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「回収までが営業」を営業部に根づかせるには|売上だけの評価が未回収債権を生む理由と制度の作り方

営業部が回収に動かないのは意識ではなく、評価が売上計上で終わる仕組みのせいです。センゲ『学習する組織』の視点と計算例から、「回収までが営業」を評価制度に組み込み、会社の成長につなげる方法を解説します。 📅 更新日:2026年10月10日 ✍️ 経営コンサルタント 長瀬好征

経営コンサルタント 長瀬好征資金繰り改善76の実践手法

「回収までが営業」を営業部に根づかせるには|売上だけの評価が未回収債権を生む理由と制度の作り方

言い聞かせるより、評価の仕組みで伝える
🗓️ 公開日:2025年2月20日|更新日:2026年10月10日

「営業は売上を上げているのに、売掛金ばかり増えていく。督促を頼むと『回収は経理の仕事でしょう』と返され、経理は『取引条件を決めたのは営業です』と言う」

誰も回収に責任を持たないまま、入金の遅れた売掛金が積み上がっていく。社長が「回収までが営業だ」と何度言っても、状況は変わらない——そんな悩みはないでしょうか。

結論から申し上げます。営業部が回収に動かないのは、意識が低いからではなく、評価が「売上計上」の時点で終わる仕組みになっているからです。「回収までが営業」という考え方を根づかせるには、言葉で言い聞かせるより先に、回収まで評価する仕組みに変えることが必要です。

収益満開経営の長瀬好征です。財務を軸とした経営コンサルタントとして、30社以上の資金繰り改善を支援してきました。売上は伸びているのに資金が足りない会社では、営業と経理の間に「回収」という誰の仕事でもない空白ができていることが少なくありません。この記事は、督促や回収交渉のテクニックではなく、その空白を生む「評価の仕組み」をどう変えるかをお伝えします。

  • 「回収までが営業」の意味と、回収の遅れが資金に与える影響(計算例)
  • 言い聞かせても行動が変わらない理由(センゲ『学習する組織』の視点)
  • 売上だけの評価が生む4つのゆがみ
  • 回収を組み込んだ評価の作り方と、段階的な移行のひな形
  • 営業部の反発への答え方と、会社の成長とのつながり

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📋 目次

「回収までが営業」とは、どういう意味か?

売上を計上した時点では、取引はまだ終わっていない。代金が入金されて初めて、営業の仕事が完結する——という意味です。

掛けで売った場合、売上を計上した時点で手に入るのは「代金を受け取る権利(売掛金)」だけです。一方、仕入代金や外注費、営業担当者の給与は、入金を待たずに出ていきます。回収できなければ、会社は商品とお金を出しただけで終わります。損益計算書には売上と利益が載っていても、現金は増えていません。

回収が遅れるだけでも、資金への影響は小さくありません。計算例で見てみましょう。

月の売上 1,000万円の会社回収まで60日回収まで90日
常に抱えている売掛金(売上×回収月数)約2,000万円約3,000万円
余分に必要になる運転資金—約1,000万円
これを金利2%で借りた場合の利息(年)—約20万円

※考え方を示すための計算例です。実際の金額は取引条件や売上の変動によって異なります。

売上は1円も変わっていないのに、回収が30日遅れるだけで、約1,000万円の資金が売掛金の中に眠ることになります。営業担当者が決める取引条件と回収への関わり方が、会社の資金繰りを直接左右しているのです。

「回収までが営業」と言い聞かせても、なぜ営業部の行動は変わらないのか?

営業担当者は、言葉よりも「何が評価されるか」に合わせて動くからです。評価が月々の売上額だけで決まるなら、今月の売上を最大にすることが、担当者にとって合理的な行動になります。支払いに不安のある取引先でも、回収が大きく後になる条件でも、受注すれば評価は上がります。回収できなくても、評価は下がりません。

MITのピーター・センゲは、著書『学習する組織』(枝廣淳子ほか訳、英治出版)で、組織が同じ問題を繰り返すのは、多くの場合、個人の能力や意欲ではなく「構造」が原因だと述べています。「構造が挙動に影響を与える」という考え方です(趣旨)。

センゲはまた、組織が学べなくなる原因(学習障害)として、次のようなものを挙げています。

センゲが挙げた学習障害(一部)回収の場面に置き換えると
「私の仕事は○○だから」
自分の持ち場だけを果たし、全体の目的を考えない
営業は「受注が仕事」、経理は「入金管理が仕事」。その間にある回収は誰の仕事でもなくなる
「悪いのはあちら」
問題の原因を自分の外に求める
営業は「督促しない経理が悪い」、経理は「条件を決めた営業が悪い」と考える

「回収までが営業」と社長が何度言っても行動が変わらないのは、この構造がそのまま残っているからです。研修や指導で意識を変えようとしても、評価の仕組みが売上計上で終わっている限り、効果は一時的になりがちです。営業部に「回収までが営業」を理解してもらう一番確かな方法は、評価の仕組みそのものに、その意味を書き込むことです。

営業と経理の役割分担や、回収の責任者をどう決めるかという「責任体制」については、こちらで解説しています。
📖 組織責任体制の構築で未回収債権70%削減 →

売上だけの評価は、どんな4つのゆがみを生むのか?

売上だけの評価は、「指標」「部門の分断」「評価期間」「与信の判断」の4つの面で、回収を後回しにする行動を生みます。

ゆがみ起きること営業担当者から見た合理性
① 指標のゆがみ売上額だけが評価されるため、支払いに不安のある取引先や長い支払条件も受け入れる「受注すれば評価が上がり、回収できなくても下がらない」
② 部門の分断営業は受注、経理は入金管理と分かれ、回収を進める役割が空白になる「回収は自分の持ち場ではない」
③ 評価期間の短さ月次・四半期の評価が、今期の売上を優先させ、取引先の支払い能力への目配りを弱める「今月の数字が先。先のことは後で考える」
④ 与信の判断が評価されない危ない取引を断る判断や、与信の上限を守る行動が評価されず、育たない「断っても評価されないなら、受注したほうが得」

4つに共通するのは、担当者の行動が「評価の仕組みの中では合理的」だということです。だからこそ、叱ったり注意したりするだけでは変わりません。変えるべきは担当者ではなく、仕組みのほうです。

営業評価に「回収」を組み込むには、どう設計すればよいか?

評価の中に「回収率」「回収までの日数」を加え、評価の期間を長くし、営業が自分の担当先の入金状況を見られるようにすることです。主な要素は次の5つです。

  1. 評価の指標に回収を加える——売上額に加えて、期日どおりに回収できた割合(回収率)と、回収までの日数を評価に入れる
  2. 評価の期間を長くする——月次だけでなく、半年〜1年の通算でも評価し、「今月だけの無理な受注」が得にならないようにする
  3. 担当先の入金状況を営業が見られるようにする——得意先別・経過日数別の売掛金一覧を毎週営業に共有し、期日を過ぎたものは担当者が自ら確認する役割を決めておく
  4. 与信の判断を評価する——取引前の支払い能力の確認や、与信の上限を守ったことを、昇格や賞与の評価項目に入れる
  5. 回収の状況を部内で共有する——担当者ごとの回収率を毎月共有し、回収を「見えない仕事」から「評価される仕事」に変える

評価の配分は、一度に大きく変えると営業部の不安や反発を招きます。段階的に移していくのが現実的です。次はそのひな形です。

評価の配分(例)現状第1段階第2段階目標の形
売上額100%80%60%50%
回収率(期日どおりに回収できた割合)—20%25%25%
回収までの日数——15%15%
取引の継続(同じ取引先との継続取引)———10%

※考え方を示すためのひな形です。配分や移行の期間は、業種や取引条件、評価制度の現状に合わせて決めてください。各段階は半年程度を目安に、結果を見ながら進めます。

大切なのは配分の数字そのものより、「回収できた売上こそが成果だ」というメッセージを、評価表という一番伝わる形で示すことです。評価表は、社長が何を大事にしているかを、言葉より正確に社員に伝えます。

得意先別・経過日数別の売掛金一覧(年齢表)の作り方は、こちらで見本つきで解説しています。
📖 売掛金回収が遅れる会社の5つの共通点|近江商人の「帳合」に学ぶ経営者の実態把握術 →

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導入するとき、営業部の反発にはどう答えればよいか?

反発の多くは「評価が下がるのではないか」という不安から来ます。数字で、回収できない売上が会社にとって何を意味するかを示すことが、一番の答えになります。

反発①「売上の配分が下がると、評価が下がる」

→ 売上の配分は下がっても、回収まで完結させた担当者は回収率・回収日数でも評価されます。回収まで手を抜かない営業ほど、全体の評価は上がる仕組みです。

反発②「与信で断ると、売上の機会を逃す」

→ 回収できない売上は「利益ゼロ」ではなく、マイナスです。次の計算例を一緒に見てください。

反発③「評価が複雑になって、管理が大変」

→ 最初は「売上」と「回収率」の2つだけで始めます。仕組みに慣れてから、回収日数などを加えていきます。

売上100万円・原価70万円の取引回収できた場合回収できなかった場合
入ってくるお金100万円0円
出ていったお金(仕入・外注など)70万円70万円
会社に残るお金+30万円-70万円

※考え方を示すための計算例です。実際にはこのほかに営業にかかった経費や、督促にかかる手間も発生します。

受注を断った場合、会社のお金は増えも減りもしません。受注して回収できなかった場合は、70万円が出ていったまま戻りません。危ない取引を断る判断は、売上を逃すことではなく、会社のお金を守る仕事です。この表を営業会議で一緒に見るだけでも、「与信の判断を評価する」意味が伝わりやすくなります。

「回収までが営業」が根づくと、なぜ会社は成長できるのか?

会社の成長に必要なお金は、回収された売上からしか生まれないからです。給与も、次の仕入れも、新しい設備や人への投資も、損益計算書の利益ではなく、実際に入ってきた現金で支払います。

しかも、売上が伸びるほど売掛金も増え、必要な運転資金も大きくなります。回収が甘いまま売上だけを伸ばすと、成長すればするほど資金が足りなくなる——いわゆる黒字倒産の入口です。「回収までが営業」が営業部に根づいている会社だけが、売上の伸びを資金の苦しさに変えずに、成長につなげることができます。

回収まで評価する会社で起きやすい変化

商談の段階で取引先の支払い能力を確かめる → 支払条件を意識して交渉する → 期日を過ぎた売掛金に担当者が自ら気づく → 回収の遅れが早く見つかる → 売上が伸びても資金が回る → 次の投資に回せるお金が残る

回収まで評価することは、営業部に「疑ってかかれ」と言うことではありません。支払いまできちんと完結する取引こそが、取引先との信頼の証です。そうした取引先との関係を大事にする営業が評価される会社は、売上の量だけでなく、売上の質で成長していきます。

回収・回転・継続性という「利益の質」の考え方は、こちらで詳しく解説しています。
📖 売上総利益の「質」が経営を決める|回収・回転・継続性の3条件 →

📝 まとめ:「回収までが営業」は、言葉ではなく評価表で伝える

売上を計上しただけでは、取引は終わっていません。回収が30日遅れるだけで多額の資金が売掛金の中に眠り、回収できなければ出ていったお金が戻りません。それでも営業部が回収に動かないのは、評価が売上計上で終わる「構造」があるからです。センゲが指摘したように、構造が人の行動を左右します。

回収率・回収日数・与信の判断を評価に加え、段階的に移していく。そうして「回収までが営業」を評価の仕組みに書き込むことが、売上の伸びを資金の苦しさではなく、会社の成長につなげる土台になります。

今すぐできる一歩:自社の営業評価表を開き、「回収」に関わる項目がいくつあるか数えてみてください。ゼロなら、そこが最初に手を入れるところです。

❓ よくある質問

Q. 「回収までが営業」とはどういう意味ですか?

売上を計上した時点では取引はまだ終わっておらず、代金が入金されて初めて営業の仕事が完結する、という意味です。掛けで売った時点で手に入るのは売掛金だけで、仕入や給与は先に出ていくため、回収できなければ会社はお金を出しただけで終わってしまいます。

Q. なぜ売上が好調な会社でも未回収債権が増えるのですか?

営業の評価が売上計上の時点で終わる仕組みになっていることが大きな原因です。回収に力を入れても評価が上がらず、回収できなくても評価が下がらないなら、営業担当者にとっては今月の売上を最大にすることが合理的になります。原因は個人の意識より、評価の構造にあります。

Q. 営業評価に回収をどう組み込めばよいですか?

売上額に加えて、期日どおりに回収できた割合(回収率)と回収までの日数を評価に入れ、評価期間を半年〜1年に延ばします。あわせて、担当先の入金状況を営業が毎週見られるようにし、与信の判断も昇格や賞与の評価項目に加えます。

Q. 評価の配分はどのくらいの期間で変えればよいですか?

一度に大きく変えると反発や不安を招くため、段階的に移すのが現実的です。たとえば最初は売上80%・回収率20%の2項目から始め、半年程度ごとに結果を見ながら、回収日数や取引の継続などの項目を加えていきます。配分は自社の業種や取引条件に合わせて決めてください。

Q. 与信で受注を断ると売上の機会を逃しませんか?

回収できない売上は利益ゼロではなくマイナスです。売上100万円・原価70万円の取引で回収できなければ、70万円が出ていったまま戻りません。断った場合はお金が減らないため、危ない取引を断る判断は、会社のお金を守る仕事として評価すべきものです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の人事制度・経営判断の推奨を目的とするものではありません。計算例とひな形は、考え方を示すための簡便なものです。評価制度の変更にあたっては、就業規則や賃金規程との整合もご確認ください。

※本稿は長瀬好征の実務経験をもとに、AIを構成・編集のパートナーとして活用し作成しました。センゲ『学習する組織』の内容は趣旨として紹介しています。

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