最終更新日:2025年8月22日 公開日:2023年10月26日
多くの社長が「うちの会社の銀行借入はどのくらい可能か?」と疑問に思っています。しかし、銀行借入の限度額は申込前からほぼ決まっているのが現実です。この事実を理解することで、無駄な融資申込を避け、効果的な銀行借入戦略を立てることができます。銀行借入の核心となる「月商4ヶ月ルール」について、実際の統計データとともに財務専門家が詳しく解説します。銀行借入で失敗しないために、まずは基本的な仕組みを理解しましょう。
ほぼ全ての銀行が運転資金融資で適用している基準があります。それが「月商の4ヶ月程度」という銀行借入の上限です。これは銀行業界の暗黙のルールであり、どの銀行でも共通して使われている銀行借入の判断基準となっています。この銀行借入ルールを知らずに融資申込をしても、ほぼ確実に断られてしまいます。
例:月商1,000万円の会社 → 銀行借入限度額 約4,000万円
なぜ月商4ヶ月が銀行借入の基準なのでしょうか?これには明確な理由があります。運転資金による銀行借入が月商の4ヶ月を超えると、通常の事業活動からの返済がほぼ不可能になるからです。銀行は「貸したお金は必ず返してもらう」という前提で銀行借入を実行しているため、返済不可能な金額まで貸すことはありません。
銀行借入における月商4ヶ月ルールは、金融庁の指導のもと、多くの金融機関で採用されている実務的な基準です。このルールを理解することで、自社の銀行借入可能性を事前に把握できます。銀行借入の申込前に、まずは自社の現状を正確に把握することが重要です。
2025年最新の融資基準を理解するために、まず信用保証協会の保証実績データから、コロナ期間と現在の融資環境の違いを見てみましょう。全国信用保証協会連合会のデータによると、融資環境は明確に変化しています。
| 年度 | 保証承諾金額 | 前年度比 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 約12.8兆円 | – | コロナ前の通常基準 |
| 2020年度 | 約28.9兆円 | +125.8% | コロナ特別融資開始 |
| 2021年度 | 約19.7兆円 | -31.8% | コロナ融資継続 |
| 2022年度 | 約14.2兆円 | -27.9% | 通常基準への回帰開始 |
| 2023年度 | 約13.1兆円 | -7.7% | 通常基準に戻る |
| 2024年度 | 約12.9兆円 | -1.5% | 月商4ヶ月ルール復活 |
※全国信用保証協会連合会公表データより算出(概算値)
データが示す重要な事実:
2020年度の保証承諾金額は前年の2.3倍に急増しましたが、2024年度には2019年度(コロナ前)とほぼ同水準まで戻っています。これは、融資基準が完全に平常時に戻ったことを意味します。
保証承諾率(申込に対する承諾の割合)も大きく変化しています:
この統計データは、銀行借入における審査基準が2024年にはコロナ前の水準に完全に戻ったことを明確に示しています。つまり、現在の銀行借入は2019年以前の厳格な基準で行われているのです。
銀行借入における月商4ヶ月ルールは、単なる目安ではありません。これを超える銀行借入を行っている会社は、実際に経営が不安定になるケースが多く、銀行側も厳しい目で見るようになります。特に、複数の銀行借入を合計して月商の4ヶ月を超えている場合は、新規の銀行借入は極めて困難になります。
コロナ禍で実施された特別融資により、多くの社長が「赤字でも債務超過でも銀行借入ができる」「月商の6ヶ月以上でも融資を受けられる」という誤った銀行借入の認識を持ってしまいました。
特に2020年3月から7月頃までの銀行借入は、政府の「とにかく資金を供給する」という政策のもと、通常の銀行借入では考えられない条件で実行されました。しかし、これは異常事態への緊急対応であり、平常時の銀行借入基準ではありません。この時期の銀行借入事例を基準に考えることは非常に危険です。
よくある銀行借入の誤解例:
「知り合いの会社は債務超過でも〇千万円の銀行借入ができた。うちも同じように銀行借入ができるはず」
この考えは危険です。業種、規模、時期、経営状況など、全ての条件が異なる他社の銀行借入事例を自社に当てはめることはできません。銀行借入は個別の事情により大きく左右されるためです。
2023年5月にコロナが5類に変更され、銀行借入の基準は平常時に戻りました。前述の統計データが示すとおり、現在は月商4ヶ月ルールによる銀行借入基準が完全に復活しているのです。コロナ特別融資で月商の6ヶ月以上の銀行借入をしている会社は、業況が回復していない限り、新たな銀行借入申込は非常に困難な状況にあります。
現在の銀行借入環境では、過去のコロナ特別融資の実績は参考になりません。むしろ、その時期の銀行借入により返済負担が重くなっている会社は、追加の銀行借入が難しくなっているのが現実です。銀行借入を検討する際は、現在の基準で判断することが重要です。
運転資金借入総額 ÷ 月商 = ?ヶ月分
4ヶ月以内:健全 4-6ヶ月:要注意 6ヶ月超:危険
銀行借入の限度額を正確に計算するためには、まず運転資金と設備資金を明確に分ける必要があります。設備資金による銀行借入は、設備の償却期間に応じて長期返済が可能ですが、運転資金による銀行借入は短期での返済が前提となるためです。また、複数の銀行から銀行借入をしている場合は、全ての銀行借入を合計して計算することが重要です。
月商4ヶ月以内の銀行借入であれば、追加融資の可能性があります。ただし、銀行借入を申し込む際は以下の点も重要です:
健全な範囲内の銀行借入であっても、銀行は慎重に審査を行います。特に、銀行借入の資金使途が不明確な場合や、返済計画が曖昧な場合は、審査で否決される可能性が高くなります。銀行借入を成功させるためには、事前の準備が不可欠です。
ステップ1:現状把握
まずは自社の銀行借入が月商の何ヶ月分かを正確に計算しましょう。
ステップ2:改善計画策定
月商4ヶ月を超えている場合は、売上増加や返済による銀行借入の改善計画を作成します。
ステップ3:継続的管理
定期的に銀行借入の状況をチェックし、健全性を維持します。
コロナ特別融資を受けた会社の多くが、現在返済に苦慮しています。銀行借入は「受けられるから受ける」ものではなく、「必要だから受ける」ものです。将来の返済負担を十分に検討した上で、適切な銀行借入の範囲内で融資を申し込むことが重要です。
銀行借入に関する重要な教訓:
統計データが明確に示すとおり、コロナ特別融資は異常事態への対応でした。2024年以降は月商4ヶ月ルールによる銀行借入基準が完全に復活していることを前提に、財務戦略を立てることが必要です。
2025年の銀行借入環境では、過去の特例的な融資実績は参考になりません。現在の基準に基づいた現実的な銀行借入計画を立てることが、会社の持続的成長につながります。銀行借入を検討する際は、必ず月商4ヶ月ルールを基準にして判断しましょう。
銀行借入には明確なルールがあります。運転資金で可能な銀行借入は月商の4ヶ月程度。この現実を受け入れ、自社の財務状況を正確に把握することから始めましょう。
統計データが示すとおり、2024年以降の銀行借入環境は完全にコロナ前の水準に戻っています。無謀な銀行借入申込で銀行との関係を悪化させるよりも、堅実な財務運営で信頼を築く方が、長期的には会社の成長につながります。まずは決算書を手に取り、自社の銀行借入が月商の何ヶ月分になっているかを確認してください。それが、健全な財務戦略の第一歩です。
銀行借入を正しく理解し、月商4ヶ月ルールに基づいた現実的な資金調達計画を立てることで、会社の財務基盤を強化できます。今すぐ自社の銀行借入状況をチェックし、必要に応じて改善計画を策定しましょう。適切な銀行借入戦略により、会社の持続的成長を実現できます。