質的に同じことを説いています。「理念」が最優先であり、「仕組み」は最後。この順序を間違えると、どんなに精緻な計画を立てても失敗します。
収益満開経営では、古典の叡智と現代財務理論を融合させ、「利益と現金を最大化する戦略的事業計画」の作成を支援しています。
理化学研究所の研究により、戦略的思考力は4ヶ月の正しい訓練で習得可能です。あなたも今日から、古典的フレームワーク「五事七計」を活用して、「算多き経営」を実践してください。
次回の記事では、五事七計に基づいた具体的な事業計画書の作成方法を、テンプレートとともに詳しく解説します。
あなたの状況に合わせて、最適な方法を選んでください
「いきなり相談はハードルが高い」という方へ。週2回のメルマガで段階的に財務力を習得できます。
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古典では「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と説きました。
まずは「己を知る」(自社診断)から始めましょう。
💡 推奨学習順序: 前回の「算なき経営の末路」で事業計画の重要性を理解し、本記事で「五事七計」の具体的フレームワークを学び、次は「事業計画書作成10ステップ完全ガイド」で実践してください。
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