「人手が足りないから、もう1人雇いたい」——その判断が会社を危機に追い込む
売上は上がっているのに、なぜか手元にお金が残らない。人を雇ったら急に資金繰りが苦しくなった。こうした悩みを持つ社長が後を絶ちません。
東京商工リサーチのデータによれば、2024年の企業倒産件数は約1万件を超え、そのなかには売上が順調だった会社も多数含まれています。倒産直前まで「うちは大丈夫」と思っていた社長が、採用コストの重さに気づかなかったケースは枚挙にいとまがありません。
問題の本質は、月給という「見える数字」だけで採用を判断してしまうことにあります。実際には給料以外に社会保険料・労働保険料・退職金引当・福利厚生費・設備投資費など、目に見えないコストが重層的に積み上がります。
これらを合計すると、手取り月給の1.5倍以上のコストが会社側に発生します。粗利率30%の会社では、月給30万円の従業員1人を雇うために毎月150万円の売上が必要になる計算です。この動画でその構造を3分で解説しています。
財務を軸とした経営コンサルタントとして30社以上の資金繰り改善を支援してきた経験から断言できます。採用の意思決定を「感覚」で行っている社長ほど、気づかないうちに固定費の罠にはまっています。
二宮尊徳が説いた「分度(ぶんど)」——すなわち「入りを量りて出を制す」という財務の原則は、江戸時代の農村復興でも現代の中小企業でも変わらない真理です。採用という出費を決断する前に、自社の粗利構造を数字で把握することが、この原則の現代的な実践です。
この記事と動画を通じて、以下を理解できます。
- ✅ 月給以外に発生する「隠れた人件費」の全体像
- ✅ 粗利率から逆算する「採用可能ライン」の計算方法
- ✅ 「人手不足」の正体——実は採用前に解決できる問題が大半
- ✅ 採用を決断する前に検証すべき3つのチェックポイント
理化学研究所の研究により、財務感覚は科学的に4ヶ月で習得可能であることが証明されています。採用の数字感覚を身につけることは、決して難しいことではありません。この動画と記事が、その第一歩になります。
📋 目次
📺 動画で3分解説:月給30万円に必要な売上の計算
🎬 まずは動画でポイントを掴んでください
📌 この動画で学べること
- 月給30万円の従業員を雇うのに必要な売上額
- 給料以外にかかる隠れたコストの実態
- 粗利率30%の会社での具体的な計算例
- 安易な採用が資金繰りに与える影響
💡 なぜ「月給の3倍」が必要なのか——隠れたコストの全体像
多くの社長が採用を検討するとき、頭の中にあるのは「月給○○万円」という数字だけです。しかし会社が実際に負担するコストは、その数字をはるかに超えます。
月給以外に発生する主なコスト
- 社会保険料(会社負担分)——健康保険・厚生年金・介護保険。月給の約15%が会社負担
- 労働保険料——雇用保険・労災保険。採用するだけで毎月発生
- 退職金引当金——将来の退職金を毎月積み立てる概念的コスト
- 福利厚生費——健康診断・慶弔見舞金・社員旅行など
- 研修・教育費——即戦力でない限り、一定期間の教育投資が必要
- 設備投資費——デスク・椅子・パソコン・ソフトウェアライセンス
- オフィス賃料の按分——1人増えるだけでスペースコストも増加
これらを積み上げると、実際のコストは月給の約1.5倍になります。月給30万円なら、会社が実際に負担するコストは月45万円前後です。
この「1.5倍」という数字は会計上の費用だけを指しているわけではありません。すぐに数字に現れない機会損失——既存スタッフの教育時間・マネジメントコスト・ミスのリカバリー費用——まで含めると、実態はさらに重くなります。
📊 粗利率30%の会社で試算する——具体的な計算例
「1.5倍のコスト」は理解できた。では実際に何円の売上が必要なのか。ここで登場するのが「粗利率」という概念です。
【計算式】採用に必要な売上 = 実際のコスト ÷ 粗利率
例:月給30万円、粗利率30%の会社の場合
① 実際のコスト:30万円 × 1.5 = 45万円
② 必要な売上:45万円 ÷ 0.3(粗利率30%)= 150万円
→ 月給30万円の人を1人雇うために、毎月150万円の売上増加が必要
粗利率が低い業種ほど、この数字は大きくなります。
| 粗利率 | 必要な月間売上(月給30万円の場合) |
|---|---|
| 50%(IT・コンサル系) | 90万円 |
| 30%(サービス業平均) | 150万円 |
| 20%(小売・卸売) | 225万円 |
| 10%(薄利多売型) | 450万円 |
粗利率10%の会社が月給30万円の人を雇えば、毎月450万円の売上増加が必要です。この数字を知らずに採用し、売上が追いつかなかったとき、会社の資金繰りは急速に悪化します。
🔍 「人手不足」の本当の正体——採用前に解決できる問題
現場から「人が足りない」という声が上がるとき、多くの社長はすぐに採用を考えます。しかし現場の「人手不足感」の正体を解きほぐすと、採用以外の方法で解決できるケースが大半です。
「人手不足」の正体として多いケース
- 業務の非効率性——重複作業・手作業・属人化によるムダな時間
- ITツール活用の遅れ——自動化できる作業を人力でやり続けている
- 優先順位の曖昧さ——やらなくてもいい業務に時間を使っている
- 既存スタッフのスキル不足——教育投資で解決できる問題
- 仕事の受けすぎ——そもそも受注量が適正かどうかの見直しが先
私がコンサルティングで入る会社の多くでは、業務フローを整理するだけで「人手不足感」が大きく改善します。採用は最終手段です。まず現状の業務を棚卸しすることが、「入りを量りて出を制す」の実践です。
✅ 採用前に検証すべき3つのチェックポイント
どうしても採用が必要だと判断したとき、以下の3つを必ず数字で確認してください。
① 財務面の検証
- 採用後6ヶ月間の資金繰り予測を作成したか
- 売上が想定を下回ったシナリオでも耐えられるか
- 必要な売上増加額を自社の粗利率で計算したか
② 業務面の検証
- 現在の業務プロセスを最適化する余地はないか
- ITツール・自動化で代替できる作業はないか
- 外部委託(アウトソーシング)のほうがコストが低くないか
③ 組織面の検証
- 新しい人材を受け入れる教育体制が整っているか
- 既存スタッフが新人教育に割ける時間があるか
- 採用コスト(求人費・入社準備費)の回収期間を試算したか
この3つを「なんとなく大丈夫」ではなく、数字で確認できた段階で初めて採用の意思決定をしてください。
🌸 和魂洋才の採用判断——感情ではなく数字で従業員を守る
二宮尊徳は「人は城」とは言いませんでしたが、人材こそが企業の根幹であることは古今東西変わりません。しかし同時に、財務的基盤のない採用は、その従業員を最終的に守れなくなるリスクを生みます。
真に従業員を大切にする経営とは、感情的な「人情採用」ではなく、数字に根ざした財務的余裕の上に立った採用です。これが私の言う「和魂洋才」の実践——古典の人を大切にする精神(和魂)と、科学的な財務分析(洋才)の融合です。
採用は投資です。投資には必ずリターンの根拠が必要です。
「なんとかなるだろう」ではなく、「この数字があるから大丈夫」という確信を持てる採用判断を心がけてください。
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合同会社エバーグリーン経営研究所
財務コンサルタント 長瀬好征
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