「今の売上では先が見えない。でも廃業するとなると、従業員のことや取引先のことが頭をよぎって、決断できない……」
収益満開経営の長瀬好征です。こうしたご相談を受けることが、近年急速に増えています。2025年、全国で6万7,949社が市場から静かに退出しました。倒産(法的整理)ではなく、特段の手続きなく事業を畳む「休廃業・解散」という形で。そのうち49.1%——半数近くが、黒字のまま事業を終えていました。
帝国データバンクの2025年確定調査によると、2025年に全国で休業・廃業・解散した企業は6万7,949件でした。前年(6万9,019件)からわずか1.6%の減少にとどまり、過去10年では2024年に次いで2番目に多い水準です。
倒産(法的整理)と休廃業を合わせると、2025年は年間約8万社が市場から退出した計算になります。1日あたり約220社です。これは単なる統計ではなく、それぞれの会社に社長がいて、従業員がいて、取引先があったという現実です。
2025年 休廃業・解散件数
(帝国データバンク調査)
黒字のまま廃業した企業の割合
(初めて50%を下回った)
資産超過(財務健全)のまま廃業
した企業の割合
廃業企業の正社員数(2025年)
過去最多を更新
注目すべき変化:2025年の黒字廃業率は49.1%と、調査開始(2016年)以来初めて50%を下回りました。これは「余力があるうちに畳む」円満廃業が減少し、コスト高や収益悪化を背景に「追い詰められた廃業」が増えている実態を示しています。物価高・人件費上昇・金利上昇という複合要因が、中小企業の体力を急速に蝕んでいます。
2025年の廃業・解散時における社長の平均年齢は70代で推移し、70代・80代以上が全体の70%近くを占めます。中小企業庁の試算によれば、2025年時点で70歳以上の中小企業の社長は約245万人に達し、そのうち約127万人が後継者未定の状態です。
これらすべてが廃業・倒産に至った場合、約650万人の雇用が失われ、22兆円のGDPが消失すると試算されています。後継者問題は個社の問題にとどまらず、日本経済全体の構造問題です。
これらが同時多発的に企業を圧迫した結果、「現在は黒字でも、このコスト構造が続けば3年後は持たない」と判断する社長が増えています。追い詰められてからではなく、体力があるうちに決断する——それが「静かな退場」の実態です。
2025年の廃業企業のうち、資本金1,000万円未満の企業が全体の53.5%超を占めました。コロナ禍前の2019年(44%)を大きく上回る水準で、日本経済の底辺を支える零細・小規模企業の「静かな退場」が加速していることを示しています。
帝国データバンクは、2026年について「人手不足の解消や後継者の選定といった既存課題に加え、利上げによる借入金の利払い負担増といった局面に直面する」と分析しています。特に中小零細企業を中心に、「静かな退場」がさらに増加する可能性を明示しています。
こうした状況を受け、国・公的機関はさまざまな支援策を整備してきました。「廃業=終わり」ではなく、次世代へのバトンタッチとして事業を活かす道を探ることを政策的に後押ししています。知らないまま廃業を決断することは、社会的にも非常にもったいないことです。
中小企業庁が全国47都道府県に設置した、事業承継の公的相談窓口です。親族内承継・従業員承継・M&Aによる第三者承継など、あらゆる承継形態に対応します。
※廃業を検討する前に、まず相談することを強く推奨します
事業承継やM&Aに際して必要な設備投資・経営資源の引継ぎ・統合を支援する補助金です。令和7年度から「事業承継・引継ぎ補助金」から名称変更し、内容が拡充されました。
後継者が決まっている場合に活用できる税制優遇措置です。通常であれば半額程度負担しなければならない相続税・贈与税が、一定の要件のもとで猶予・免除されます。
商工会・商工会議所・金融機関が窓口となり、事業承継の課題診断や専門家派遣を行います。「まだ廃業を考えてはいないが、将来のことが不安」という段階から利用できる、ハードルの低い相談窓口です。
こうした支援を早期に活用することで、後継者探しの選択肢が広がります。60歳以下の段階で動き始めることが、事業継続の可能性を大きく高めます。
財務コンサルタントとしての現場感覚:中小企業の支援を続けてきて感じるのは、「支援制度があることを知らなかった」という社長の多さです。廃業を決断する前に、事業承継・引継ぎ支援センターに一度相談するだけで、思いもしなかった選択肢が開けることがあります。まず情報を持つことが、最初の一歩です。
「もう限界だ」と感じたとき、実は廃業以外の道が残されていることがあります。社長として、従業員・取引先・地域への責任を果たすためにも、以下の5つを検討してから決断することを推奨します。
收益満開経営において、私が一貫してお伝えしていることがあります。「判断の先送りは、最も危険な経営判断だ」ということです。
2025年の廃業統計が示すように、黒字でも廃業を選ぶ企業が増えています。それは「今は大丈夫だが、このまま続ければ3年後には限界が来る」という合理的な判断です。問題は、その判断ができずに先送りし、本当に限界になってから動くことです。
「分度を守り、勤勉に励めば、必ず家は繁栄する」——二宮尊徳
「分度」とは身の丈に合った経営規模を守ることです。現代風に言えば、自社の財務実態を正確に把握し、継続可能な規模で経営を続けること。それが崩れたとき、次の判断が求められます。
収益満開経営で推奨する「今すぐ実践すべき3つのアクション」をお伝えします。
2025年に6万7,949社が市場から退出しました。その一つひとつに、創業者の夢と、従業員の人生と、地域への貢献がありました。
廃業そのものが悪いのではありません。問題は、「本当は続けられたのに、選択肢を知らないまま廃業した」というケースです。今の日本には、それを防ぐための公的支援が整いつつあります。
「和魂洋才」——日本の伝統的な経営哲学と現代の科学的アプローチを融合させた収益満開経営が目指すのは、個々の企業が本質的な経営力を身につけ、持続可能な形で社会に貢献し続けることです。2200年の日本に繁栄を残すとは、今日の一社一社が、正しい判断をし続けることから始まります。
廃業を考えているすべての社長へ
決断を急がないでください。まず数字を正確に把握し、公的支援を調べ、信頼できる専門家に相談してください。それでも廃業が最善と判断したなら、それは正しい経営判断です。しかし、その前にできることが、まだあるかもしれません。
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