売上あるのにお金がない理由とは?中小企業社長が今すぐできる5つの解決策

2025.06.04

売上あるのにお金がない理由とは?中小企業社長が今すぐできる5つの解決策

「売上はあるのに、なぜか手元にお金がない…」そんな深刻な悩みを持つ社長様へ。

この記事では、資金ショートを招く5つの根本原因を明らかにし、キャッシュフローを改善して

黒字倒産を回避するための具体的な5つの解決策を提示します。

資金繰りの不安を解消し、健全な企業経営を目指す第一歩を踏み出しましょう。

 

1. はじめに 売上があるのにお金がないのはなぜ?黒字倒産の危機を回避するために

「毎月、売上目標も達成しているし、利益も出ているはずなのに、なぜか月末になると資金繰りが苦しい…」

「通帳の残高が増えないどころか、むしろ減っている気がする…」

多くの中小企業の社長様が、このような悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

売上は立っているのに手元にお金がないという状況は、決して珍しいことではありません。

しかし、この状態を放置してしまうと、最悪の場合、「黒字倒産」という深刻な事態を招きかねません。

 

この記事では、なぜ売上があるにもかかわらずお金が不足してしまうのか、

その根本的な原因を明らかにし、中小企業の社長様が今すぐ取り組むことができる

具体的な解決策を提示します。資金繰りの不安から解放され、健全で持続可能な経営

を実現するための一助となれば幸いです。

 

1.1 「売上=手元資金」ではない!中小企業経営者が陥りやすい誤解

多くの中小企業経営者の方が陥りやすいのが、「売上さえ上がっていれば会社は安泰だ」という誤解です。

確かに売上は企業活動の源泉であり、非常に重要な指標です。

しかし、会計上の「売上」や「利益」と、実際に会社が自由に使える「お金(現金預金)」の間には、

タイムラグやズレが存在します。このズレを理解しないまま経営判断を行うと、気づかぬうちに資金

ショートのリスクを高めてしまうのです。

 

例えば、商品を掛けで販売した場合、売上は計上されますが、その代金が実際に入金されるのは

数ヶ月後というケースも少なくありません。

その間にも、仕入れ代金や経費の支払いは発生します。この入金と支払いのタイミングのズレこそが、

「売上はあるのにお金がない」状態を生み出す大きな要因の一つなのです。

 

1.2 黒字倒産とは?その恐ろしさと中小企業における現実

 

「黒字倒産」とは、損益計算書上では利益が出ている(黒字である)にもかかわらず、資金繰りが

悪化し、支払いに必要な現金が不足して事業継続が困難になり倒産してしまう状況を指します。

帳簿上は儲かっているはずなのに、会社が潰れてしまうという、にわかには信じがたい事態です。

 

中小企業庁の調査によると、倒産する企業の中には一定数の黒字企業が含まれているというデータ

もあります。

これは、黒字倒産が決して他人事ではなく、どの中小企業にも起こりうるリスクであることを示し

ています。

 

黒字倒産が起こる主な要因 具体的な状況例
売掛金の回収遅延・貸し倒れ 取引先の経営悪化により、売掛金が期日通りに入金されない、または回収不能になる。
過剰な在庫 売れ残った商品や原材料が資金を圧迫し、現金化できない。
急激な売上増加に伴う運転資金の不足 売上は伸びているが、仕入れや人件費の増加に手元資金が追いつかない。
多額の設備投資 将来のための投資も、返済計画に無理があると資金繰りを悪化させる。
借入金の返済負担 利益の中から多額の返済を行うため、手元資金が残らない。

 

上記のように、利益が出ていても、キャッシュフロー(現金の流れ)が滞れば、企業は簡単に危機的状況

に陥るのです。

特に体力のない中小企業にとっては、一度資金繰りが悪化すると立て直しが非常に困難になるケースも

少なくありません。

 

1.3 この記事で得られること:資金繰り改善への第一歩

本記事では、「売上があるのにお金がない」という深刻な問題に対して、中小企業の社長様が具体的に

何をすべきかを明らかにします。

主な原因を5つのポイントに絞って深掘りし、それぞれに対して即効性のある解決策を5つ提案します。

さらに、資金繰り改善を持続させるための重要な取り組みについても解説します。

 

この記事を読むことで、以下のことを理解し、実践できるようになることを目指します。

 

  • なぜ売上があるのに手元にお金が残らないのか、その根本原因。
  • 自社の資金繰りの問題点を具体的に把握する方法。
  • 資金繰りを改善するために、今すぐ着手できる具体的なアクション。
  • 黒字倒産の危機を回避し、安定した経営基盤を築くための考え方

資金繰りの悩みは、経営者の精神的な負担も大きいものです。この記事が、その負担を少しでも軽減し、

攻めの経営へと舵を切るためのきっかけとなることを願っています。

まずは現状を正しく認識し、できることから一歩ずつ改善に取り組んでいきましょう。

 

2. 売上があるのにお金がない 主な5つの原因を徹底解説

 

「売上は順調に伸びているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない…」

多くの中小企業経営者が抱える深刻な悩みです。

この状態が続くと、最悪の場合、黒字倒産という事態を招きかねません。

ここでは、売上があるにもかかわらず資金繰りが苦しくなる主な5つの原因を掘り下げ、

それぞれのメカニズムを詳しく解説します。自社の状況と照らし合わせながら、問題の根本原因を

見極めましょう。

 

2.1 原因1 売掛金の回収遅延と支払いサイトのズレ

 

企業間取引において、商品やサービスを提供した際に代金を後日受け取る約束で発生するのが

「売掛金」です。

売上が計上されても、この売掛金が現金として入金されるまでには時間がかかります。

この売掛金の回収が遅れたり、回収までの期間(回収サイト)と、仕入れ代金や経費の支払いまで

の期間(支払いサイト)に大きなズレが生じたりすると、資金繰りは一気に悪化します。

 

例えば、以下のような取引条件の場合、資金繰りにどのような影響が出るか見てみましょう。

 

取引項目 発生時期 入金・支払時期 キャッシュフローへの影響
原材料の仕入れ 4月初旬 4月末支払い(支払いサイト約30日) 現金が減少
製品の製造・販売(売上計上) 4月中旬 6月末入金(回収サイト約75日) 帳簿上は売上だが現金はまだない

 

このケースでは、仕入れ代金の支払いが先に行われ、売上代金の入金が約2ヶ月後になっています。

この間、運転資金が不足すると、新たな仕入れができなかったり、他の経費の支払いが滞ったりする

可能性があります

。特に、建設業や大企業との取引が多い下請け企業などでは、支払いサイトが長く設定される傾向が

あり、注意が必要です。

売上が増加すればするほど、このズレによる必要な運転資金も増加するため、「売れているのに資金が

足りない」という状況に陥りやすくなります。

 

2.2 原因2 過剰在庫によるキャッシュフローの悪化

 

「在庫は企業の資産」と会計上は扱われますが、売れずに倉庫に眠っている「過剰在庫」は、企業の

キャッシュフローを著しく悪化させる大きな要因となります。

機会損失を恐れて多めに仕入れたり、需要予測が甘かったり、あるいはセールを見越して大量に生産

したりすることで、気づけば倉庫が売れない商品で溢れかえっている、という事態は珍しくありません。

 

過剰在庫がキャッシュフローに与える悪影響は多岐にわたります。

 

  • 資金の固定化: 在庫は、仕入れや製造のために既に現金が支出された状態です。売れるまでは現金化されず、その資金は他の用途(支払いや投資など)に使うことができません。
  • 保管コストの増大: 在庫を保管するための倉庫賃料、光熱費、管理のための人件費、保険料などが継続的に発生します。
  • 品質劣化・陳腐化のリスク: 食品であれば賞味期限切れ、アパレルであれば流行遅れ、工業製品であれば型落ちなど、時間経過とともに商品の価値が下がり、最終的には廃棄せざるを得なくなるリスクがあります。これにより、仕入れにかかった費用が無駄になるだけでなく、廃棄費用も発生する可能性があります。
  • 追加融資の必要性: 在庫によって運転資金が圧迫されると、新たな資金調達が必要になり、金利負担が増えることもあります。

特に、季節性の高い商品、流行の移り変わりが激しい商品、技術革新が早い製品などを扱う業種では、

過剰在庫のリスク管理が極めて重要です。

定期的な棚卸しによる在庫状況の正確な把握と、過去の販売データや市場トレンドに基づいた適切な需要

予測が求められます。

 

2.3 原因3 借入金返済の負担と資金繰りの圧迫

 

事業の成長や維持のため、多くの企業が金融機関からの借入を活用しています。

設備投資、運転資金の確保、新規事業の立ち上げ資金など、借入は企業にとって不可欠な資金調達手段

の一つです。

しかし、借入金の返済(元金と利息)は、毎月あるいは定期的に発生する固定的なキャッシュアウト

であり、これが資金繰りを圧迫する大きな要因となることがあります。

 

特に、以下のような状況では、借入金返済の負担が経営に重くのしかかります。

 

  • 収益計画の未達: 借入時に策定した事業計画通りに売上や利益が伸びない場合、返済原資の確保が困難になります。特に、売上増を見込んで行った設備投資が期待した収益を生まない場合、返済負担だけが残ってしまいます。
  • 金利の上昇リスク: 変動金利で融資を受けている場合、市場金利が上昇すると毎月の利息負担が増加し、総返済額も膨らみます。
  • 返済期間と資金繰りのミスマッチ: 短期的な運転資金を長期の借入で賄ったり、逆に長期的な設備投資資金を短期の借入で賄ったりすると、返済と資金繰りのバランスが崩れやすくなります。
  • 複数の借入による管理の煩雑化: 複数の金融機関から異なる条件で借り入れている場合、返済管理が煩雑になり、資金繰り計画も立てにくくなります。

借入を行う際には、自社の返済能力を冷静に分析し、無理のない返済計画を立てることが最も重要です。

また、返済が苦しくなってきた場合には、放置せずに早めに金融機関に相談し、返済条件の見直し

(リスケジュール)や借り換えなどを検討することが、事態の悪化を防ぐために不可欠です。

信頼できる情報源として、日本政策金融公庫などの公的金融機関のウェブサイトも参考になります。

 

2.4 原因4 利益以上の税金支払いや予期せぬ支出

 

「決算書上は利益が出ているはずなのに、税金を支払う現金がない」という状況も、中小企業が直面

しやすい資金繰りの問題です。

これは、会計上の「利益」と、実際に会社の手元に残る「現金(キャッシュ)」との間にズレが生じる

ために起こります。

 

企業が支払う主な税金には、法人税、法人住民税、法人事業税、そして消費税などがあります。

これらの税金は、利益や売上があれば当然納付する義務がありますが、その支払いタイミングが

キャッシュフローの厳しい時期と重なることがあります。

 

  • 利益とキャッシュのズレ: 減価償却費のように、会計上は費用として計上されるものの現金の支出を伴わない項目があるため、帳簿上の利益が大きくても、手元資金が潤沢とは限りません。
  • 税金の支払いタイミング: 法人税等は決算後数ヶ月以内に、消費税は課税期間終了後2ヶ月以内に申告・納付が基本です。特に消費税は、売上時に顧客から預かっている性質のものですが、入金サイトによっては、預かった消費税分が現金として手元にない状態で納税時期を迎えることがあります。これを運転資金に充ててしまうと、納税資金が不足する事態に陥ります。
  • 予定納税・中間申告: 前年度の税額に基づいて、年度の途中で予定納税(法人税)や中間申告(消費税)が必要になる場合があり、これも資金繰りを圧迫する要因となります。

さらに、以下のような予期せぬ支出も、計画的な資金繰りを大きく狂わせる可能性があります。

  • 主要な機械設備や社用車の故障に伴う高額な修理費・買い替え費用
  • 自然災害(台風、地震など)による事業所の被災と復旧費用
  • 取引先の倒産による売掛金の焦げ付き
  • 従業員からの予期せぬ訴訟や、顧客とのトラブルによる損害賠償
  • 主要な従業員の急な退職に伴う退職金の支払い

これらの不測の事態に備えるためにも、納税資金は計画的に積み立てておくこと、そしてある程度

の現預金を常に確保しておくことが、安定した経営のためには不可欠です。

 

2.5 原因5 利益率の低さと売上至上主義の罠

売上高の増加は、事業成長の証として経営者にとって大きな喜びです。

しかし、その売上が十分な「利益」を伴っていなければ、いくら売っても会社にお金は残りません。

「とにかく売上を上げれば利益は後からついてくる」という「売上至上主義」に陥り、利益率を

度外視した経営を続けると、資金繰りは確実に悪化の一途をたどります。

 

利益率が低い状態が続く主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 過度な価格競争: 競合他社とのシェア争いや、新規顧客獲得のために安易な値下げを行うと、売上数量は増えても一件あたりの利益は減少します。結果として、忙しいだけで儲からない「薄利多売」の状態に陥ります。
  • コスト意識の欠如: 原材料費、外注費、広告宣伝費、人件費、地代家賃といった販売管理費など、事業活動にかかる様々なコストに対する意識が低く、無駄な支出が多いと利益を圧迫します。
  • 付加価値の低い商品・サービス: 他社との差別化が図れていない、あるいは顧客にとって魅力の薄い商品やサービスは、価格でしか勝負できず、高い利益率を確保することが困難です。
  • 非効率な業務プロセス: 生産性が低い業務プロセスや、無駄の多い作業フローは、人件費や時間的コストを増大させ、利益率を低下させます。

売上が増加すれば、それに伴って仕入れや外注費、販売手数料などの変動費も増加します。

利益率が低いと、これらの増加するコストを吸収しきれず、売れば売るほど手元資金が減っていく

「増収減益」や、最悪の場合は「増収なのに赤字」という状況に陥ることもあります。

自社の製品やサービスごとの利益率を正確に把握し、損益分岐点を理解した上で、適切な価格戦略と

徹底したコスト管理によって、持続的に利益を生み出せるビジネスモデルを構築することが、

資金繰り改善の根本的な解決策となります。

 

3. 売上があるのにお金がない社長が今すぐできる5つの解決策

 

売上は順調に伸びているはずなのに、なぜか月末になると資金繰りが苦しい…。

「売上があるのにお金がない」という状況は、多くの中小企業経営者が直面する深刻な問題です。

この状態を放置すると、黒字倒産という最悪の事態を招きかねません。

しかし、ご安心ください。適切な対策を講じることで、この苦境から脱却し、健全なキャッシュ

フローを確立することは可能です。

 

この章では、資金繰りに悩む社長が今すぐ実践できる5つの具体的な解決策を、詳細なアクション

プランと共に解説します。

 

3.1 解決策1 キャッシュフロー計算書で資金の流れを正確に把握する

まず、自社の「お金の流れ」を正確に把握することから始めましょう。

損益計算書(P/L)で利益が出ていても、実際に手元にお金がなければ経営は立ち行かなくなります。

ここで重要な役割を果たすのが「キャッシュフロー計算書(C/F)」です。

キャッシュフロー計算書は、一定期間における現金の収入と支出を記録し、その結果として手元資金

がどれだけ増減したかを示す財務諸表です。

これを作成し、定期的に確認することで、以下のメリットがあります。

 

  • 資金ショートのリスクを早期に発見できる
  • 「なぜお金がないのか」という具体的な原因(例:売掛金の回収遅れ、過剰な設備投資、借入金返済の負担増など)を特定しやすくなる
  • 将来の資金繰り予測の精度が向上し、より的確な経営判断を下せるようになる
  • 金融機関からの融資審査においても、資金管理能力を示す重要な資料となる

「作成が難しそう」と感じるかもしれませんが、最近の会計ソフトにはキャッシュフロー計算書

の作成機能が搭載されているものが多く、顧問税理士に作成を依頼したり、作成方法について指導

を受けたりすることも有効です。

最低でも月単位でキャッシュフロー計算書を確認し、自社の現金の動きをリアルタイムで掴む習慣

身につけましょう。

これにより、問題の早期発見と迅速な対策が可能となり、資金繰りの安定化に向けた第一歩を踏み出せます。

 

3.2 解決策2 売掛金の管理強化と回収サイクルの短縮

売上があっても、その代金が回収できなければ現金は増えません。売掛金の管理体制を強化し

回収サイクルを短縮することは、キャッシュフロー改善の即効薬となり得ます。

特に、支払いサイトが長い取引先が多い場合や、回収遅延が常態化している場合は、早急な対

策が必要です。

 

3.2.1 売掛金回収のための具体的なアクション

売掛金の未回収リスクを低減し、回収を迅速化するためには、以下のような具体的なアクションを

段階的に実行することが重要です。

 

ステップ アクション内容 ポイント
請求プロセスの見直し 請求書発行のタイミングを早め、記載内容の正確性を担保する。可能であれば、納品と同時に請求書を発行する体制を目指す。 請求漏れや誤請求は回収遅延の大きな原因。ダブルチェック体制を構築する。
支払い期日前のリマインド 支払い期日の数日前に、メールや電話で丁寧にお知らせする。 高圧的にならないよう配慮しつつ、あくまで確認として連絡する。
期日超過時の迅速な督促 支払い期日を過ぎても入金がない場合、速やかに状況確認の連絡を入れる。最初は電話で、状況に応じて督促状を送付する。 督促は段階的に行い、記録を残す。感情的にならず、事務的に対応する。
分割払いや支払い猶予の交渉 取引先の状況によっては、一時的な分割払いや支払い猶予に応じることも検討する。ただし、必ず書面で合意内容を残す。 回収不能になるよりは、一部でも回収できる方策を模索する。
法的措置の検討 再三の督促にも応じない悪質なケースでは、弁護士に相談の上、内容証明郵便の送付や支払督促、少額訴訟などの法的措置も視野に入れる。 最終手段と位置づけ、費用対効果や取引先との関係性も考慮する。

 

これらのアクションを徹底するだけでも、回収状況は大きく改善される可能性があります。

 

3.2.2 与信管理の重要性と見直し

新規取引先の与信調査を徹底し、既存取引先についても定期的に与信状況を見直すことは、

未回収リスクを未然に防ぐために不可欠です。

特に、取引額が大きい場合や、相手の経営状況に不安がある場合は慎重な判断が求められます。

 

与信管理のポイントは以下の通りです。

 

  • 新規取引開始時の与信調査:商業登記簿謄本や決算書の提出を求める、信用調査会社のレポートを利用する、業界内での評判を確認するなど、多角的に情報を収集します。
  • 与信限度額の設定:取引先の信用力や取引実績に応じて、適切な与信限度額(取引上限額)を設定し、それを超える取引は承認制にするなどのルールを設けます。
  • 既存取引先の定期的なモニタリング:定期的に取引先の経営状況や支払い状況を確認し、変化があれば与信限度額を見直します。
  • 取引契約書への支払い条件の明記:支払いサイト、遅延損害金などについて明確に契約書に記載し、双方で合意しておくことが重要です。

甘い与信管理は、将来の大きな資金繰り悪化に繋がるため、厳格な運用を心がけましょう。

 

3.3 解決策3 在庫の適正化と管理方法の見直し

製造業や小売業、卸売業など在庫を抱えるビジネスでは、過剰在庫がキャッシュフローを圧迫する

大きな原因となります。在庫は「寝ているお金」であり、売れなければ現金化されず、保管費用や

管理コストもかさみます。適正な在庫管理は、資金繰り改善に直結します。

 

3.3.1 デッドストックの削減と処分

長期間売れ残っている在庫、いわゆる「デッドストック(死蔵在庫)」は、キャッシュフローを

悪化させるだけでなく、保管スペースを無駄にし、新たな商品の仕入れや生産の機会を奪います。

デッドストックを定期的に洗い出し、早期に処分する決断が必要です。

処分方法としては、以下のようなものが考えられます。

  • セール販売・見切り販売:価格を下げてでも現金化を優先します。
  • アウトレットチャネルでの販売:専門業者やオンラインマーケットプレイスを活用します。
  • セット販売・福袋:他の商品と組み合わせて販売価値を高めます。
  • 廃棄処分:どうしても売れないものは、税務上の処理も考慮しつつ廃棄します。ただし、環境への配慮も忘れずに。

デッドストックの処分は損失を伴うこともありますが、放置することで発生する機会損失や

保管コストを考えれば、早期の対応が賢明です。

 

3.3.2 適正在庫の維持と発注サイクルの最適化

デッドストックを減らすと同時に、将来の需要を予測し、欠品を防ぎつつ過剰在庫を抱えない「

適正在庫」を維持することが重要です。

そのためには、発注サイクルや発注量の最適化が求められます。

 

具体的な方法としては、

  • ABC分析の活用:在庫品目を売上高や重要度に応じてA・B・Cのランクに分類し、ランクごとに管理方法や発注頻度を変えることで、効率的な在庫管理を目指します。
  • 需要予測の精度向上:過去の販売実績、季節変動、市場トレンドなどを分析し、より正確な需要予測を行います。POSデータやSFA/CRMツールの活用も有効です。
  • リードタイムの把握と短縮:発注から納品までのリードタイムを正確に把握し、可能な限り短縮することで、安全在庫を減らすことができます。
  • 定期発注方式と定量発注方式の適切な選択:商品の特性や需要の安定性に応じて、発注方式を見直します。
  • 在庫管理システムの導入検討:手作業での管理に限界を感じる場合は、在庫管理システムの導入も検討しましょう。リアルタイムでの在庫状況把握や、適正な発注点・発注量の算出に役立ちます。

在庫の最適化は、キャッシュフロー改善だけでなく、経営効率全体の向上にも繋がります。

 

3.4 解決策4 資金調達方法の多様化と借入条件の見直し

手元の資金が不足する場合、資金調達が必要になります。その際、調達方法を多様化し、既存の

借入条件を見直すことで、資金繰りの安定化や金利負担の軽減を図ることができます。

 

3.4.1 日本政策金融公庫や制度融資の活用検討

中小企業にとって、日本政策金融公庫からの融資や、地方自治体・信用保証協会が提供する制度

融資は、比較的低金利かつ長期での借入れが期待できるため、積極的に活用を検討すべきです。

特に、創業期や経営改善に取り組む企業向けの支援策が充実しています。

 

代表的なものとしては、

  • 日本政策金融公庫の融資制度:マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資)」や「新創業融資制度」、「セーフティネット貸付」など、様々なニーズに対応した融資があります。
  • 地方自治体の制度融資:都道府県や市区町村が、地元の金融機関や信用保証協会と連携して実施している融資制度です。利子補給や保証料補助が受けられる場合もあります。

これらの公的融資は、民間の金融機関からの融資が難しい場合でも利用できる可能性があります。

まずは、日本政策金融公庫の窓口や、地元の商工会議所・商工会、よろず支援拠点などに相談して

みましょう。

 

3.4.2 ファクタリングによる売掛債権の早期現金化

売掛金の入金サイトが長く、資金繰りが厳しい場合には、ファクタリングを利用して売掛債権を

早期に現金化するという選択肢もあります。

ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、入金期日前に

資金を調達できるサービスです。

 

ファクタリングには主に以下の2種類があります。

種類 特徴 メリット デメリット
2社間ファクタリング 利用者とファクタリング会社の2社間で行う取引。売掛先への通知や承諾が不要。 迅速な資金化が可能。売掛先に知られずに利用できる。 手数料が比較的高めになる傾向がある。
3社間ファクタリング 利用者、ファクタリング会社、売掛先の3社間で行う取引。売掛先への通知と承諾が必要。 手数料が比較的低めに抑えられる。 売掛先の承諾が必要なため、資金化までに時間がかかる場合がある。売掛先との関係性に影響が出る可能性も。

ファクタリングは融資ではないため、担保や保証人が不要なケースが多く、赤字決算や税金滞納

があっても利用できる場合があります。

ただし、手数料が発生するため、利用の際は複数の業者を比較検討し、契約内容を十分に確認する

ことが重要です。

経済産業省 中小企業庁もファクタリングの利用に関する注意喚起を行っていますので、

参考にしてください。

 

3.5 解決策5 固定費の削減と変動費のコントロール

売上を増やす努力と同時に、支出を抑えることもキャッシュフロー改善には不可欠です

。特に、毎月一定額が発生する「固定費」の削減は、継続的な効果が期待できます。

また、売上に応じて変動する「変動費」についても、無駄がないか常にコントロールする

意識が重要です。

 

3.5.1 オフィス賃料や人件費の見直しポイント

固定費の中でも大きな割合を占めるのが、オフィス賃料と人件費です。これらは聖域とせず、

見直しの余地がないか検討しましょう。

オフィス賃料:

  • 現在の事業規模や従業員数に対して、オフィスの広さや立地が適切か見直す。
  • 賃料交渉を行う(契約更新時など)。
  • より賃料の安い場所への移転を検討する。
  • サテライトオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースの活用を検討する。
  • テレワークを本格導入し、オフィススペースを縮小する。

人件費:

  • 業務プロセスの見直しやITツール導入による生産性向上を図り、残業時間を削減する。
  • ノンコア業務のアウトソーシング(外部委託)を検討する。
  • 従業員のスキルや適性に応じた人員配置を行い、組織全体のパフォーマンスを最大化する。
  • 賞与の一部を業績連動型にするなど、給与体系の見直しを検討する(従業員の理解と合意が前提)。
  • ただし、安易なリストラは従業員のモチベーション低下や企業イメージの悪化に繋がるため、慎重な判断が必要です。

3.5.2 不要な経費の洗い出しと削減策

日々の経費の中にも、見直すことで削減できるものが隠れている可能性があります。

全ての経費項目をリストアップし、本当に必要なものか、もっと安く抑えられないかを

徹底的に検証しましょう。

 

削減対象となり得る経費の例:

  • 接待交際費:費用対効果を検証し、過度な支出は控える。社内規定を設ける。
  • 旅費交通費:出張の必要性を再検討する。オンライン会議の活用。格安航空券や宿泊プランの利用。
  • 通信費:契約プランの見直し(電話、インターネット、携帯電話など)。不要なオプションの解約。
  • 広告宣伝費:費用対効果の低い広告媒体の見直し。Web広告などの効果測定がしやすい媒体へシフト。
  • 水道光熱費:節電・節水の徹底。省エネ設備への切り替え検討。
  • 消耗品費:ペーパーレス化の推進。備品の共同購入やリサイクル品の活用。
  • 各種会費・購読料:利用頻度の低いものや不要なものは解約する。
  • 保険料:保障内容が現状に適しているか定期的に見直し、重複があれば整理する。

経費削減は、従業員一人ひとりの協力が不可欠です。コスト意識を高めるための啓蒙活動や、

削減目標を共有することも有効です。

 

4. 資金繰り改善を持続させるための重要なポイント

売上があるのにお金がない状態から脱却するための解決策を実行しても、それが一時的なもので

終わってしまっては意味がありません。

ここでは、資金繰りの安定を継続させ、健全な経営体質を築くための重要な取り組みについて

解説します。

 

4.1 どんぶり勘定からの脱却と月次決算の導入

「どんぶり勘定」は、多くの中小企業が陥りがちな資金繰り悪化の大きな要因です

。日々の入出金や利益の状況を正確に把握せず、感覚的に経営を行っていると、気づかぬうちに

資金ショート寸前という事態になりかねません。

このような状況を打破し、経営の羅針盤となるのが「月次決算」の導入です。

 

月次決算とは、毎月、試算表や損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書といった

財務諸表を作成し、企業の財政状態や経営成績をタイムリーに把握する仕組みです。

これにより、以下のようなメリットが得られます。

 

  • 経営状況の早期把握: 月ごとに業績を把握することで、問題点や課題を早期に発見し、迅速な対策を講じることができます。
  • 的確な経営判断: 数値に基づいた客観的なデータは、設備投資や新規事業展開など、重要な経営判断の精度を高めます。
  • 予算管理の徹底: 月次で予算と実績を比較分析することで、目標達成に向けた進捗管理が容易になり、必要に応じて軌道修正が可能です。
  • 金融機関からの信頼向上: 定期的に正確な財務情報を提供することで、金融機関からの信用力が高まり、融資審査などで有利に働くことがあります。
  • 節税対策の検討: 年末に慌てて節税対策を行うのではなく、月々の利益状況に応じて計画的な節税が可能になります。

月次決算の導入には、会計ソフトの活用や経理体制の見直しが必要となる場合があります。

自社での対応が難しい場合は、税理士などの専門家に相談し、サポートを受けながら進めることを

検討しましょう。経営者自身が数字に強くなることが、持続的な資金繰り改善の第一歩です。

 

4.2 資金繰り表の作成と定期的なモニタリング

月次決算が過去から現在までの財務状況を明らかにするものであるのに対し、「資金繰り表」は

将来の現金の動きを予測し、管理するための重要なツールです。

資金繰り表を作成することで、いつ、どれくらいの現金が入り、いつ、どれくらいの現金が出て

いくのか、そしてその結果、資金が不足するのか余裕があるのかを事前に把握できます。

 

資金繰り表作成の主なメリットは以下の通りです。

  • 資金ショートの予防: 事前に資金不足の時期を予測できれば、対策を講じる時間を確保できます。
  • 計画的な資金調達: 資金調達が必要な場合でも、タイミングや必要額を具体的に把握し、余裕を持った準備が可能です。
  • 無駄な支出の抑制: 現金の動きを可視化することで、不要不急な支出を見直し、コスト削減意識を高めることができます。
  • 経営判断の裏付け: 新規投資や大きな支出を伴う意思決定の際に、資金繰りへの影響を具体的にシミュレーションできます。

資金繰り表には、主に以下の項目を記載します。

最低でも3ヶ月先、理想的には6ヶ月~1年先まで予測することが望ましいでしょう。

 

区分 主な項目例 ポイント
収入の部 売掛金回収、現金売上、手形入金、借入金、雑収入など 売掛金の回収サイトを正確に反映させることが重要です。
支出の部 買掛金支払、現金仕入、手形決済、人件費、家賃、リース料、諸経費、借入金返済、税金支払など 支払サイトや固定費・変動費を明確に区別し、漏れなく計上します。
財務収支 借入金の実行、借入金の返済など 資金調達や返済計画を反映させます。

資金繰り表は一度作成して終わりではありません。定期的に実績と比較し、予実差異の原因を分析(モニタリング)することが不可欠です。

実績とのズレが大きい場合は、その原因を究明し、今後の予測精度を高めるための改善策を講じ

ましょう。

週次または月次でのチェックを習慣化し、常に最新の状況を把握しておくことが、資金繰り不安

からの解放に繋がります。

 

4.3 税理士や経営コンサルタントなど専門家への相談

自社だけで資金繰り改善や経営課題の解決に取り組むには限界がある場合も少なくありません

。そのような時は、税理士や中小企業診断士、経営コンサルタントといった外部の専門家の知見

やサポートを活用することが有効な手段となります。

 

専門家に相談するメリットは多岐にわたります。

  • 客観的な視点での分析: 社内の人間では気づきにくい問題点や改善のヒントを、第三者の客観的な視点から指摘してもらえます。
  • 専門知識に基づく具体的な提案: 資金調達、節税対策、コスト削減、業務効率化など、専門分野における具体的な解決策や最新情報を提供してもらえます。
  • 時間と労力の削減: 複雑な手続きや情報収集などを専門家に任せることで、経営者は本来注力すべき業務に集中できます。
  • 精神的な安心感: 経営の悩みを相談できる相手がいることは、経営者の孤独感を和らげ、精神的な支えとなります。
  • 公的支援制度の活用支援: 補助金や助成金、低利融資など、活用できる公的支援制度の情報提供や申請サポートを受けられる場合があります。

相談できる主な専門家とその役割の例は以下の通りです。

 

専門家の種類 主な相談内容・役割 関連情報・探し方
税理士 月次決算・年次決算の作成、税務相談・申告、節税対策、資金繰り相談、経営分析、事業計画策定支援 顧問契約のほか、スポットでの相談も可能な場合があります。お近くの税理士会や、日本税理士会連合会の税理士検索サイトなどで探せます。
中小企業診断士 経営戦略の策定、事業計画の作成支援、マーケティング支援、生産管理・業務改善指導、補助金・助成金申請支援、創業支援 国が認める経営コンサルタントの国家資格です。中小企業庁の「ミラサポplus」などで専門家派遣制度を利用できる場合もあります。
経営コンサルタント 財務、人事、IT、マーケティングなど特定分野に特化した専門的なアドバイス、事業再生支援、M&A支援 得意分野や実績は様々です。自社の課題に合ったコンサルタントを慎重に選びましょう。

 

専門家を選ぶ際には、特に資金繰りの問題については、以下の点も考慮すると良いでしょう

自社の業種や規模、抱えている課題に対する理解度や実績、コミュニケーションの取りやすさ、

料金体系の明確さなどを総合的に比較検討することが重要です。

複数の専門家と面談し、信頼できるパートナーを見つけることが、持続的な経営改善への近道となるでしょう。

 

5. まとめ 売上があるのにお金がない状態を克服し健全な経営を目指す

「売上があるのにお金がない」という苦境は、売掛金の回収遅延、過剰在庫、借入金負担、

予期せぬ支出、低利益率といった複数の要因が絡み合って発生します。

しかし、本記事で解説したキャッシュフローの正確な把握、売掛金回収サイクルの短縮、

在庫の適正化、資金調達方法の見直し、そして固定費・変動費の削減といった具体的な

解決策を実践することで、この状況は必ず打開できます。

どんぶり勘定を改め、資金の流れを「見える化」し、黒字倒産の危機を乗り越え、盤石な

経営基盤を築きましょう。