月次試算表で経営の実態を見抜く7つのチェックポイント|社長が毎月計算したい数字
「先月の試算表を、今すぐ見せていただけますか?」
こう聞かれたとき、何分で出せるでしょうか。「税理士に聞いてみます」「1週間ください」という答えになるなら、会社の今の姿を、社長自身がつかめていない可能性があります。
結論から申し上げます。経営の実態は、決算書を見る前に「月次試算表をすぐ出せるか」「その数字を自分の言葉で説明できるか」に表れます。試算表をつくるのは税理士の仕事ですが、それを読み、判断に使うのは社長の仕事です。
収益満開経営の長瀬好征です。財務を軸とした経営コンサルタントとして、30社以上の資金繰り改善を支援してきました。ご相談の最初に試算表をお願いすると、その出てくる速さと、社長の説明の仕方で、会社の数字との向き合い方がおおよそわかります。
⚠️ こんな答えになっていませんか
- 「月次試算表を見せて」→「税理士に聞いてみます」
- 「売掛金の一覧はありますか?」→「どこにあるかわからない」
- 「在庫の管理表は?」→「だいたいの感覚で…」
- 「資金繰り表は?」→「作ったことがありません」
- 「銀行借入の一覧表は?」→「複数の担当者に確認しないと…」
一つでも当てはまるなら、「なんとかなるだろう経営」に入りかけているかもしれません。
この記事では、次のことをお伝えします。
- 試算表への対応の速さが、経営の実態を映す理由
- 試算表を見る習慣が身につかない理由(コッターの変革の8段階)
- 月次試算表で確かめる7つのチェックポイント
- 試算表1枚から5分で計算できる数字(計算例つき)
- 今日から始める順番と、税理士との役割分担
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なぜ月次試算表への対応の速さで、経営の実態がわかるのか?
試算表がすぐ出てくる会社は、社長が日頃から数字を見ているからです。逆に、出てくるまでに時間がかかる会社では、数字が「税理士のところにあるもの」になっていて、経営の判断に使われていません。
「試算表は税理士に任せている」という言葉には、2つの意味があります。一つは「作成の作業を委託している」という、まっとうな役割分担です。もう一つは「内容を把握する責任まで手放している」という、危うい依存の状態です。この2つが混ざっていることが、社長が経営の実態を見失う根本の原因です。
試算表は、会社の健康診断書のようなものです。診断書を受け取っても封を開けなければ、体の異変には気づけません。売上が好調に見えても、利益やお金の動きを毎月確かめていなければ、手元の資金が細っていることに気づくのは、支払いが迫ってからになります。
試算表の利益と通帳の残高が合わない理由は、こちらで解説しています。
📖 試算表と通帳が一致しない理由を完全解説 →
試算表を見る習慣は、なぜなかなか身につかないのか?
「なぜ変えなければならないのか」を、社長自身が切実に感じていないからです。「試算表をすぐ見られるようにしましょう」と助言しても、すぐに動ける社長は多くありません。
ハーバード・ビジネス・スクールのジョン・P・コッターは、著書『Leading Change(邦題:企業変革力)』で、変革を進める8つの段階を示しました。その第1段階は「危機意識を高める」ことです。コッターは、変革がうまくいかない大きな理由の一つとして、この危機意識が十分に高まらないまま先へ進もうとすることを挙げています。
試算表を見る習慣も同じです。「見たほうがいい」と頭でわかっていても、見ないことで何を失っているかを実感しなければ、習慣は変わりません。次の7つのチェックポイントと、そこから計算する数字は、この危機意識を自分の会社の数字で測るための道具として使えます。
月次試算表で確かめる7つのチェックポイントとは?
試算表の準備時間、売掛金・買掛金、在庫、資金繰り表、借入金、固定費、数字の共有——この7つです。それぞれ「危険なサイン」と「安全な状態」を並べました。
得意先別・経過日数別に売掛金を確かめる方法は、こちらで詳しく取り上げています。
📖 売掛金回収が遅れる会社の5つの共通点|近江商人の「帳合」に学ぶ経営者の実態把握術 →
試算表1枚から、社長は何を計算すればよいのか?
回収・在庫・手元資金・借入・固定費の5つを、月商や粗利と比べた「日数」や「倍率」にして、毎月の変化を追うことです。金額のままでは会社の規模で印象が変わりますが、日数や倍率にすると、前の月や前の年との比較がしやすくなります。どれも試算表1枚と電卓があれば、5分ほどで計算できます。
月商2,000万円、粗利率30%の会社を例に計算してみます。
| 数字 | 計算式 | 計算例 | 何がわかるか |
|---|---|---|---|
| 売掛金の回収日数 | 売掛金残高÷月商×30 | 3,000万円÷2,000万円×30=45日 | 売上が現金になるまでの日数。延びていれば回収の遅れ |
| 在庫日数 | 在庫÷月の売上原価×30 | 2,100万円÷1,400万円×30=45日 | 仕入れたものが売れるまでの日数。延びていれば滞留 |
| 手元資金の月商倍率 | 現預金÷月商 | 2,500万円÷2,000万円=1.25か月分 | 売上が止まっても、何か月分の支払いに耐えられるか |
| 借入金の月商倍率 | 借入金残高÷月商 | 8,000万円÷2,000万円=4.0か月分 | 借入の重さ。上がり続けていれば返済の負担に注意 |
| 固定費の粗利に対する割合 | 月の販管費÷月の粗利 | 500万円÷600万円≒83% | 粗利のうち固定費に消える割合。100%を超えれば赤字 |
※月商2,000万円、売上原価は月1,400万円(粗利率30%)とした計算例です。季節変動の大きい会社は、月商を直近3か月の平均にすると比較が安定します。
大切なのは、一度計算して終わりにしないことです。同じ計算を毎月続け、前の月・前の年の同じ月と比べることで、数字の向きが見えてきます。たとえば回収日数が45日から55日に延びていれば、月商2,000万円の会社では、およそ670万円(2,000万円×10日÷30)が余分に売掛金として寝ている計算になります。試算表の「利益」だけを見ていては、この変化には気づけません。
この5つの数字は、チェックポイントの2〜6番に対応しています。数字が出せない項目があれば、それがまさに「把握できていない」項目です。
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📊 チェックシートを無料で受け取る稲盛和夫の「ガラス張り経営」は、数字の共有について何を教えているのか?
経営の数字は社長だけのものではなく、社員と共有してこそ、全員が同じ方向に動けるということです。
京セラの創業者・稲盛和夫氏は、著書『稲盛和夫の実学——経営と会計』で、経営のための会計の原則の一つとして「ガラス張り経営」を挙げています。会社の数字を透明にし、社員が会社の状態を正しく知ることで、経営者と社員の信頼関係が生まれ、全員が経営に参加する意識が育つ、という考え方です。
中小企業で、すべての数字をすぐに全社員に公開する必要はありません。しかし、幹部と共有する数字を決めることはすぐにできます。前の章の5つの数字のうち、営業部門には回収日数を、製造・購買部門には在庫日数を、毎月の会議で一緒に見る。それだけで、社員は「自分の仕事が会社のお金にどうつながっているか」を考えるようになります。
コッターの変革の8段階でも、第4段階に「ビジョンを周知徹底する」ことが置かれています。目指す姿を言葉で伝えるだけでなく、毎月の数字で「今どこにいるか」を共有することが、変革を組織に根づかせる土台になります。
月次の数字を「いつ見るか」が経営をどう変えるかは、稲盛和夫の歩みから掘り下げています。
📖 社長、月次決算を翌月に見ていませんか——稲盛和夫が「過去の数字はいらない」と気づいた日 →
今日から、何をどの順番で始めればよいのか?
まず今日中に「今ある資料」を確かめ、1週間以内に「誰が・いつ更新するか」を決め、翌月から5つの数字の計算を始める——この順番です。
【今日中に】今ある資料を確かめる
- 月次試算表:最新の月の分がすぐ出せるか
- 売掛金の一覧:得意先ごとの残高と回収予定がわかるか
- 在庫の一覧:数量と金額が試算表と合っているか
- 借入金の一覧:銀行別の残高・返済予定がわかるか
- 固定費の一覧:契約ごとの支払額がわかるか
【1週間以内に】更新の仕組みを決める
- 担当者:各資料を誰が更新するかを決める
- 時期:試算表が届く日と、社長が確認する日を決める
- 共有:どの数字を、どの幹部と、どの会議で見るかを決める
- 税理士との役割分担:記録と試算表の作成は税理士、読み取りと判断は社長、と分ける
📝 まとめ:試算表を「受け取る」社長から「読む」社長へ
- 経営の実態は、決算書より先に「試算表への対応の速さ」と「説明の仕方」に表れる
- 7つのチェックポイントで、把握できていない項目がわかる
- 試算表1枚から、回収日数・在庫日数・手元資金・借入・固定費の5つの数字を毎月計算し、変化を追う
- コッターが示すように、行動を変える出発点は、自社の数字で危機意識を持つこと
- 稲盛和夫の「ガラス張り経営」のように、数字を幹部と共有して初めて組織が動く
今すぐできる一歩:直近の試算表を開き、売掛金の回収日数(売掛金残高÷月商×30)を計算して、前年の同じ月と比べてみてください。
❓ よくある質問
月ごとの取引を集計し、その月末時点の損益と財産の状態をまとめた表です。決算書が1年に1回の成績表だとすれば、月次試算表は毎月の健康診断書にあたります。作成は税理士に委託できますが、読み取って判断に使うのは社長の役割です。
遅くとも翌月の半ばまでに手元にある状態を目指します。届くのが遅いほど、古い会社の姿を見て判断することになります。税理士と相談し、資料を渡す日と試算表が届く日を決めておくと安定します。
利益に加えて、売掛金の回収日数、在庫日数、手元資金の月商倍率、借入金の月商倍率、固定費の粗利に対する割合の5つを計算し、前の月や前年同月と比べることをお勧めします。金額より日数や倍率にすると、変化に気づきやすくなります。
作成の作業を委託すること自体は、まっとうな役割分担です。問題は、内容を把握する責任まで手放してしまうことです。記録と作成は税理士、読み取りと判断は社長と分けて考えます。
すべてを一度に公開する必要はありません。まずは幹部と共有する数字を決め、営業部門とは回収日数、製造・購買部門とは在庫日数など、各部門の仕事とつながる数字を毎月の会議で一緒に見ることから始めます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の経営判断の推奨を目的とするものではありません。計算例は考え方を示すための簡便なものです。
※本稿は長瀬好征の実務経験をもとに、AIを構成・編集のパートナーとして活用し作成しました。記事中の計算例は、考え方を示すための例です。
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