利益はコストである|ドラッカーに学ぶ「会社に必要な利益」の逆算方法
「今期は黒字だった。それなのに、なぜ来年の返済が不安なのだろう」
「利益」はほとんどの社長にとってなじみのある言葉です。ところが、黒字かどうかだけを見て、「自社にはいくらの利益が必要なのか」を考えたことのある社長は多くありません。
結論から申し上げます。利益は、事業を続けるために必要な「明日のためのコスト」です。借入の返済、設備の更新、成長に伴う運転資金の増加——これらは利益の中から賄うしかありません。だから、まず「必要な利益」を逆算し、実際の利益がそれに届いているかを見ることが、財務の第一歩です。
収益満開経営の長瀬好征です。財務を軸とした経営コンサルタントとして、30社以上の資金繰り改善を支援してきました。財務に苦手意識のある社長ほど、「黒字ならひとまず安心」と考えがちです。しかし黒字でも、必要な利益に届いていなければ、会社は少しずつ体力を失っていきます。この記事では、次のことをお伝えします。
- ドラッカーが説いた「利益はコスト」という考え方
- 利益が出ていてもお金が残らない理由
- 会社に必要な利益を逆算する方法(計算例つき)
- 必要な利益に届かないときに見直す4つのこと
- 利益を「目的」ではなく「指標」として使う方法
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「利益はコストである」とは、どういう意味か?
利益は事業の目的ではなく、会社が明日も事業を続けるために必要な費用だ、という意味です。経営学者ピーター・ドラッカーは、利益は事業の目的ではなく、事業がうまくいっているかを測る尺度であり、将来も事業を続けるために欠かせないコストである、という趣旨のことを繰り返し述べています。
ドラッカーは『現代の経営』で、企業の目的は「顧客の創造」であると述べました。顧客に価値を届けることが目的であり、利益はその結果として生まれ、同時に、明日も顧客に価値を届け続けるための原資になります。
利益の3つの顔
- 指標としての利益——事業の健康状態を示す体温計。数字そのものではなく、その背後の状態を見るためのもの
- 条件としての利益——人が生きるのに酸素が要るように、会社が続くには利益が要る。ただし「酸素を吸うこと」が人生の目的ではないように、利益を上げること自体が会社の目的ではない
- 結果としての利益——顧客に価値を届け、無駄なく事業を運営した結果として生まれるもの
「利益はコスト」と聞くと奇妙に感じるかもしれません。しかし、利益の使い道を具体的に並べてみると、この言葉の意味がはっきりします。それが次の章以降のテーマです。
利益が出ているのに、なぜお金が残らないことがあるのか?
利益は会計上の計算結果であって、金庫に積み上がった現金ではないからです。「今期は3,000万円の利益が出た」と聞くと、3,000万円が手元にあるように感じますが、実際にはそうとは限りません。
- 売上の一部は、まだ入金されていない(売掛金)
- 仕入れたお金が、まだ売れていない在庫に変わっている
- 設備に払ったお金は、何年もかけて少しずつ費用(減価償却費)になる
- 借入金の元金の返済は、費用にならない——利益の中から返すしかない
特に最後の点は、財務初心者の社長がつまずきやすいところです。借入の利息は費用になりますが、元金の返済は損益計算書に出てきません。損益計算書で黒字でも、元金の返済が利益より大きければ、お金は確実に減っていきます。「黒字なのに返済が不安」という感覚の正体は、多くの場合ここにあります。
利益と現金がずれる仕組みは、こちらで詳しく解説しています。
📖 「売上・利益・現預金・資金繰り」の本当の関係 第2回 なぜ黒字なのに倒産するのか?利益と現金の分かれ道 →
会社に必要な利益は、どう逆算すればよいのか?
「来年、利益の中から払わなければならないお金」を積み上げ、税金を戻して計算します。これが、ドラッカーの言う「明日のためのコスト」を数字にする方法です。年商5億円の会社を例に計算してみます。
| 項目 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| 借入金の元金返済 | 1,200万円 | 費用にならないため、利益から返す |
| (差し引き)減価償却費 | -500万円 | 費用だがお金は出ていかないため、返済の財源になる |
| 設備更新への備え | 300万円 | 今の設備を将来入れ替えるための積み立て |
| 成長に伴う運転資金の増加 | 400万円 | 売上が伸びると売掛金・在庫に寝るお金が増える |
| 必要な税引後の利益 | 1,400万円 | |
| 必要な税引前の利益 | 約2,000万円 | 税率を約30%として、1,400万円÷0.7 |
| 売上高に対する割合 | 約4% | 2,000万円÷年商5億円 |
※考え方を示すための簡便な計算例です。実際の税負担や運転資金の動きは会社ごとに異なります。
この会社にとって、税引前で約2,000万円(売上の約4%)の利益は「出たらうれしい成果」ではなく、事業を続けるために最低限払わなければならないコストです。仮に今期の利益が1,000万円の黒字だったとしても、必要な利益の半分にしか届いていません。黒字でも、会社のお金と体力は少しずつ減っていく計算になります。
この計算の良いところは、「利益目標」に根拠ができることです。「前年より10%増」ではなく、「返済と更新と成長に必要だから、この利益が要る」と説明できる目標は、社員にも銀行にも伝わります。
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📊 診断シートを無料で受け取る必要な利益に届かないとき、何を見直せばよいのか?
「価格と粗利」「固定費」「返済の条件」「投資の計画」の4つです。必要な利益と実際の利益の差は、この4つのどれか、または組み合わせで埋めます。
| 見直す項目 | 考えること |
|---|---|
| 価格と粗利 | 値決めは適正か。値引きで粗利を削っていないか。粗利の薄い取引に手間をかけすぎていないか |
| 固定費 | 売上が増えないのに固定費だけが増えていないか。成果につながらない支出はないか |
| 返済の条件 | 元金の返済額が、会社の稼ぐ力に対して重すぎないか。返済期間の見直しを銀行に相談できないか |
| 投資の計画 | 設備投資や拡大のペースは、必要な利益を生み出せる範囲に収まっているか |
どれから手をつけるかは会社によって違いますが、多くの場合、最も効きやすいのは価格と粗利です。売上を増やすより、適正な価格で売るほうが、少ない労力で利益が増えることが多いからです。
値上げと売上増加のどちらが利益に効くかは、こちらで計算しています。
📖 値上げと売上アップ、どちらが利益を増やすか|10%の値上げは33%の増収に匹敵する →
利益そのものを目的にすると、なぜ会社は弱くなるのか?
目先の数字を整えることが優先され、明日の利益を生む力——顧客の信頼、社員の意欲、将来への投資——が削られていくからです。
① 短期的な思考に偏る
今期の数字を良く見せるために、将来のための投資や人材育成を削ってしまう。数年後の利益を、今期の利益と引き換えにしている状態です。
② 顧客への価値が軽くなる
品質を落とす、サービスを削るといった判断が、利益のためなら正しいように見えてしまう。顧客の創造という本来の目的と逆の方向に進みます。
③ 社員の心が動かない
「利益のため」は、社員にとって心から打ち込める目的になりにくいものです。「お客様のこの困りごとを解決するため」という目的なら、社員は自分の仕事の意味を感じられます。
ただし、利益を軽んじてよいということではありません。利益は目的ではないが、必要な額は必ず確保しなければならないコストです。目的は顧客への価値、必要条件が利益——この順番を取り違えないことが大切です。
利益を「指標」として使いこなすには、どうすればよいか?
毎月、「必要な利益」と「実際の利益」の差を確かめ、その差の原因を探ることです。体温計の数字を上げることが目的ではなく、健康な体を保つことが目的であるように、利益の数字を見るのは、事業の状態を知るためです。
- 年に一度、必要な利益を逆算する——返済・設備更新・運転資金の増加を積み上げ、税引前の必要利益を出す
- 月割りにして、毎月の試算表と比べる——累計で必要な利益に届いているかを見る
- 差が出たら、4つの項目のどこに原因があるかを探る——価格と粗利、固定費、返済、投資
- 利益以外の指標もあわせて見る——顧客が再び買ってくれているか、社員が定着しているか
利益が出ているかどうかは大切です。しかしそれ以上に大切なのは、その利益で明日も事業を続けられるかです。利益を「コスト」として捉えると、黒字か赤字かという見方から、「必要な額を確保できているか」という見方に変わります。
利益が「実在しない」と言われる理由は、こちらで掘り下げています。
📖 「売上・利益・現預金・資金繰り」の本当の関係 第5回「利益」は存在しない →
📝 まとめ:必要な利益を知り、そこに届いているかを見る
ドラッカーが説いたように、利益は事業の目的ではなく、明日も事業を続けるために必要なコストです。借入の元金返済、設備の更新、成長に伴う運転資金の増加は、利益の中から賄うしかありません。
だから社長がまずすべきことは、黒字か赤字かを見ることではなく、「自社にはいくらの利益が必要か」を逆算し、毎月そこに届いているかを確かめることです。目的は顧客への価値、利益はそれを続けるための条件——この順番を守ることが、持続的な経営の土台になります。
今すぐできる一歩:来年の借入金の元金返済額と、今期の減価償却費を書き出してみてください。返済額のほうが大きければ、その差額以上の利益が最低限必要です。
❓ よくある質問
利益は事業の目的ではなく、会社が明日も事業を続けるために必要な費用だという意味です。借入金の元金返済、設備の更新、成長に伴う運転資金の増加は、利益の中から賄うしかありません。経営学者ドラッカーは、利益を事業の有効性を測る尺度であり、事業を続けるためのコストだと捉えました。
利益は会計上の計算結果で、手元の現金とは一致しないからです。売上の一部は売掛金のまま、仕入れたお金は在庫に変わっていることがあります。また、借入金の元金返済は費用にならないため、元金の返済額が利益より大きければ、黒字でもお金は減っていきます。
借入金の元金返済額から減価償却費を差し引き、設備更新への備えと成長に伴う運転資金の増加を加えて、必要な税引後利益を出します。それを(1-税率)で割ると、必要な税引前利益の目安になります。たとえば税引後1,400万円が必要で税率を約30%とすると、税引前で約2,000万円です。
価格と粗利、固定費、返済の条件、投資の計画の4つです。多くの場合、最も効きやすいのは価格と粗利で、売上を増やすより適正な価格で売るほうが少ない労力で利益が増えることが多くあります。返済が重すぎる場合は、返済期間の見直しを銀行に相談することも選択肢です。
目先の数字を整えることが優先され、将来の投資や人材育成、顧客への価値が削られやすくなるからです。ただし利益を軽んじてよいわけではなく、必要な額は必ず確保しなければならないコストです。目的は顧客への価値、利益はそれを続けるための条件と捉えます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の経営判断の推奨を目的とするものではありません。計算例は考え方を示すための簡便なものです。税務上の取り扱いは顧問税理士にご確認ください。
※本稿は長瀬好征の実務経験をもとに、AIを構成・編集のパートナーとして活用し作成しました。記事中の計算例は、考え方を示すための例です。
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