「また借換えすればいい」——その選択肢は、もう存在しません。
コロナ借換保証は2024年6月に受付終了。残った選択肢は、厳しい条件を満たした企業だけが使える制度です。さらに追い打ちをかけるように、政策金利は30年ぶりの高水準(0.75%)に達し、平均借入金利は1.20%まで上昇しました。計画なくリスケを続ける企業が直面するのは「金利の跳ね上がり」と「資金繰りの完全な行き詰まり」——。この記事は、2020年に発信した「コロナ対応融資の賢い使い方」全20回の教訓を、2026年の厳しい現実を踏まえて完全再編集したものです。
私は関東を中心に20年以上、中小企業の資金調達と財務改善を支援してきた経営コンサルタントです。2020年のコロナ禍の最前線で、毎日のように「借りるべきか」「いくら借りるべきか」という経営者の問いに向き合い続けました。
当時から繰り返し伝えてきたことがあります。「コロナ融資は特例中の特例。終わったとき、あなたの会社に何が残るかを考えながら借りなさい」と。あれから6年。その言葉の意味が、今まさに現実になっています。
多くの経営者が今も「返済が苦しくなったらまた借換えすればいい」と思っています。しかしその前提は、すでに崩れています。
コロナ借換保証(伴走支援型特別保証)は2024年6月30日で受付終了しました。これはそもそも国が緊急的に認めた特例融資であり、通常の借換制度ではありませんでした。
終了後に残った選択肢は「経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)」のみ。しかしこれは、認定経営革新等支援機関の関与のもと、経営改善計画・再生計画を策定し、その実行と進捗報告が義務付けられた極めてハードルの高い制度です。
「とりあえず借換え」は、もはや存在しません。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| ゼロゼロ融資利用後の倒産(累計) | 2,280件超 | 東京商工リサーチ(2026年2月) |
| コロナ関連破たん(累計・負債1,000万未満含む) | 1万3,715件超 | 東京商工リサーチ(2026年2月) |
| コロナ借換保証の利用件数・金額 | 30.1万件・7.1兆円 | 中小企業庁(2025年2月末) |
| そのうち2026年4〜9月に返済開始 | 約8割(最後のピーク) | 東京商工リサーチ(2026年3月) |
| 日銀政策金利(2025年12月) | 0.75%(30年ぶり高水準) | 日本銀行(2025年12月) |
| 長期プライムレート(2026年1月) | 2.75%(前年比+0.75%) | 帝国データバンク(2026年1月) |
| 中小企業の平均借入金利(2024年度) | 1.20%(3年連続上昇・過去最大の上昇幅) | 帝国データバンク(2025年12月) |
「リスケをしながら様子を見る」——この判断が、2026年においていかに危険かを理解していない経営者が多い。
リスケとは元本返済を猶予してもらうことです。しかし利息の支払いは止まりません。そしてここに、2026年の新たな危機が加わっています。
「金利のある世界」に変わった今、リスケ中の金利は上昇しています。コロナ融資当時はゼロ金利または超低金利でした。しかしリスケを繰り返すうちに据置期間の優遇金利は終了し、通常金利が適用されます。さらに財務状況の悪化による信用リスクの上昇で、金融機関からのスプレッド(上乗せ金利)も加わります。
帝国データバンクの試算では、借入金利が0.5%上昇するだけで、利息負担が1社あたり年136万円増加し、全体の3.8%が経常赤字に転落します。経営が苦しい企業ほど金利上昇の打撃が大きく、その打撃がさらに財務を悪化させる——悪循環です。
| 2020〜2023年 | 2026年(現在) | |
|---|---|---|
| 借換の可否 | コロナ借換保証で比較的容易 | 制度終了。経営計画策定が必須の高ハードル制度のみ |
| 金利水準 | 実質ゼロ〜超低金利 | 政策金利0.75%・平均借入金利1.20%以上(上昇継続中) |
| リスケ中の利息 | ほぼ負担なし | 金利上昇分が直撃。財務悪化でスプレッドも拡大 |
| 政府の支援姿勢 | 「全企業を救う」緊急支援 | 「計画ある企業だけを支援」経営改善・事業再生へ軸足 |
この違いを理解せずに「2020年と同じ対応をすればいい」と考えている経営者は、今すぐ認識を改める必要があります。計画なく金利上昇に立ち向かうのは無謀以外の何物でもありません。
制度の基本に戻ります。信用保証協会・日本政策金融公庫・商工中金は、それぞれ特性が異なります。コロナ特例期間中は審査が緩和されていましたが、今はすべて通常基準に戻っています。
上限:一般保証2億円+特別枠で最大2億8,000万円
強み:取引銀行経由で申請。複数制度の使い分けが可能
要注意:保証残高が限度に達すると完全に使えなくなる。リスケ中は原則不可
特徴:政府系。国民生活事業(小規模)と中小企業事業(中規模)
強み:創業間もない企業にも対応。保証協会とは別枠
要注意:コロナ特例は終了。通常審査に戻っており、返済能力の評価は厳格
重要:3機関の同時利用は可能ですが、月次の総返済額が営業キャッシュフローを超えた瞬間に資金繰りは崩壊します。「まだ枠がある」と「まだ返せる」は別の問題です。借入総額 ÷ 月次営業CF = 返済余力の月数——この数字を経営者自身が即答できなければ危険水域です。
「とりあえず手元を厚くしたい」という動機で借りた企業の多くは、その資金を運転資金の穴埋めに使い切り、事業改善には繋がりませんでした。融資は「何を変えるための資金か」を言語化できて初めて申請する資格があります。
「申請してから計画書を作る」のではなく「計画書を作ってから申請する」——今の金融機関はこの逆順を見抜きます。最低限、以下を用意してください。
保証協会・政策公庫・商工中金は審査の軸が異なります。「銀行に断られたら終わり」ではありません。どのルートがまだ使えるか、残り枠はいくらかを把握した上で申請することが、成功確率を上げます。
新規融資だけを考えていると月次の総返済額が増え続けます。既存借入の整理と新規調達は常に同時進行で考えてください。特に複数の変動金利借入がある場合、金利上昇の影響を受けやすい構造になっていないか早急に確認が必要です。
「融資が通った」は出発点であり、ゴールではありません。私が支援する企業に必ず確認するのが売上総利益率です。いくら売上があっても、粗利率が低ければ返済原資は生まれません。融資で時間を買っている間に、粗利率の改善・固定費の最適化・経常運転資金の圧縮を同時進行させることが不可欠です。
「売上が30%落ちたら、何ヶ月生き残れるか」——この問いに即答できない経営者は、危機に直面したときの判断が遅れます。最悪シナリオの数字を平時から持っておくことが、素早い意思決定を可能にします。
2026年5月には企業価値担保権を中核とする事業性融資推進法がスタートし、融資の審査基準そのものが変わりつつあります。「融資は銀行に任せればいい」という時代は終わりました。経営者自身が制度の本質を理解し、変化を先取りして動けることが生存条件になっています。
渋沢栄一の「論語とそろばん」——道徳と経済は矛盾しない。二宮尊徳の「分度推譲」——身の丈に合った規律と余力の確保。これらの教えは、資金調達においても普遍的です。「借りられるから借りる」のではなく「事業成長のために必要な分を、返せる根拠を持って借りる」——この規律が、金利が上昇し制度が変わっても揺らがない財務基盤を作ります。
「リスケをしながら様子を見る」には今や、金利上昇という具体的なコストが伴います。リスケは「倒産の先送り」ではなく「経営再建のための時間を買う措置」——ただし出口を設計してから入るものです。
2020年から2026年にかけて、コロナ融資をめぐる状況は根本的に変わりました。
当時は「全企業を救う」という緊急支援の時代でした。しかし今、政府も金融機関も明確に方針を変えています。「計画ある企業だけを支援する」——これが2026年の現実です。
借換という逃げ道はなく、金利は上昇し、返済のピークが目の前に迫っています。しかし、正しい現状認識と事業計画があれば、必ず乗り越えられます。事業計画は、次の危機における唯一の羅針盤です。
「金利のある世界」で生き残るのは、
借換に頼る会社ではなく、
収益力と計画で返せる会社だけです。
毎週月曜日、経営の本質を突く洞察をお届けしています。
渋沢栄一・二宮尊徳・近江商人の智慧と現代経営理論を融合した
「収益満開経営」の実践法を無料で学べます。
※いつでも配信解除できます
合同会社エバーグリーン経営研究所
経営コンサルタント 長瀬好征
「和魂洋才」による収益満開経営で、失われた30年を終わらせ、
2200年の日本に繁栄を残す