2024年2月、私は内閣府が発表したあるレポートを読んで、背筋が凍りつきました。
「コロナ禍を経た企業の倒産・起業の動向」——このレポートが明らかにした事実は、私がこれまで30社以上の中小企業を支援してきた中で感じていた違和感を、完璧に裏付けるものでした。
コロナで倒産した企業の多くは、実は**「倒産の9年前から赤字転落していた」**のです。
つまり、コロナは単なる「とどめの一撃」に過ぎず、真の原因は長期間にわたる構造的な経営問題だったのです。
内閣府の約300社・10年間の詳細分析が証明:コロナ破綻企業の多くは、破綻の9年前から赤字体質が継続していました。コロナは単なるきっかけに過ぎず、真因は長期間にわたる構造的な経営問題でした。
2024年2月、内閣府が発表した公式レポートは、従来のコロナ破綻に関する認識を根本から覆しました。約300社のコロナ破綻企業を10年間にわたって詳細に分析した結果、衝撃的な事実が明らかになったのです。
多くの社長が「コロナによる突発的な倒産」と考えていたコロナ破綻の実態は、まったく異なるものでした。調査結果によると、コロナ破綻企業の多くは「破綻の9年前の時点で既に赤字転落していた」ことが判明しました。
この分析は、コロナ破綻が突発的な外的要因による倒産ではなく、長期間にわたる構造的な経営問題の結果であることを明確に証明しています。
さらに重要な発見は、コロナ前後での破綻企業の特徴の違いです。内閣府レポートは「コロナ禍後倒産企業は、コロナ禍前倒産企業に比べて利益率のより急速な低下がみられている」と明確に指摘しています。
この背景として、「世界的な物価上昇を起点とした、原材料など各種コストの増加等がコロナ破綻に影響するようになっている可能性」が挙げられています。つまり、コロナ破綻の真因は感染症そのものではなく、コスト増への対応力不足だったのです。
内閣府レポートが明らかにした10年間の業績不振パターンは、多くの中小企業の社長にとって他人事ではありません。破綻企業の財務状況を時系列で追跡すると、明確な悪化プロセスが見えてきます。
特に注目すべきは、利益率の段階的悪化パターンです。健全企業が営業利益率3%以上を維持する中、破綻企業は倒産5年前から継続的にマイナス利益率に陥っていました。
破綻5年前の営業利益率
平均的な業績不振期間
債務超過企業の増加率
この長期間の業績不振には、明確な経営上の課題が存在していました。内閣府の分析によると、破綻企業には以下の共通する特徴がありました。
第一に、戦略的経営能力の欠如です。多くの破綻企業の社長は5か年事業計画書を自分で作成できておらず、将来ビジョンの明確化ができていませんでした。これは単なる書類作成能力の問題ではなく、経営戦略そのものの不在を意味します。
第二に、財務管理能力の不足です。資金繰り表を自分で作成・管理できない社長が多く、資金の流れを把握できていませんでした。これにより、危機の早期発見・対応が困難になっていたのです。
第三に、価格転嫁能力の不足です。原材料費や人件費の上昇を適切に売価に反映できず、利益率の悪化を止められませんでした。これは顧客との関係性や付加価値創造に関わる根本的な課題です。
内閣府レポートは、中小企業のコロナ破綻リスクが大企業を大幅に上回ることも明らかにしています。数値で見ると、その格差は想像以上に深刻です。
償還資源が3年連続マイナスの企業割合を見ると、中小企業では8%弱に達している一方、大・中堅企業では約2.5%に留まっています。これは中小企業の破綻リスクが大企業の約3倍以上に達していることを示しています。
内閣府公式レポートの詳細分析により、中小企業では「倒産の蓋然性が高い企業の割合は大中堅企業より高く、増加傾向」にあることが確認されています。
この背景には、経営資源の制約があります。中小企業では財務・経営の専門人材が不足しており、経営者一人が全ての判断を担わざるを得ない状況が多く見られます。
さらに、情報収集力の差も大きな要因です。大企業が複数の情報源から市場動向を把握する一方、中小企業では限られた情報に基づく判断を余儀なくされることが多いのです。
出典:内閣府政策統括官(経済財政分析担当)「コロナ禍を経た企業の倒産・起業の動向」2024年2月
しかし、すべての中小企業が同じリスクを抱えているわけではありません。内閣府レポートは、中小企業でも明確な差別化要因があることも示しています。
成功している中小企業の特徴として、社長の「学習能力」と「改善継続力」が挙げられます。具体的には、財務知識の継続的学習、経営手法の積極的導入、外部専門家との連携などです。
また、地域密着型の事業モデルを確立し、顧客との長期的な信頼関係を構築している企業は、コロナ禍でも安定した経営を維持できています。これは近江商人の「三方よし」の精神に通じる経営哲学の現代的実践といえるでしょう。
内閣府レポートの最も希望的な発見は、倒産後に事業再構築を図った企業の劇的な改善例です。これらの企業の成功パターンを分析することで、コロナ破綻を回避するための具体的な道筋が見えてきます。
事業再構築に成功した企業の財務改善は驚異的でした。倒産5年前の営業利益率1.2%から、再構築後は4.1%へと劇的に向上しています。これは単なる一時的な改善ではなく、構造的な経営力向上の結果です。
これらの成功企業に共通するのは、表面的な財務テクニックではなく、根本的な経営力の向上です。具体的には以下の能力を身につけています。
第一に、戦略的計画能力です。5か年事業計画書を自分で作成し、将来の収益性を数値で明確に示せるようになりました。これにより、銀行や取引先からの信頼回復が可能になったのです。
第二に、財務管理能力です。月次の資金繰り表を自分で作成・更新し、資金の流れを常時把握できるようになりました。これにより、早期の問題発見と迅速な対応が可能になりました。
第三に、価値創造能力です。単なるコスト削減ではなく、顧客価値の向上を通じた適正価格の実現を図りました。これにより、価格競争から脱却し、持続可能な収益構造を確立できたのです。
山田方谷が説いた「入りを量りて出を制す」の教えは、まさにこの成功パターンの核心を突いています。収入の範囲内で支出をコントロールするという基本原則を、現代的な財務管理手法で実現したのです。
成功企業の経営改善は、江戸時代の近江商人が説いた「愚鈍な進取」の精神と完全に一致しています。目先の流行やトレンドに飛びつく「機敏」ではなく、長期的判断で確実に前進する「愚鈍な進取」こそが、コロナ破綻回避の鍵なのです。
多くの社長がDXやAIなどの流行に踊らされる中、基本的な経営力(事業計画書作成能力、資金繰り管理能力)を重視した企業が生き残ったという事実は、古典の叡智の普遍性を証明しています。
内閣府レポートの分析結果は、「収益満開経営」の理念と完全に一致しています。表面的な財務テクニックではなく、根本的な経営力向上こそがコロナ破綻回避の確実な道筋なのです。
内閣府レポートの最も重要な提言は、「一部でも収益が見込める事業を持つ過剰債務企業について、業績不振になった場合、債権者が早期の段階で債務整理に応じて、事業再編や経営再建を進めることは、最終的な債権回収額の増加につながる」という点です。
しかし、この提言には重要な前提条件があります。それは「収益が見込める事業を持つ」ことです。これを実現するためには、5か年事業計画書を自分で作成し、将来性を明確に示せる真の経営者になることが不可欠なのです。
内閣府レポートの分析に基づく具体的行動計画:
内閣府レポートは、「賃金と物価の上昇が続く経済の中では、人件費も加えた各種コストの継続的な上昇を前提とする必要がある」と明確に指摘しています。
これは収益満開経営が一貫して主張してきた「外的支援依存からの脱却」の必要性を、政府が公式に認めたことを意味します。もはやコロナ融資のような外的支援に依存した延命は不可能です。
内的な経営力強化による自立的成長こそが、コロナ破綻回避の唯一の道なのです。この実現のために、古典の叡智と現代財務理論を融合した「収益満開経営」の手法が極めて有効であることが、内閣府の科学的分析によって証明されました。
📊 データ出典:内閣府政策統括官(経済財政分析担当)「コロナ禍を経た企業の倒産・起業の動向」(2024年2月発表)